3-4 アケミと魔王、ちょっと太る
今回は本編とあまり関係ない息抜き回です。モンブラン食べたい。
ニナ・レポートの第三弾を元にしたレシピ本もベストセラーになった。
そして今私はちょっとだけ、そうほんのちょっとだけ
ニナという名の女スパイを恨んでいる。
いわれのない言いがかりなんだけど。
レポートの第三弾はデザート特集だったからだ。
生クリームをたっぷり添えたフワッフワのパンケーキ。
新鮮な果物をふんだんに使ったショートケーキ。
特にケーキ類をいたくお気に召した魔王は切り分ける前の
ホールケーキを一人で完食することもしばしばだったのだ。
「ねえ、アケミ。このスカート縮んだみたいね」
「魔王ちゃん・・・・・」
魔王は基本的にスタイルをあまり気にしない。
私の体を選んだのは精神との相性が良かっただけであり
相性さえ良ければ何でも良かったはずなのだが。
「あのね、ちょっと言いにくいんだけど。
魔王ちゃん太ったんじゃない?」
「む!そんな事は!」
シャツの裾を上げて脇腹をつまんでいる。
「でもスタイル気にしないタイプ?だったよね」
「いや気にするわよ。やはり見た目は大事よね」
「ですよねー」
かくいう私もウエストがきつい。
これは何とかせねば。
そうだ!スカートのサイズを仕立て直せば・・・・!!
いかん、いかーん!
それは逃げだわ。
逃げちゃ駄目、戦うのよ。
「魔王ちゃん!ダイエットしましょう!」
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数日後。
「で、アケミ。なんなのよこの格好は」
魔王は今野球のユニフォームに身を包んでいる。
もちろん縦縞よ。
だって虎が最強ですもの。
反論は認めない。
野球場は私が設計し建築土木関連の魔人達に作って貰った。
大至急!と職人さん達を急がせてしまった。
お父さんが持っていた野球図鑑には硬球の断面図と構造図が
載っていたのを思い出して作って貰った。
グローブも水牛の皮を利用して作って貰ったのだ。
「魔王ちゃん、完璧です!」
そうそう、剛力使われると反則なので普通の女の子程度の力になるように
チョーカー巻いて貰ってます。
私と区別するために赤いやつをね。
「まずはキャッチボールからね。
ボールをコッチに投げてくれる?」
「てぃ!」
うわ、魔王ちゃん思いっきり『女の子投げ』だわ。
「じゃあ、お手本見せまーす」
まずは軽くオーバースローで作ってもっらた壁に当ててみる。
「体全体を使って投げるの。腕の振り方はこんな感じ。
肘の位置に注意してね」
しばらく二人で壁当て練習。
「次にボールをキャッチします。
もう一回私に向けてボールをかるーく投げてみて」
お、今度は様になっている。
グローブでのキャッチを教えてようやく
キャッチボールが出来るようになった。
二人とも汗をかいてきたので一旦休憩。
「単純な動きなのでかえって没頭できるわね」
「でしょ。じゃあ次は球打ってみようか!」
「打つ?なにそれ?」
百聞は一見にしかず、っと。
「それでは魔人さん達おねがいしまーす!」
球拾いの魔人達を数名グラウンドに配置。
一人には傍らからボールをトスして貰う。
トスする魔人も数回で慣れてきた。
そしてグラウンドに鳴り響く私の快音。
「さすがドワーフ製の金属バットはいい音するわねー」
「アケミ、次わたし!わたし!」
おお、魔王がノッてきた。
魔王にバットを手渡し軽く素振りさせる。
バッターボックスに入りボールをトスして貰う。
数度空振りした後ようやくバットに当たった。
ぼてぼてのセカンドゴロ。
「うーん、なかなか上手くいかないわね」
「練習あるのみ!まあ一回目でここまで出来たら上出来よ」
魔人さん達にもキャッチボールやトスバッティングを教えてみた。
娯楽が少ないこの世界では瞬く間に野球は有名になり
練習も回を追う事に参加者が増えていった。
その後私は知ってる限りの野球のルールと初心者用虎の巻を作り出版。
大人から子供まで運動好きな魔神達の間で話題となる。
今のところまだ試合が出来るレベルじゃないけど
何時か世界が平和になったら魔人や人間が仲むつまじく野球を
楽しむ時がくるかも、などと妄想する私であった。
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「うん、スカートがちょっと緩くなったかも」
「魔王ちゃんも?わたしもー!」
ちなみに二人とも甘い物絶ちをしていた。
糖質制限はばっちりよ。
「じゃあがんばった自分にご褒美を・・・・」
「魔王ちゃん、それじゃ元の木阿弥よ、と言いたいところだけど」
「けど?」
「栗をつかったモンブランというケーキの試作品ができたみたいなの」
「あら大変。魔王としては真っ先に味見しないと。
アケミ、厨房に行くわよ」
「お供しまーす!」




