表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/149

1-8勇者、初の討伐で色々ばれる(その1)

 翌朝ウィリーにおこされ、一緒に朝食を作る。

皆でそろって食べ始めながらブリーフィング。

パワーブレックファ-ストみたいだな。


 昨日のうちに受けてきた依頼はBランク依頼。

ブロンズウルフの群れが農場の家畜を襲う

被害が相次いでいるそうだ。


「ブロンズウルフってどんな魔物なんですか?」

エドに聞いてみる。


「おい、ウチのパーティは敬語禁止だ。

ランクは違えど戦う以上皆対等だぞ」


「わかった」


「ブロンズウルフってのは毛並みがブロンズ色してる狼だな。

群れで行動することが多い。たいてい5~10匹程度だ」


「ふーん。大きさは?」


「野生の狼より一回りでかい」


 聞くところによると、ウルフ系の魔物は

ブロンズ、シルバー、ゴールデンの三種類。


シルバーとゴールデンは滅多に見かけない。

シルバーはブロンズと同じくらいの大きさ。

ブロンズの群れを統率してる事もあるそうだが、

この場合難易度はやや高くなるらしい。


 ゴールデンウルフは金色の毛並みをした狼の魔物で

ブロンズやシルバーよりもさらに一回りでかいらしい。


こいつは単独で行動することが多い。

かなり賢く力も俊敏さもあるので

A級冒険者数名でも手こずるそうだ。


「よし、それじゃ依頼してきた村に移動するぞ。

エリックは後ろからついてこい。

今回は俺たちだけでやる。まずは見学だな」


 全員で都市の南側に位置する門を目指す。

ギルドカードと依頼書を衛兵に見せ外に出る。


小一時間ほど歩き、依頼のあった村に到着。

村長を始め、数人の村人から目撃情報を貰い

村の管理してる牧場の奥にある森を目指す。


 森の小道をしばらく歩くと小川で水を飲んでるイノシシを発見。

ん?なんかちょっと大きさが変。

牛ほどの大きさに見えるけど。


 エドがにやにやしながら指さす。

「おい、単なるジャイアントボアがいるぜ」


「おお、ホントだ。単なるジャイアントボアだな」

ギルバートが応える。


「なんでわざわざ『単なる』をつけるんだ?」


 不思議に思い尋ねたところ、

でかいだけで難易度は低いからだそうだ。

それでもC級依頼の魔物なんだけど。

それにしてもでかいな。


 エドが指示を出す。

「じゃあいつも通り俺が正面、ウィリーが右、ギルバートが左な。

シェリーとエリックは少し離れて俺の後ろをついてこい。いくぞー」


 ウイリーとギルバートは音もなく左右の森に消えていく。

すごいな。あっという間に見えなくなった。


エドが浅い川に入りばしゃばしゃと水音を立てると

ボアがこちらに気がついた。


前足で軽く地面を削る動作をした直後に

こちらに向かって猛スピードで突っ込んでくる。


余裕で立ってるだけのエドに到達する前に

左右の森から飛び出した二人がボアの両側の足に剣をなぎ払った。


 ウィリーは右前足を、ギルバートが左後ろ足を切り飛ばす。

もんどりを打って転がるボアの心臓めがけてエドが剣をひと突き。

あっけなく完了。


「すげぇ」

思わず声が出た。


 エド達は手際良くボアを解体し魔石を取り出した後

皮を剥ぎ肉を切り分けていく。


河原の石の上はあっという間に

食材となったボアの肉が山のようにつまれた。


「シェリー、頼む」

「ん」


 短く返事したシェリーが骨付き肉を人数分切り分け、

平らな石の上に並べ軽く塩を振った。

火魔法でこんがりと焼き調理。


「うまいな。でかいから大味かと思ったらそんなことない。

適度に油がのってるし。

っていうか俺なんもしてないけど食って良いの?」


ギルバートが笑いながら答える。

「はは、食ってから言うんじゃねぇよ。

ちょうど昼飯時だ。食っとけ」


 ここまでは普通の・・・普通ってなんだ?

まあいいや。狩りのお時間でした。


皆さんお疲れ様でした、そしてごちそうさま。

問題はこの後のシェリーの取った行動だった。


 牛並の巨体のボアを解体すると500kg近くの肉が取れる。

今俺たちが食った分なんて微々たるもんだ。


残りの肉や毛皮はどうするんだろうと疑問に思っていると、

シェリーがせっせと俺の疑問とともに肉をを片付けていった。


 シェリーは自分の肩掛け鞄に肉を詰め込み始めたのだ。


見たところ学生が使う肩掛け鞄と同じくらいの大きさ。

そんなに入るはずないのに

大量の肉はすべて鞄に収納されてしまった。


 目を丸くして眺めているとエドが説明してくれた。


「お?エリックは空間収納を見るのは初めてか。

これは魔道具の一種だ。

魔石がエネルギーを供給してる間は使える。

シェリーが持ってるのは容量どれくらいだっけか?」


「2トンくらい、かな」


「だそうだ。魔道具屋で売ってるんだが結構なお値段だぜ。

俺の1年分の稼ぎが吹っ飛ぶ。

それに一生使えるワケでもない。

魔石がエネルギーを失ったら普通の鞄になっちまう。

それでも寿命は10年くらいあるから、持っておくと何かと便利なんだ」


「そんな便利な物があるのか。どうやって作ってるんだろ?」


くうの魔法使いが空間を固定して作るらしい。

最近じゃ伝説化してる魔法なだけに使い手が少ないんだ。

しかし市場に割と新しめの鞄が出てるのを見かけたことがあるから、

現代でもどこかに居ると思うぞ」


 ここで疑問が一つ解ける。

鈴木が言っていたくうの魔法とは空間操作のことらしい。


それは俺も使えるはずなのだが

今のところどうやって良いかわからない。

これはしばらく実験が必要だな。


「さて、そろそろオオカミ狩りに行こうかね、皆の衆」


皆立ち上がり元来た小道に戻り森の奥を目指して歩き始めた。

しばらく歩くと森が開けて出口付近は明るくなっている。


その先は少々開けた場所らしい。

そのまま森から出ようとするとエドに怒られた。


「おいエリックうかつだぞ。

いきなり無防備に開けた場所に出るな。

目立つだろ」


気がつくとギルバートが居ない。

偵察に行ったようだ。

しばらくすると帰ってきたギルバートが報告する。


「起伏の少ない平原だな。

低木が数本と大きめの岩が所々に転がってるだけで掩体は少ない。

あちらの森にぽっかり開いた口があるが

あそこが小道になっているのだろう。

それと、これは俺のカンなんだがここはやばいと思う」


 皆黙って聞いている。

「これだけの平原なら小動物や鳥の気配が

あるはずなんだがまるで見あたらない。

中央を歩いて行くのは

何かの罠にはまりに行くようなもんだと思うが」


 エドは話を聞きながら平原を見渡す。

すると何かに気がついた様子で急に顔がこわばる。


人差し指を唇に当て沈黙を指示した後

森の反対側にある小道の入り口のやや右あたりを指さした。


 なにかが動いた。

一匹のブロンズウルフが顔を出しくんくんと臭いをかいでいる。


幸いこちらが風下なので臭いでばれることはないと思う。

安全だと思ったのだろう数匹のブロンズウルフが

周囲を警戒しながら平原へと出てきた。


「数は・・・・5匹か。まだ森の中に居るかもしれんが。

正面から行くぞ。俺が真ん中だ。

二人は左右をすこし離れてな。

シェリーはいつでも予備の剣を出せるようにしといてくれ」


 どうやらシェリーは皆の予備の武器を空間に収納しているらしい。


「エド、俺は?」


「エリックの得物はショートソードだけだろ?

シェリーの後ろを警戒しながらつきてきてくれ。

やばいと思ったらシェリーと一緒に元来た道を走って逃げろ」


「わかった」


 エド達が広がりながら平原に足を踏み入れる。

ウルフ達もこちらに気がついたようだ。


5匹が同時にこちらに向かって駆けだした。

三人それぞれが飛びかかってきたブロンズウルフに剣を一閃。


ウゥリーに頭をかち割られた奴はぴくぴくと痙攣している。

他の二人も一合目で致命傷を与えたらしい。

残るは2匹。楽勝だな。


ほんとこのパーティは凄い。

俺いらないじゃん。


 残る二匹が間合いを取り頭を低くして

威嚇するようにうなっている。

その時、一瞬ザワっと音をたてて

平原を一陣の風が吹き抜けたように感じた。


違う、風じゃない。


反対側の森の小道の左右から大量のブロンズウルフが

こちらに向かって駆け出してきたのだ。


「いかん!皆、中央の大きな岩に集まれ!岩を背にして迎え撃つぞ!」

逃げ切れないと判断したエドは戦う方向で指示を出す。


 10・・20・・30?いや、もっといる。

姿を現したのは100匹近いブロンズウルフだった。

そしてその後方には銀色の毛並みのオオカミが悠然と立っている。


「くそっ!シルバーウルフが統率してやがるのか、おいエドどうする?」

ウィリーが大声を出す。


「さーて、この岩が墓標となるか生き残るか二つに一つだわな。

生き残ったらギルドの中庭でボア肉バーベキューやろうぜ」


 ジワジワと間合いを詰めるブロンズウルフ達。

最初の一匹が飛びかかってきたのをきっかけに乱戦が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ