表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/149

2-30  セシリアの決断


 俺は一度王都に戻りセシリアを連れてウーファに帰ってきた。

二人でセシリアの実家に向かう。

中は荒らされていた。


「誰もいない。死体もないから逃げ延びたのかもしれないわ」

「教会に行ってみよう。捜索者の張り紙があるはずだ」


 セシリアに案内されて教会に行く。

あちこち崩れていたが本堂は無事だった。


 中庭では炊き出しが行われていた。

スープを器に装っている年配のシスターがセシリアの姿を見つけると

慌てて走り寄ってきた。

二人は抱き合っている。


「シスター・サーラ!無事だったんですね!」

「ええ、拘束されたんだけど魔人の食事の世話をさせられていたの」

「あの、私の両親がどうなったかわかるでしょうか?」


 シスター・サーラは残念そうに首を横に振った。

「ごめんなさい、わからないわ。

市街地の北区に住んでいた住人達は魔人達が攻めてくる前に

北門から逃げられたと聞いてます。

中央区の私達は大混乱で誰がどこに逃げたか、あるいは殺されたか・・・・

混乱していて確認が取れてないの」


「いえ、謝らないでください。

行方不明者の捜索願いはどこで出せば良いのでしょうか?」


 シスター・サーラは通りの方を指さした。

「教会の壁沿いに掲示板が設置されているの。

自分が無事な事を知らせたい方は青い縁取りがしてあるわ。

捜索願は赤い縁取りの紙に記入して空いてるスペースに貼ればいいのよ」

「ありがとう御座います。さっそく行ってみます!」


 セシリアは俺の手を掴んで走り出した。

「おい、慌てるなって」

「だって・・・・」

「気持ちが落ち着かないのは理解できるが、でも落ち着け。な?」

「うん。ごめん」


 二人で掲示板を見て廻る。

端から端までくまなく見るのにかなり時間がかかった。

「なかったわ」

「・・・・そうか。とりあえず捜索願の紙に記入しよう」


 係の人に紙を貰い仮設のテーブルで記入し掲示板に貼り付けた。

連絡先はウーファの中央教会にしたみたいだ。


「後は待つしかないと思うよ。今日はこれからどうする?」

セシリアは王都の教会と殿下に事情を説明し、

しばらく休暇を貰っていた。

「うん、少しでも家の中を片付けておこうと思う。

両親がいつ帰ってきてもいいようにしておかないと」

「わかった、手伝うよ」


 俺は倒れた食器棚や本棚を元に戻す力仕事を引き受けた。

ついでに近所から大工道具を借りてきてドアを直した。

「ふう、とりあえず鍵はかかるようになったぞ」

「ありがとう、エリック。一息つこうか」

割れてないカップを探しテーブルに置く。


 水魔法でカップに水を満たした。

空間収納バッグからパンを取り出し水を飲みながら二人でかじった。

「そろそろ夕方だな。今夜はどうする?

俺は城壁の外にテントを用意して貰ってるんだが」

「両親が帰ってくるかもしれないし私はここに泊まる。

で、ね?できれば一緒にいてほしい」

「・・・ああ、わかった」


 暗くなる前にもう一度教会に顔を出す。

セシリアは生き残った教会のスタッフさん達と挨拶を交わしてた。

昼間炊き出しをやっていた場所では毛布の貸し出しを行っていたので

二人分を借りてセシリアの家に戻った。


 次の日。


「エリック、おはよう」

「んあ、お、おはよう。って、いてて・・・」

セシリアは自分のベッドに寝たが

俺は居間にあったソファーで寝た。

変な体勢だったので寝違えてしまった。


「もう、一緒に寝れば良かったのに」

「はは、次回はそうするよ」


 こんな時でも男の子は男の子なんだぞ。

俺の見事な自制心をもっと評価して欲しい。


 簡単な朝食をとり今日の予定を確認する。

「俺はツイーネの様子を見てくる。

まだ魔人やテイマーが残っているかも知れないからね」

「わかったわ。エリックも忙しいのに付き合わせちゃってごめん」

「いや、いいよ。セシリアはどうするんだ?」

「教会に行って手伝える事をやるわ」


 なにか仕事をしていた方がかえって気が休まるだろう。

その方が良い。


「あ、そうだ。実は『ラヴェイル』の話を聞いたんだけど」

「えっ。誰に?」

俺は経緯を説明した。


「ふうん。なんか前世でも似たようなオカルトっぽい話があったわね」

「うん。アトランティス大陸とかな」

「そうそう、男の子はそういう話好きよね」

「そうだね。俺も子供の頃は好きだったよ」


「大人になると好きじゃなくなるの?」

「いや、みんな関心がなくなったフリしてるだけで実は大好きなんだよ」

「へー、そうなんだ。やっぱり大人がそんな話するのは恥ずかしいのかな」

「そうだね。N沢さんが金星人の住所を知っているとか言った時には

皆と一緒に笑ったけど、もし近所に金星人が住んでいたら、

と想像すると楽しいよね」


「あはは。灼熱の金星に人なんているわけないじゃない」

「居るわけないけど居たら楽しいでしょ、って話」


 その後セシリアは教会に、俺は城壁の外に設置された司令部に顔を出した。

ツイーネは壊滅状態だったがサフラスとグレンヴァイスに続く

山岳地帯近くの農民達は逃げ延びていたそうだ。

安全が確認され次第戻って来るそうだ。

 

 主要な街道に沿ってくうを繋ぎツイーネの南まで行ってみた。

グレンヴァイス側から攻めてきた連合軍の陣が見えたので顔を出す。

総司令のブラン将軍に会った。


「勇者殿はウーファから来たのかな?」

「ええ、そうです」

「そうか。ダニエルの部隊は全滅したと聞いておるよ」

「・・・・・残念です」

「気を遣わないでくれ、勇者殿。

我が家は軍人の家系だ。

こういう事もあり得ると本人や家族には

常日頃言い聞かせているし覚悟もしている」


 ダニエルは将軍が40才を越えてやっと出来た一人息子だった。

家系は途絶えてしまうのだろうか。

「親戚の子を養子に迎えるつもりだ。

弟の家では息子が5人もおるでな。

我が家は代々クルトフを任されている。

そう簡単につぶすわけにはいかんのだ」


~~~~~~~~


 夕べはエリックが私の実家に一緒に泊まってくれた。

出来れば平和なうちに両親に紹介できていれば、と想像してみたが

お互い諸事情によりコソコソお付き合い中なわけで。

「はぁ・・・・私って相当馬鹿だわ」


 シスター・サーラが背中をなでてくれた。

「心配でしょうけど今は待つしかないと思うわ。

気をしっかり持ってね」


 意味深なため息で勘違いさせてしまった。

申し訳ない。

「ありがとうございます。さてボランティアの手伝いしますね。

なにからやりましょうか?」


 それから約一週間。

私はボランティア活動にいそしんだ。

時たま復興活動中に怪我をしたり気分が悪くなった人が担ぎ込まれたので

治療に当たった。


 掲示板の張り紙は目的がかなった物は撤去されている。

それもでかなりの数の張り紙が残ったままだ。

私と同じように毎日掲示板を見に来る人も後を絶たない。

これだけ時間がたってなんの手がかりもないと言うことは

最悪の事態を受け入れる心の準備をしなければならない。

悲しいけど、これが現実なのだ。


 シスター・サーラにお別れを言うことにした。

「そう、首都に戻るのね。でも聖女様が来てくれて助かりました」

「当然のことをしたまでです。それとお願いがあります。

両親の事がなにかわかったら教会経由で知らせていただけるでしょうか?」

「もちろんよ。必ず連絡するわ。それじゃあ頑張ってね」

「はい!行ってきます!」


 司令部に立ち寄ってみるとエリックが帰って来ていたので

王都まで連れて行ってくれるように頼んだ。

道すがら自分の考えをエリックに伝えた。


「ねえ、私って勇者のパーティの一員なのよね?」

「そうだね。教会からそう言われてるんだろ」

「うん、それもあるけど・・・・今までは聖女部隊のリーダーとして

討伐軍について戦場を廻ってきたわ。

でもこれからは勇者のパーティの一員としてずっとエリックと一緒にいる」


「それは教会と殿下の許可がいるんじゃないのかな」

「説得する。エリックにだから言うけど、私の能力はEXレベルなの。

たぶん今居る聖女隊の中でもダントツだと思う。

エリックが魔王と対決するのも近いでしょ?

私が側に居れば勇者のパーティも安心のはず!ね?」


 エリックは少しの間無言だった。

「うん、わかった。正直に言うと俺もセシリアともっと一緒にいたい。

帰ったら教会と殿下は俺が説得するよ」

たぶん私は頭から湯気が出るほど顔が真っ赤だったと思う。


 私の想いはもうこれ以上大切な人をなくしたくない、それだけだ。

そのためには自分が出来ることはなんだってやってやる。


 そう私は決断したのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ