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2-20  反攻作戦  その1 魔道銃と偏屈教授


 王都に戻ってから忙しかった。

クルトフとツイーネ国境にはそれぞれ応援に行った。

定期的に魔人軍が戦線を押し上げようとするのだがその度に阻止している。

逆にこちらが押すと押し返される。


 何か事情がありわざと戦線を膠着させているのだろうか?

解らないが一進一退の攻防が続いていた。


 ドワーフは鋳型を作りパーツの生産を開始した。

相談しながらライフリングを施したバレルや細長いライフル弾の形で石弾が

生成されるように固定化するなど改良も加えていく。


 大量に作るとなるともっとミスリル鋼が必要になってくる。

だがその度に南の大陸まで取りに行くのは一苦労だ。

まずは持ってきたミスリルで作れるだけ作る。


 魔道ハンドガンと魔道ライフルの魔法の固定化は

土魔法を極めている魔法使いを集めて行われた。

俺やカミーラや老師だけでは手が廻らない。


 まずは先行して出来上がったハンドガンとライフルによる訓練が始まった。


 練兵場には木で作った的が設置されてある。人型のそれには丸が書いてある。

兵士に使い方を教えて的を狙わせてみた。

数人の兵士が一斉に打ち始めた。


 火薬を使用した銃ではないため爆発音はしない。

石弾がバレルを通り抜けるシュッという音が響くのみである。


 的までの距離は10mくらいだ。かなり近いが試射なのでこれでいい。

結果は上出来だった。


 殿下が静かに手を叩いている。

「素晴らしい。大量に作れれば戦況をひっくり返せるぞ」


 俺も試射が上手くいってほっとした。

「ですね。しかしまだ個体によって精度のばらつきがあります。

的が遠くなればなるほどその差が歴然としてくるでしょう。

この辺はドワーフと相談して改良していきます」

「そうして欲しい。材料費や人件費はすべて国庫から出す。

大量に作って欲しい」


 まずは射撃訓練を重ねて実戦を想定した訓練をしなければ。

運用に関しては魔道障壁も併用しての作戦行動も考えなければならない。

やることは山ほどあった。 


「ところで殿下、相談があります。

国内でミスリル鋼を産出できる鉱山はないんですかね」

「ない、と思う」

「ありませんか」

「だが過去の記録を調べてみよう。

我が国の北西部に連なる山脈は手つかずの大自然だ。

未踏峰の頂が連なる山脈はなにが埋まっているかわからん」


「なるほど、地学や理学をやっている先生でも居ればいいんですが」

「一応いるにはいるんだが」

「一応、ですか?」

「うむ。国土調査室というのがあってな。地図を作っている部署なんだが

土や石に詳しい偏屈教授がひとり居るのだ」


 殿下がしかめっ面してるな。相当な偏屈なのだろうか。

「偏屈でも何でも一度会いたいのですが」

「わかった。手配しよう」


 次の日、殿下の紹介状を手に国土調査室を訪れてみた。

広い部屋には大勢の職員が働いている。

そのうちの一人に声を掛けた。


「すいません、ガルノルド教授にお会いしたいのですが」

「教授はここにはいないんです。

この建物の後ろに小さな小屋があるんです。そこに居ますよ」


 職員にお礼を言い小屋を目指す。


「ここでいいのかな?とりあえずノックしてっと。

すいませーん、ガルノルド教授はいらっしゃいますか?」

奥から声が聞こえた。

「開いてるよ、お入りなさい」


 たくさんある棚や床一面には岩石や土の入った壺などが所狭しと置かれている。

テーブルには地図やら本やらが乱雑に置かれていた。

その隣にある小さな丸いテーブルにティーポットとカップが置かれ

その横に教授が座っていた。


「初めまして教授、エリックと申します」

殿下の紹介状を手渡す。

「ふむ、アレックス王子の紹介ね。本人は来ないのかね?」

「殿下はいろいろお忙しいようで」

「地学にB評価を付けたことを根に持たれたかな?ははは。

まあいいわい。で、何用だね?」


 見た目はわかりやすい丸坊主だ。

つるつるだぞ。久しぶりに見たなツルッパゲ。

ひょろっと痩せていて眼光鋭い初老の教授はどことなく雰囲気が老師に似ていた。


「はい、ルド王国内でミスリル鋼が産出する場所はないかと思いまして

訪ねて来ました」

「あるぞ」

「あるんですね、って・・・え?ないって聞いてたんですが」

「じゃあないぞ」

「からかってんですか?」

「学術的な意味ではあるのだが商売的な意味ではないのだよ」

「的確な説明感謝します」

「ふむ。君はその辺のアホ学生よりも見込みがあるな。

そこに座りなさい」


 勧められた椅子に座る。

教授がルド王国の地図を取り出した。

「この辺りだな」

教授は西北西の山脈を指さした。

「ミスリル鉱山があるのは解っている。

が、サンプルを持ち帰るのも命がけの場所なので

いつしか忘れ去られてしまったのだな。

それに埋蔵量もわかっていない。

ほれ、この本は800年前に書かれた報告書だ」


 手渡された本の指定されたページを読んだ。

「確かに。しかしどうやって行ったんですかね?」

「この報告書の作成者は空(くう)使いだったそうだ」

「なるほど」

「まずおいそれ取りに行ける場所ではないのと、ドワーフとのつきあいが始まってから

ガウンドワナ大陸産のミスリルが主流になってしまったことが原因で

忘れ去られてしまったようだな」


「実は新しい武器の製造に大量のミスリル鋼が必要なんです。

戦争が始まって以来、南の大陸からは入って来なくなりまして」

「なるほど。それで殿下の紹介状を持ってきたわけか」


 教授は腕組みをしながらなにか考え込んでいる。

「君、勇者だよね?空(くう)は使えるんだよね」

「はい、使えます」

「じゃあ、調査に行ってくれないかな。ポイントは指定するから」

「行くのはいいんですが俺一人で行っても意味ないかと。

どんな岩石か解りませんし」

「サンプルならあるぞ。これだ」

握り拳大の岩石を手渡される。


「これは花崗岩の一種でな全体的には乳白色だが風化すると褐色を帯びてくる。

ちょっと割ってみるぞ」

褐色の岩石を割ると内側は白かった。

「ホントだ、白いですね。この黒いつぶつぶがあるのが特徴ですね」

「そうだ、それとこのキラキラ光る銀色のつぶつぶが見えるかな?

これがミスリルだ」

「なるほど。砕いて精製すればいいんですね。

でもそれだと大量の原石が必要になりますね」


「そうだな。まともに生成すれば結構な設備が必要になるのだが」

「だが?」

「ミスリルが集まっている鉱脈がどこかに存在する」

「このツブツブが、ですか」

「まず花崗岩は大きく分けると火成岩に分類される。

地の底からわき上がってきた溶岩の類だ。

されにそれが隆起する課程で破砕状となり再び沈降して地熱で溶かされ

る事を繰り返すウチにミスリルだけが沈殿して凝固した層が形成されるのだ。

その岩石層がうまく地表に出ていれば問題ないのだ。

しかしそんなことは希でな。山を掘って行かねばならん。

しかも出るかどうかもわからん。

これじゃあ誰もやりたがらないわな」


「なおさら俺一人で行っても不安なだけですね」

「順を追って探して貰うよ。

上手くいけば露出している場所が見つかるかもしれん。

まずはこの風化花崗岩を探して貰う」


 教授は地図にバッテン印を付け始めた。

「まずはこの辺りを探してみてくれるか?

出来ればサンプルも欲しい」

「解りました。空間収納バッグがあるからサンプルは多めに取って来れると思います」

「頼んだぞ」


 地図を再び眺める。

すると見たことがない表記があるのが気になった。

「教授、興味本位でお尋ねしますがこの線と点はなんですか?」

「おお、それを聞いちゃう?ねぇねぇ聞いちゃうの?

ふふふ、これはね・・・・・」


 教授の目が少年のようにキラキラと光輝いている。

うーん、話が長くなりそう。


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