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2-18 終わりなき攻防戦 その3 エリック編 アケミからの手紙


 翌日いつもより早めに朝食をとった。

夕べは夕食後にまた温泉に入った後たっぷり睡眠をとったの皆でつやつやしてる。


 朝食を食べながら予定を確認した。

殿下が言う。

「私はこの後グレンヴァイスの王と会い政府の面々と

街道拡張工事の話を詰めていく

その他にも話し合わなければならない事が多々ある。

それとシェリー姫は安全保障に関する会議に呼ぶと思う。

待機していて欲しい

静養組はゆっくり観光でもしていてくれ」


 俺も挙手して発言。

「はい、俺は南に向かいます。

ドワーフの精錬所を探してミスリル鋼を入手してきます。

時間はどれくらいかかるか解りませんが、出来うる限り速くやりますね」


 まずはストレートに海に向かって見ることにした。

くうを繋ぎ平野部を目指す。

農村地帯は割と平和でのんびりしているように見える。

 海岸近くの町や村は魔人に襲われたらしいが現状がどうなっているのか解らない。

海に向かう街道の途中に軍の駐屯地があった。

 

 あらかじめグレンヴァイス側が発行してくれていたパスを見せる。

「ルド王国の勇者様でしたか。こちらにどうぞ」


 指令の部屋に案内された。

「勇者殿、よくぞ参られた。

海岸線の現状が知りたいんですな?」

「はじめまして。そうです、いろいろお聞きしたい。

海岸沿いには魔人の軍が展開しているんですか?」


「ええ、いるにはいるんですがそんなに多くはないです。

おそらく最低限の人数を残しているだけでしょうね」

「反抗はしないんですか?」

「何度か試みてます。が、その度に失敗してます。

我が国は魔法使いが少ない。

一般の兵では太刀打ちできないのが現状です」


「なるほど。安全保障会議で約束したルド王国の支援ですが、

現在アレックス殿下がグレンヴァイス側と話し合っています。

協力して魔人の軍を打ち負かしたいですね」

「そう言っていただけると心強い。

ところで勇者殿はどんな用事でここに?」


 俺は事情を説明した。

「そう言うことならこの先の湾の西側が断崖絶壁になってます。

そこなら村もないし魔人も警戒してません」

「なるほど。そこから南の大陸に渡れそうですね。

ガウンムアの現状はわかりますか?」

「いや、海岸を封鎖されてから情報が入って来ません」

「わかりました。渡ってから何とかします」


 目当ての山はガウンムア側に入れば目に着くので方向はわかるそうだ。

目視できれば空間を繋ぐことが出来る。

ガウンムアに敵がうようよいたとしても上空をくうで繋げば

ばれることはないだろう。


 指令にお礼を言い駐屯地を後にする。


「海だ。そういや海見るの初めてだったな」

転生後初の海だが、感慨にふけっている暇はない。


 老師に教わった空中でくうを繋ぐ方法で

目視で方向を確認しながら海を渡った。

あっというまに海を越える。


「あの山かな?ドワーフの話ではあの山の北北西の中腹に

精錬所があるはずだが」

とりあえず行ってみよう。


 山の近くまで一気に飛びいったん見晴らしが良さそうな尾根に降りた。

「んー、太陽がアッチで今お昼頃だから方向はコッチであってるハズなんだが」

中腹までは森が続き標高が上がるに従い植生が乏しくなる。

一定の標高から上は岩山になっている。


 えーちゃんが教えてくれた。

『見つけた。あの黒い煙が立ち上ってる場所に建物があるね』

『サンキュー、えーちゃん』 


 近くまで行ってみることにした。

「やっぱり。ここで良いみたいだ」

丸太で組上げた高い塀沿いに歩いていくと門があり詰め所が見えて来た。


「う、魔人が門番してるのか。どうしようか」

えーちゃんからアドヴァイスがあった。

『かませ。ハッタリかまして切り抜けろ』

『うーん、それしかないかな?』

忍び込んでも良いのだが見つかったら大事だ。


 俺はバッグからドワーフから預かった発注書を取り出した。

「さーて、上手く騙せませますかねー。根性決めて行ってみるか!」


 案の定衛兵に止められた。

「貴様は人間か?何しにここに来た。場合によっては殺すぞ」

俺はドワーフ語で書かれている発注書を見せた。

「へい、これを運べと頼まれた運送屋です。バッグ持ちなんですわ」

「見せてみろ」


 衛兵は発注書を読み始めたがどうやらこいつもはったりカマしてる感じだな。

視線が泳ぎまくっている。

およそ読んでいるようには見えないのでドワーフ語は読めないのだろう。


「どこから来たんだ?」

「ん?そっちですが」

俺はすっとぼけて北を指さす。

「ガウンムアか。中将の軍が必要としているのだろうな。

よし通っていいぞ」

「ども」


 精錬所の中に入る。

事務所っぽい建物を見つけて入って行った。

「ちわー、三河屋でーす」

「誰アルね?」

俺は黙って発注書を手渡す。

それを読んだドワーフは顔を近づけて小声になった。


「ルド王国から来たか?よく来れたネ。

これを書いた奴はお得意さんだが戦争はじまてからこれなくなたアルよ。

今品物揃えるから待つ、イイネ?代金は?」


 俺は言われていた通りの金貨を積み上げる。

ドワーフは数え始めた。

「ケッコーケッコー。ついてきな」


 後を着いて行く。精錬所の中の倉庫に案内された。

ドワーフ同士がドワーフ語でなにやら会話しているが理解はできない。

発注数の確認でもしているのだろう。


 数人掛かりで数度に分けて持ってきたミスリル鋼の延べ棒を

ひょいひょいバッグに入れていく。

「そのバッグなんトンはいるね?」

「わからん、たくさん入るとしか言いようがないな」

「ならもっと持って行くアルか?」

「え、いいの?」


 どうやら戦争が始まってから売れ行きが芳しくなく、在庫が積み上がっているそうだ。

俺は手持ちの金貨を確認する。

「じゃあこれで買えるだけお願い」

「はいよ、待つアルよ」


 さらに延べ棒が積み上げられる。

全部を収納すると受領書にサインが欲しいとの事なので事務所に戻った。

受領書には『アリック』と偽名でサイン。

一瞬亡き王を思い出す。


 帰ろうとすると奥に居たドワーフが何か封書のような物を持って来た。

「これをルド王国まで届けて欲しいアルね」

「いいよ。宛名は書いてあるの?」

「書いてあるけど誰も読めないネ」


 手渡された封書には大きなひらがなで

『ゆうしゃ えりっくさま』

と書かれてあった。

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