2-12 ガウンムアからツイーネへの侵攻 その3 トルグとサラ編
俺はトルグ曹長、一緒にいるのは妹のサラ伍長だ。
俺たちは空を繋いで海峡を渡りツイーネ王国入りした。
魔人軍が既にガウンムア王国を占領している話は伝わっているらしい。
海岸沿いや港には数多くの将兵が配置されていた。
だが聞き込みを行ってみると確かな情報を持っている者はいなかった。
両国を行き来している定期便が途絶え、かろうじて引き返してきた便に乗っていた者達が
遠目に戦禍らしき物を確認しただけだそうだ。
だがそれだけでも警戒を強めるには充分な理由だった。
国内ではすでに相当数入り込んでいる魔人とおぼしき連中の
犯罪事件が多発していたからである。
「ちっ、あいつら全然潜伏になってねぇじゃねぇか」
「兄様、どうします?殺します?」
「アホ揃いではあるが一応仲間だ。殺しちゃいかん」
サラは幼い見た目ではあるが俺の一つ下の二十歳だ。
背も低い童顔なので子供に間違えられるが中身はオバチャンだぞ。
「兄様、今失礼な事考えてました?殺しますよ?」
「気のせいだ」
俺とサラは海岸沿いの町を幾つか廻り情報を集めていった。
どこの町でも魔人は恐れられている。
恐怖心を植え付けるために犯罪を犯しているのか?
そうは思えんが。
酒場で漁師の話を聞いた。
「どこにだって犯罪者はいるよ。強盗、強姦なんざ魔人じゃなくてもやってるさ。
今は何でも魔人のせいにしちまえばやりたい放題だぜ。
軍も役人も魔人のせいにしてろくに捜査なんざしやしねぇ。
治安が悪くなったよ」
「そうかい、この町も大変だなあ。まあどこも似たり寄ったりだよ」
「だろう?そっちのお嬢ちゃんも気をつけろよ。
可愛い娘は目を付けられやすいからな」
「やーん、おじさん。可愛いだなんてそんな本当の事を」
ほっぺに両手を当て身をくねらせる妹。
きもい。
「兄様?殺しますよ?」
「何も言ってねぇぞ」
港町から国の中央部にある首都に移動する。
周辺の農村はのどかなものだったが、首都は至る所に軍人が闊歩し警戒に当たっている。
聞き込みは主に王族の構成だ。
王族の肖像画を売っている画廊を見つけ話を聞いてみた。
「お前さん達はこの国の者じゃないのかね。どこから来なすった?」
「サフラス王国だよ。山育ちなものでツイーネみたいな都会の事情に疎くてね。
良ければ王族の事を教えてくれないか?
あーほら、田舎者とは言え王家の事を何も知らないようじゃ不敬に当たるからね」
「そういう事情かい。いいよ教えてあげよう。
まずこの立派な髭のお方が国王の・・・・・・」
一通り説明を聞いた後礼を言い店を出た。
何も買わないのも悪いので一番安くて小さい王族の集合画を購入した。
「ガウンムアのように王子を残すみたいな形にしてくれると煩わしくないのだが
どうやらそうも言ってられないな。
ヴァレリ中将は今回は蹂躙しつくすと思う。
橋頭堡は築き上げたし、いたずらに属国を増やしたところで返って手間だからな」
「兄様、それでいいのでは。人間は滅ぼすのでしょう?」
「ああ、この国には滅んでもらう。それはそれでいい。
だが俺たちは上司の命令には逆らえないだろう?
王族を一人でも逃がすルートの確保が必要だな。
誰にしたらいいものか」
「ならこの子なんてどうです?」
サラは王族の絵の一人を指さした。
「国王の孫だったよな確か。名前はランスで14才の王子様だっけか」
血を継げる者を一人でも確保しておけば任務は完了だ。
こいつでいいだろう。
「よし、後は地図を購入して首都からの脱出ルートを探るか」
俺たちは地図を購入し大まかな脱出リートを決め潜伏できる場所を確認してから
報告のために一度ガウンムアに帰ることにした。
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「ご苦労だった。それにしても先遣隊がすでにやりたい放題なのか」
ボイド隊長が労をねぎらってくれた。
「国内を混乱させる目的ならばそれは成功してると言えるでしょうね」
「そういう見方もあるな。ま、それはいい。
ところでそろそろ侵攻が始まるぞ。
今度は俺たちも全員でツーネ入りする。
基本的にはヴァレリ中将から『殲滅せよ』という命令が下るだけだ。
順序もやり方も問われない。好きなように殺しまくれとさ」
「我々も戦力に計算されているんですよね」
「もちろんだ。中将の意にそぐうようしっかり働いてほしい。
もちろん少将の命令も遂行しながらな」
「なんか変な気分ですが仕方ないですね。
命令には従うべく脱出ルートは確保しておきました」
「ご苦労。首都では君たちの指示に従うのでよろしく頼む」
「了解しました」
そしてツイーネ侵攻作戦が始まった。
空を使えない部隊や魔物を従えたテイマー達を乗せた船団が港を出て行った。
空を使える兵達は先に港に行き作戦を開始している。
殲滅されたツイーネの港湾守備隊の死体がごろごろ転がっている港に船がぞくぞくと到着した。
東の主要な港町も似たような状況になっているはずだ。
魔人軍はツイーネの軍人、民間人を問わず片っ端から殺して廻っている。
一部見目麗しい適齢の女性は強姦の対象となり
事が終わり次第殺されていった。
「おい、死体は全部焼かなくてもいいぞ。
オーク共の餌にするそうだ」
テイマーが連れてきた魔物には人型のオークやコボルトがいる。
特にオークは悪食なので食料の確保は重要課題だ。
顔中を血まみれにしながらオーク共が死体を食い散らかした。
港町を制圧した後、街道を堂々と首都に向け歩き始める。
道すがらの町々の住人達は逃げる間もなく殺されていった。
途中で天幕を張り一泊する。
夜が明け再び行軍を開始。
しかし夜のうちに噂が広まっていたのだろう、もぬけの殻になっている集落が多く
肩すかしを食らった。
街道から外れた集落は連絡が行き届いてない所も多かったのか
殺す対象はそれなりにいた。
魔法も剣も使えない一般住民の虐殺は訓練も兼ねて新兵にまかせた。
「食料庫は燃やすなよ。後方から支援担当部隊がやってくる。
破壊すると怒られるぞ」
笑いが起こる。
それほどまでに皆楽な気分で虐殺を楽しんでいた。
「ヴァレリ中将、予想よりも速いスピードで侵攻が進んでおります」
「ブランカ副官、報告ご苦労。今回はワシの出番がないな」
「新兵の訓練も兼ねてますので中将はご遠慮ください」
「うむ。新兵の教育も大事だからな。だが体力が余ってしかたがない。
来いブランカ、一発やるぞ」
ヴァレリはブランカの手を引き自分の天幕に入っていった。
「あん、中将。まだ昼間ですわよん?それに」
「それに?」
「一発だけなんですか?」
「ふははは!面白い奴だな、二発でも三発でも腰が抜けるまでやってやるわい!」




