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1-5アレックスと王家の人々

王家の人々の動向です。ここからSF要素からんできます。

 士官学校に編入してからは生活が激変した。

ここは出自と身分を問わない。

貴族だろうが平民だろうが皆対等に扱われる。


 最初の内は一兵卒としての基礎訓練が日課となる。

まずは兵士がどのような立場でどのように運用されるべきかを

体で覚えさせられるのだ。


 体力もなく剣技もお粗末な士官に兵はついてこない、

と考えられてるためである。

私は王子であるが特別扱いされることはなく日々皆と一緒に汗を流した。

それと同時に座学であるいは訓練で用兵学を学ぶ。


 14才になると身長も伸び体重も増え、

剣の授業では先輩から一本取ることもあった。


 用兵の演習でも成果をあげはじめる。

上手くいくことばかりではなかったが周りからは天才だ、


さすが王子だととの賞賛の声を浴びせられる。

世辞や社交辞令の類だと解っていても誉められればうれしいものだ。

が、自分に与えられた使命の事を考えると、

うぬぼれている場合ではないと自分を戒めることもできた。


~~~~~


 用兵学において頭角を現してきた同級生がいる。

名前はダニエル・ド・ブラン。

西の地方都市クルトフを治める伯爵家の息子である。


 見た目は肩幅が広く胸板の厚いがっちりとした体型。

四角く広い顔だが目は細く表情は読み取りにくい。

立ってるだけで威圧感がある男なだけに彼が指揮をとると兵もキビキビ動いた。

しかしながら見た目に反し気さくな性格で周りからはダニーと呼ばれ慕われている。


「殿下、昼飯の時間ですぞ」

午前の座学が終わるやいなやダニーが話しかけてきた。

ここまで聞こえる程に腹がキュルキュル鳴っている。


「珍しい動物でも飼ってるみたいだな」

軽くからかう。


「じゃあ殿下が名前つけてくださいよ」

「気が向いたらな」


 食堂に到着するとマイクルとベルトランが居る

テーブルを見つけ席につく。


マイクル・デュバルは騎士家の長男。

剣技でならした父をしのぐ天才と言われている。


「ようダニー、殿下の護衛ご苦労さん」

「うむ。護衛ポジションは譲らんぞ」

「嫌みで言ってんだよ。そういうのは殿下から一本取ってから言え」

「違いない」


 ベルトランはごきげんよう殿下、とかいい加減な挨拶をして

そのまま目の前の肉とスープとパンに没頭。

痩せてるくせにかなりの大食いだ。


 平民出身のベルトランはその類い希な頭脳の良さを買われ、

奨学金を受けて士官学校に入学した秀才だ。

兵站学においては彼の右に出る者はいないだろう。

あるべき物があるべき所に必要な分だけある。


 戦略においても優秀な成績を収める彼は作戦参謀向きだろう。

目立つタイプではないが、いなくては困る人材だ。

その頭脳で大量のカロリーを消費してるのだと思えば、

いくら食っても太らないのは納得できる。


 私もダニーもトレーに好きな物を取りテーブルに運ぶ。

例え王子様であろうと食べたいものは

セルフサービスで取ってこなければならない。


 昼食を終え談話室に移動する。

今日は午前の座学だけで終了なので、

昼食を終えた生徒のほとんどはそのまま帰って行った。

がらんとした談話室の一番日当たりの良い席に4人で陣取る。


「ところで皆、私が勇者捜しをしていることは知ってるよな」


皆うなずく。

「最初の頃は私も立ち会っていたのだが、最近は面倒になってな」


 マイクルが答える。

「ろくでもない勇者もどきばっかりですからね。気持ちはわかります」


 ベルトランが提案をしてくれた。

「選定を予選形式から始めたらどうです?」


「うむ。ナイスアイデアだ。だがどうやって?」

「単純に剣技を試すとか。魔法が使えるなら見せて貰うとか、ですかね」


「そうだな。そうしてみようか」


『求む勇者、伝説の宝剣をつかみ取れる者よ王城へ来られたし』

おふれを全国に流布してしまったため、かなりの人数が王城を訪れる。

簡単な身元調査と持ち物検査をした後、

目隠しをして旧王城区画の謁見の間に連れて行き

剣を取れるかどうか試させていたのだ。


「あら、皆さんごきげんよう」

タチアナ・エステスが近寄ってきた。

マイクルが開いてる椅子を勧める。

タチアナは騎士家の次女。

すらりとした長身で細面の美人だが残念な事に・・・


「タチアナ、相変わらず成長遅いな」

マイクルが胸を見ながらからかう。

「うっさい。まだ14才だものこれからよこれから。

ところで殿下、今残念って思いました?」

「まさか」

この女エスパーか。妙な所で鋭い。


「勇者探しが難航していてな。皆にアイデアを出して貰っていたのだ」

「それって例の宝剣をつかみ取れるかどうか、ってやつですよね?」


「そうだ」

「いちいちお城の中に勇者候補を入れるのもセキュリティ上まずいですよね

外に持ち出すことは出来ないんですか?」


「大理石ごと外に運び出せば良いのか。なるほど」

と、なるとどこがいいだろうか。王城の外に持ち出すのは・・・


「お城の門前でいいんじゃないですかね」

・・・・。

深まるエスパー疑惑。


「大理石ごと盗まれたりしてな」

「まあ、その心配はないでしょう。

常に門番がいるし心配なら警備をつければいいんです」

「うむ。そうするか。早速手配しよう」


~~~~~


王の執務室には三人の人物がいる。

国王ウォルター・ボ・ルドウィン、第一王子クレイグ・ボ・ルドウィン

そして外務調査室室長ニコラ・ヴォルコフである。


 ニコラが報告を始めた

「まずは反乱の兆しについてです。

当室の集めた情報ですと西の国境付近に反乱分子が潜んでいるらしいのですが、

首謀者、人数、目的、方法など具体的な情報は何一つ掴めていません。

というのは、当室の送り出した数人の諜報員のうち帰って来たのはたった一人。

それも都市部でのうわさ話を集めただけの信憑性に乏しい情報です」


 国王が口を開く。

「役に立たんな。君の所は何をやってるんだ?」


すかさずクレイグが割って入った。

「まあまあ、父上。

外務の腕っこきが生還できていないと言うだけでも貴重な情報です。

スパイ行為を見抜ける連中なのですから決して侮ってはいけないかと。

調査室の諜報員が役立たずというわけではなさそうですぞ」


 うーむ、とうなり腕を組みしかめっ面をする国王。

ニコラが言う。


「陛下、現在エース級の諜報員を送り込んであります。

今しばらくお時間をいただけないでしょうか?

必ずや有益な情報を持ち帰ることでしょう」


「ふむ。その者の名はなんと申す?」

「恐れながら、諜報員の素性は陛下にも明かすことはできません。

報告はすべて私の名においてさせていただきます。ご容赦ください」


「わかった。今しばらくの猶予を与える。

内務も軍務も諜報機関を持っているのだが、

連係の取れてないスパイを大勢送り込むのも効率が悪い。

まずは外務部に任せるが成果が出ない場合は任を解く。わかったな?」


「はっ!」

ニコラは執務室を退出しながら送り出した諜報員の成果を期待した。


~~~~~~


 王都ルドアニアの繁華街にある大衆居酒屋。

今日も盛況であった。

騒がしい店内とテーブルの間を走り回るウェイトレス達。

毎晩見られる光景である。


 壁際のテーブルに陣取った三人の男達はエールのおかわりを注文した。

小声で何か会話してるが周囲の喧噪にまぎれ、

何をしゃべっているのかは周囲には解らない。


おかわりのエールをそれぞれが飲み干し、男達は席を立つ。

会計を済ませ店外へ出ると、三人連れだって裏通りへと歩いて行った。


 一人が後ろを振り返る。誰もつけていないことを確認。

一人が裏路地に面した建物のドアをノックする。

少しを間を置いてドアが開いた。


ドアが開いても光が外に漏れ出す事はない。建物の内部も暗いのだろう。

三人は暗い空間に吸い込まれるように入っていった。


 一人が火魔法で小さなロウソクに火をともす。

ゆらゆらと踊る炎が照らし出す廊下を進んでいくと

地下へと降りる階段があった。


男達は地下室のドアを開け中に入る。

すでに数人の男女が集まっていた。


 さほど広くはない地下室だが

調度品の類が一切ないがらんとした空間のため

10人前後の人間が立って集まっていても

さほど息苦しさは感じない。


全員の顔を確認した一人の男が口を開く。

フードを深くかぶり、薄明かりの下でははっきりと顔はわからない。


「それでは定例会を始めよう。まずは各都市の状況だ」

各自が担当地域の状況を順に話し始める。


 最後の男が報告を始めた。

「クルトフ担当です。王国のスパイを数人捕らえましたが、

全員適切に処理しました。

特に具体的な指示は受けておらず

ただ偵察してこいと命を受けたのみと思われます」


 リーダーらしき男が質問する。

「誰も帰ってこないとかえって怪しまれるんじゃないか?

その辺の対策はどうなってる?」

「は。今潜入している奴にニセの情報を掴ませて帰すつもりです」


「うむ。ぬからぬよう慎重にな」

「心得ております。して、動いてるのは外務のスパイだけなんですかね?」


「今回送り込んだ奴が失敗すれば外務の調査室はお払い箱だな。

次には軍務と内務が動き出す。

特に軍務は手強いからな。

奴らが出張って来る機会を後らせる意味でも

ニセの情報を掴ませる作戦は良いかもしれん」

にやりと笑うリーダーらしき男。


「まさか王城に我々の間者が入り込んでいることなど

知るよしもあるまい。

気付いた時が奴らの命日となるであろうがな」

皆がつられて頬をゆるませる。


 定例会はお開きとなり三々五々建物を出て行く。

残ったのはリーダーらしき男と妙齢の女性が一人。


「順調のようだな。

おまえは引き続き全員の窓口となって情報を集めてくれ。

人員、資材等の調達は資金の範囲内で自由にやってかまわん。

任せたぞ」


「はっ!ぬかりなきよう心得ます。

王城内の動きは引き続き教えてくださいますよう

お願い申し上げます」


 どうやらこの女性が副官のような立場にいるらしい。


「あなた様のお立場でしたら、

王城内のどんな情報も入手できますものね」

「滅多なことを言うな。どこに耳がついているかは解らんぞ」


 ロウソクの火がゆらりと動き一瞬フードの中の顔を照らし出す。

この顔は・・・・・


~~~~~~


「映像はここで途切れてます」


マリアンがスクリーンを閉じながら説明する。


「インセクト・アイが見破られたのかしら?」

「最後に一瞬だけホウキのような物が映ってます。

虫だと思って叩き落としたのでしょう」


「ならいいわ。

フードの男の正体がわかっただけでもね。

マリアン、お茶のおかわりを」


小蠅程度の大きさで生体部品も使用しているため、

壊れたインセクト・アイはつぶれた蠅にしか見えないだろう。


 幽閉されている間はひたすら情報収集をしていた。

クレイグはどんな手段を用いて第一王子のポジションを獲得したのか。

それは何のために?彼の正体は?どこから来たの?


 情報を収集しては仮説を建て、また情報を集める。

インセクト・アイを多数使えればもっと楽なのだが、

この世界ではあまりにも異質なテクノロジーなので

絶対にばれてはならない。

この辺は本国からの指示もあるので

必要最小限の使用にとどめている。

 

 プライベートスクリーンを展開する。

これは操作者以外には見えない。

端からみたら何もない空間でひらひらと

手を動かしているだけのように見えるだろう。


まあ、それだけでも充分変な人に見えるので、

マリアン以外誰もいないことを確認してから操作することにしている。


 ホーム画面の右端にポップアップ。

メールが届いた。


「母船からね。ふむふむ、

収集された魔石の量と現在確認できる量との差異について、か。

マリアン、そっちに添付ファイルをわたすわ」


 添付ファイルを展開し解析したマリアンが解説をする。

「マップを出します。赤い点をご覧ください。

大陸の要所要所に大量の魔石が集積されています。

用途は不明。

総魔石量から王城内で確認出来ている量を引くとほぼ数は合います」


「用途はおそらく見当つけておいた通りだと思うの。

あとは裏付けね。なんか良い方法あるかしら?」


「はい、まず先輩や私が術にかからなかったように、

ネイティブの中にも影響を受けなかった者が居るかもしれません。

該当者を探してみてはどうでしょう」

「うん、そうね。ともかく大量の魔石を利用した

精神干渉装置の類で間違いないと思うわ」


 精神干渉装置そのものは本国にもある。

しかし大衆の洗脳が簡単に行えるので基本的には使用は禁止されている。


それと似たような効果があるなにかを

魔石を利用して作り上げたのはほぼ間違いない。

この星特有の魔法という手法を用いてのことだと思う。


「干渉装置さえ壊してしまえば皆洗脳状態から解放されるでしょう。

母船からのレーザーで破壊する手もあります」


「そうね、マリアン。でもさすがに許可が下りないと思うわ。

私たちの目的には魔石を集めて本国に送り出すことがメインだから。

壊したら怒られちゃう」


 私たちの目的はこの星で魔石を集めることにある。

魔石は宇宙船が中間空間に入り込むための

反応炉で消費する燃料に最適なのだ。


 我々がハイパー光速航行と呼ぶ航法はまず物理空間で光速に達した後、

特殊反応炉を作動させ次元と次元の隙間にある中間空間へと移行する。


中間空間ではいくつかの物理法則が無視されるため、

光の速さの数百倍の速さまで加速することができるのだ。


この航法の開発・・・再発見なのだが、

そのおかげで数百光年離れた星系同士が

交流を持つことが出来るようになった。


 星間連合に所属する48星系の内わずか8星系だけが

中間空間を利用したハイパー光速航行エンジンの燃料を算出する。

我が星系は非算出星系なのだ。


 算出する星系は組合を持ち価格を安定させている。

カルテル行為なのだが、輸入をストップされると

ハイパー光速航行ができなくなり活動範囲が大幅に狭められるため、

中央評議会も見て見ぬふりをしている。


 星間連合の支配外星系で燃料の発見にいそしんでいた我々が

この星を発見したのは偶然である。


偶然とは言え、連合の目の届かぬ星系で

代替燃料の発見を出来たのはラッキーだった。


であるがゆえにまだ連合及び評議会には知られてはならない。

現時点では我が星系が独占できる資源だもの

わざわざ知らせる必要はない。


 マリアンは破壊してしまえと提案してきたが、

あまり派手にエネルギーを使うと星間連合に

我々がこの星系で活動してることがばれてしまう可能性がある。


 銀河の外苑部に位置する星もまばらなこの星系は、

星間連合の支配地域からかなり離れている。

しかし辺境パトロールの船がこの星系での

エネルギー異常を感知しないとも言い切れないのだ。


 単なる収束レーザーなら問題ないのだが、

母船のレーザー砲は空間収束砲と言い次元と次元の隙間にある

中間空間を通り抜けるため、どうしても次元の揺らぎが起きてしまう。

星間パトロール船なら次元の揺らぎは察知出来るので、油断は出来ないのだ。


「まずはクレイグとやらを私の息子と認めましょう。

それぐらいの演技力は自信あるわ。

次に術にかかってない人間のピックアップだけど、

マインドコントローラーの探知部分だけを抜き出して

小型の装置を作れないかしら。どう?」


 マリアンがなにか操作、一瞬後に返答。

「可能です」


「ならそのように。さてさて、

まずは旦那にコンタクトを取って幽閉解除ね。

それから・・・・・」



主要登場人物がほぼ出揃いました。王子アレックスと勇者そして聖女が出会うまでもう少しかかります。

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