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1-46 アレックスの魔王討伐軍と勇者


 魔王討伐軍の編成は順調に進んでいた。

陸軍から編入になった兵は冒険者からのレクチャーを受け

魔物討伐の訓練も始めている。


 魔法部隊の訓練も対魔人戦闘を想定しての訓練が開始された。

これはスフィーアからの亡命者が指導をしてくれている。

魔人に関する情報が足りない中、実戦経験者の情報は貴重だった。


 教会からはセシリア嬢率いる聖女の治癒部隊が派遣されてきた。

レベルの差はあるが総勢20名の治癒部隊の合流はとても心強い。

軍の衛生班と連係を取って貰う事になった。


 今、新たに用意して貰った私専用の執務室に主要メンバーが集まっている。

「シェリー姫。冒険者や魔法部隊の指導者の派遣、感謝する」

「ありがたきお言葉、殿下。当面我々に差し出せるものはそう多くはありません。

出来うる限りの事はさせていただくつもりです」

「こちらとしても実戦経験者の指導は大変ありがたいのだ。

今後ともよろしく頼む」


「聖女様、治癒部隊のまとめ役よろしく頼みますぞ」

「そ、そんな。殿下、頭をあげてください」


 スフィーアの面々も聖女様の部隊も私直属となるが、

王家が直接雇っているわけではない。

礼は必要だ。


「さて、勇者エリックからの提案で

『勇者のパーティ』を編成することとなった。

これは対魔王戦を想定したパーティとなる。

各部門の長は勇者のパーティメンバーとしても活躍して貰いたい。

私もメンバーの一人として活動する。勇者殿」

 勇者に一言を促した。


「初めての方ははじめまして、エリックです。

魔王がどんな相手なのか詳細は今のところ不明です。

1000年前の記録が参考になると思うので、記録を調べてみます。

直接対決は俺がやります。皆さんにはそのサポートをお願いしたい。

各自が得意分野で力を発揮すればいいと思います。

私からは以上です」


 幾分緊張気味の勇者の話が終わり、お茶を飲みながらの座談会に移行した。

初対面同士は皆挨拶をして廻っている。


 私も聖女様に話しかけた。

「先日のミサでお見かけしました。一番新しい聖女様ですよね」

「はい、王都に来たばかりでまだ勝手がよくわかりません。

ご指導の程よろしくお願いいたします。

それと、ちょっとお聞きしたいのですが」

「なんなりと」


「1000年前の勇者の記録があるんですか?」

「ええ、ありますよ。一般に出回っているのは写本ですが

王城には原本が保管されてます」

「一般人は閲覧できないんですよね?」

「出来ませんね」

「私も駄目ですか?」

「いや、聖女様なら問題ありませんよ。しかしなぜ?」

「勇者の残した『呪文』の研究を個人的にやってるんです。

ウーファにある書籍類では手詰まり状態だったので」

「それなら願ったり叶ったりですね。

当面聖女部隊は出番はないと思います。

記録の調査を手伝ってくれると助かります」


 基本的には怪我人が出ない限り治癒部隊の出番はない。

聖女様と会える機会はこういったミーティングの場に限られてしまう。

が、記録の調査に加わってくれるなら会う機会も増えるだろう。

また会ってもっと話がしたいものだ。


~~~~~~~~~~~~


 勇者認定を受けた後、老師が俺に色々と要請してきた。

「エリック、まずワシが軍の魔法部隊の指導者という名目で

王城に出入り出来るようにしてくれんかの」

「わかりました。殿下に提案します」


 エドが心配そうに尋ねる。

「しかしそれではクレイグと対面することになるかも知れませんね」

「それが狙いじゃ。奴はワシの顔を知っておる。

髭を剃ってしまったが魔石持ちの奴ならすぐにわかる。

奴は立場上ワシを知ってるとは言えないはずじゃ。

それとエド、お主も対魔物戦闘のプロとして指導できる冒険者を集めて欲しい。

一緒に軍の指導に当たるぞ」


 エドとシェリーは謁見の時にクレイグと会ったのだが見事に自制していた。

本当ならその場で八つ裂きにしたかったはずだ。

その機会を伺うためにもエドやシェリーが指導者として

王城に出入りできるようにしておきたいのだ。


「カミーラもワシの弟子という立場で指導に当たって貰おうとも思ったんじゃが、

教会の所属だしの。しばらくはスフィーアの生き残りであることは伏せておく」

皆が了承した。


~~~~~~~~~~~~


「えー、じゃあやっぱり『常に優しい狼』は解散なの?」

アケミが不満そうな声をあげた。

エドが答える。

「すまん。俺たちの目的はあくまでスフィーアの再建なんだ」


俺が一言意見を言う。

「解散はしなくてもいいんじゃない?活動休止宣言とかでどう?」

「いや、エリック。それは言葉遊びの類だぞ。

実際に活動しないならギルドにも申告しなきゃならないし」

「うーん、そう考えると活動休止宣言って案外うさんくさいんだなあ」


「そこで提案がある。

冒険者として対魔物戦闘の指導を軍にしなきゃならなくなった。

ウィリーとギルバートは俺と一緒に

アレックス殿下直属の部隊に入ってくれないだろうか」


 ギルバートが答える。

「ああ、俺はオッケーだよ。

実家からはもうフラフラするなと言われてるし殿下の配下なら文句ない」


 ウィリーが笑っていた。

「フラフラってなんだよ、(笑)。

まあ、冒険者なんてワケありの人間がなるものだしな。

で、俺なんだが断らせてもらう。

殿下の直属とは言えもう軍に戻る気はないんでね」


 ウィリーは軍にいた戦士だったっけ。

いろいろあったんだろう、詮索するのはよそう。

「ま、俺はどっかのパーティに入れて貰うかソロで活動するか、だな」

「わかった。すまん」

「いいよ別に」

ウィリーはエドにひらひらと手を振って答えた。


「わ・た・し・わ-」

アケミが本格的にふくれっ面だ。

エドが俺に丸投げしてきた。

「エリック、アケミはお前の所有物だ。どうする?」

「そうだった、まだエリックに借金あるんだった。

じゃあ私エリックのお嫁さんになる!」

「ちゃかすなよ」

俺はアケミが日本に帰れる手段を探してやりたいのだ。

できればそばに置いておきたい。


「俺の従者という形で勇者のパーティに入ってくれ。

勇者のパーティに入る連中は皆それぞれの組織の長なんだ。

俺専用の右腕になる人物が欲しい。ちなみにちゃんと給料出るぞ」

「オッケー!じゃあ今までとあんまり変わらないね」


~~~~~~~~~~~~


 それぞれがそれぞれの立場で思惑を抱える。

それぞれの目的を達成するため、あるいはさせないために。


 混乱の兆しは至る所にあったんだ。

だが俺たちは気がついてなかった。

この時は出来うる限りの事を懸命にやっていたはずなんだ。


 Worlds Confusion、

それは突然やってきた。


これで第一章完となります。章管理を行ってから第二章を始めたいと思います!

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