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1-40  王妃マチルダの事情 その1 宇宙から来たテクノロジー

『ねぇ、もういいわよね?』

『ああ、俺たちだけだ』

スクリーンにはクレイグと副官らしき女が

服を脱がせあってる姿が映し出されている。


 マリアンが口を半開きにしてスクリーンを見てる。

顔が真っ赤だ。


『・・・・んっ・・・・・あっ・・あん・・・・』


 スクリーンよりもマリアンの顔見てたほうが面白いのだが、

そろそろ止めに入るか。

「ねぇ、コレ最後まで見るつもり?」

「はっ、失礼しました!飛ばします!」


 クレイグを尾行していたインセクト・アイは無事帰還した。

今回は改良型を投入したので映像も音声も鮮明だ。

私達は内容を確認するために北の塔の一室で閲覧を始めたのだが

ご覧のような展開。

マリアンは興味津々みたいだが一応仕事なのでね。


 早送りした画面には動きを止めた裸の二人が映っている。

あら、またキスしてる。まさか延長戦突入?

「ふ、服を着始めました。ここからの会話を拾います」


 再生が終了した。

目に毒ファイルは隔離してパスワードかけとくわ。

マリアンが残念そうな顔してるが

この子ならパス解析とかやりかねないわね。


「クレイグはやけに慎重ね。余裕とも言うのかしら。

一気に事を起こしてもいいようにも思うけど」

「魔王が肉体を手に入れて馴染むまで時間がかかる、と言ってましたね」

「逆に言えば魔王が完全復活したら手遅れになる可能性大ね」


 ブラン将軍はクレイグが仕掛けた精神操作の

影響下にない人間に慎重にコンタクトを取っている。


 既に数人仲間が加わった。

今のところ軍人ばかりだがこれはラッキーだと思う。

「いざというときは一個師団くらい動かせるように

体勢を整えておきたいわね」

「人数がそろわなくても個体バリアと

携行兵器各種を持たせれば戦力になるかと」


 持ち込んだインセクト・アイの事は棚に上げておく。

これはよほどのことがない限りばれはしない。

だが武器となると話は変わってくる。

「私とあなたは最低限の防衛のためにある程度の

装備を身につけることは認められてるわ。

でもそれらをこの星の住人に提供するわけにはいかないわね」


 将軍が集めてくれている軍人は今のところ階級がかなり上の人物ばかりだ。

正当な理由があればクレイグに対抗しうる勢力にはなるだろう。

これは今のところ将軍頼みだ。


「マリアン。精神操作の影響を個別に解く方法はないかしら」

「例のメダルですが、後から身につけても大丈夫のような気がします。

が、検証は必要ですね」

「そうね。勲章のオマケと言ってたけど

ここ数10年の叙勲のさいには配られてないのよ。

いつしか廃止された制度みたいね。

ストックが王城のどこかにあればいいだけど」

「それなら例の眼鏡でわかるんじゃないですか。

赤い光に包まれているはずですから」

「なるほど。それで探せるか。王城の旧区画を探してみたいわね」


「それに私達が影響されてない理由も今のところわかってない。

わかれば解決の糸口が掴めるかもしれないわ。

これはさらなる調査が必要ね」


 私達の主な任務は魔石の回収だ。それも安定供給が条件となる。

政情不安の国で魔石の安定的な回収が出来るとは思えない。


 だが本国はこちらの事情など汲んではくれないだろう。

もしルド王国が消滅する事態となったら今度は魔王と取引するか、

独自の回収ルートを確立しろと言ってくるに違いない。


 星間連合に登録されてない辺境星系の中の一つの国が消滅しようがどうしようが

本国にはどうでもいい話なのだ。


 だが私は違う。

あまりにも深く関わりすぎてしまった。

せっかく私が王妃になりアレックスまで生んだのだ、無駄にしたくはない。


 本当の身分を偽ってこの世界に潜入してる自分は

クレイグを責められるだろうか?

「そもそもの意味合いが違いますし、手法も違います。

彼等は人間を滅ぼしたいのでしょう。我々とは目的が違います」

「そうね、マリアン。

我々も我々の利益のために引くわけにはいかないわね」


 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ボイパ船長、積み荷はおろしましたぜ」

「ご苦労。i886R909号の注文品は?」

「手に入れましたが苦労しましたぜ」

「禁制品だからな。臨検に会っても見つからないよう偽装しておけよ」


 私の個体愛称はボイパ。この船の船長だ。 

ハイパー光速航行エンジンのメンテナンス進捗状況に目を通す。

「予定通りだな。それにしても無茶な注文しやがって」


 個体ナンバーi886R909号、愛称マチルダ。

彼女に親はいない。遺伝学上の両親はいるのだが

ランダムに選ばれた精子と卵子を人工子宮内で受精させ

成長させた新人類の一人である。

少子化が問題視された数百年前から開発が進められ、

今や人口調整のもっとも有効な手段として定着している。

 

 彼女は優秀だった。

飛び級を繰り返し大学院を卒業して

この船に派遣された時はまだ17才の娘だった。


 この船の任務はこの銀河のまだ知られていない

星系の調査が名目である。

利用可能な惑星が見つかれば星間連合に登録をして

所有権を主張できる。


 だが、何もメリットのない星を手に入れたところで負担が増えるだけだ。

当然なんらかのメリットを求めての調査が主な任務となる。

ハイパー光速航行エンジンの燃料を算出する星系を探すのが本船の任務だ。


 偶然見つけたアルファ星系。

銀河の星もまばらな辺境星系である。

白色矮星を中心に10以上の惑星が周回する中規模の星系だ。

ここの第三惑星で産出する『魔石』と呼ばれる物質。

特殊反応炉での実験は成功し我々が求める燃料の代替物として利用できる。


 星間連合に出回っている燃料は鉱物資源なので

精製にそれなりの手間と費用がかかる。

しかし魔石は精製の必要がない

純度の高い優秀な燃料であることがわかった。

これはもはや代替燃料の範疇を超えている新しい発見だった。


「船長、進捗はどうです?」

「予定通りだ。明後日には出るぞ。今のうちに命の洗濯でもしておけ」

「アイアイアサー!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「マリアン、母船はいつ頃帰ってくるのかしら?」

「そうですね、エンジンのメンテナンス状況で変わってくると思いますが

おおむね一ヶ月以内でしょうか」

「ボイパ船長がうまくやってくれるといいわね」


 私の予想を立証するためには新たな実験機器が必要だ。

それを本国から持ってきて貰う予定なのだが

国外への持ち出しは禁止されてる。


「ま、あの船長なら心配ないわね」

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