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1-36 王家の紋章とパーティの今後

1-32 スフィーアの生き残り その5 の最後のセリフ

「俺、勇者になって魔王を倒すんです!」

からの続きです。

「俺、勇者になって魔王を倒すんです!」

「「「・・・・・・・・・・・」」」

なに?この間(ま)。


 エドが若干困った顔で言う。

「エリック、お前の魔法レベルならあるいは、と思ったりもするのだが

そう簡単になれるものでもないだろう」

「いや、エド。可能性はあるぞい?ワシはほぼ毎朝勇者の剣を掴み行っておる。

アレは空(くう)の魔法を使えるのが最低条件じゃ」


 ギルドの掲示板で見かけた例の勇者の剣のことだな。

エクスカリバーみたいに岩に突き刺さっているのを

想像してたんだけどちょっと違う?


 老師に尋ねてみると教えてくれた。

どうやら大理石の台の上に剣が寝かされてるだけらしい。

しかし剣を掴もうとすると自動的に空(くう)が発生し、

掴もうとした手は『どこでもないどこか』をただよう事になるのだそうだ。


 老師は空(くう)を空(くう)で挟む事により

柄を触る所までは行ったそうである。

しかし持ち上げようとすると新たな空間が

発生してしまうので持ち上げられないそうだ。


「あと一つ、なにかの要素が必要なんじゃが、それがわからん」

なるほど、一筋縄ではいかないってワケか。

「うむ、今夜はもう遅いし明日にでも一度一緒に見にいこうかの」


 老師はシェリーに向き直りいくつか質問をした。

「姫様、紋章はお持ちか?」

「あるわ」


 紋章。

たしか魔道具屋で見かけたバッグに入っていた奴だよな。

「バッグに書き込まれてた紋章ですか?」

「そうじゃ。ワシの作品にはスフィーアの紋章を入れてある。

誰かが気がつくかも知れんしの。

その話はともかく、姫が姫である証明が出来なければ

ルド王国の王族と会う機会があっても信用されん」


 シェリー達の当初の目標はルド王国の助力を仰ぐ事だった。

しかし北の大陸ではスフィーアなる国が

南の大陸の先端にあることなど誰も知らない事実に愕然とした。

実際に王城の門まで行って紋章を見せたのだが

衛兵の誰一人その紋章を見たことがない上に

スフィーアの名前さえも知らなかったため、門前払いされてしまったのだ。

 

 そこで目標を切り替え冒険者として生計を立てながら

情報を集めていく事にしたのだそうだ。


「老師、我々、特にカミーラが探った話などもお聞かせしたい。

老師が知っていることも知りたいのです」

「そうじゃな。いろいろとやらねばならぬ事がある。が、今日はもう遅い。

次回はカミーラを交えてまた話をしよう」


 俺たちはまた明日来ることを約束して居酒屋を出た。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 次の日、朝食後のミーテイングでエドが一部始終を話した。

ウィリーが渋い顔してる。


「そうなるとこのパーティは解散か?俺としては居心地が良いので

そうなって欲しくはないんだが。どう思うギルバート」

「シェリーが亡国の姫君様だという話は信じるよ。

そりゃ親の仇を取りたいだろうし国も再興したいだろう。

俺たちの都合を押しつけるのも無理があるだろう」

「そりゃそうなんだが」


 ギルバートが話を続ける。

「俺としてはエド達に協力する方向で話を進めてもいい。

ひさびさに実家に連絡取ってみようかと思う」

「おい、ギルバート。その話は内緒じゃなかったかのか?」

「ああ、ウィリー。こんな壮大な話を聞かされたら俺の身の上話なんて

ちっぽけなもんさ」


 ギルバートが身の上を語り出した。

「俺は家を出奔してきたんだ。

実家は騎士爵を賜る家系で俺は長男だ。

まあ理由なんて若気の至りでね。

自分の実力がどこまで通用するのか試して見たかっただけさ。

それに俺が居なくても妹が剣の才に恵まれていてね。

俺がどこかでのたれ死んでも家の存続は問題ないのさ」


 どことなく品がある人だし剣の筋も今思えば貴族っぽい感じ?

まあ何となくだけど。


「妹が士官学校に通ってるはずだ。

同期にアレックス王子がいるらしいから

そっちのルートで王族に会えるかもしれんぞ」


 エドが答える。

「そうか、今は藁にもすがりたい状況だ。可能性があるなら頼みたい。

ちなみに姓はなんというんだ?」

「ギルバート・エステス。妹はタチアナという」 


 アケミがおずおずと手を挙げた

「あのー。私も発言していい?」

エドがうなずく。

「私としてはパーティ解散して欲しくない。

まだ入れて貰ったばかりというのもあるけどエド達だって

今後も活動資金は必要でしょ?

この家だって毎月家賃は払わなきゃ、だし」


「確かにそうだ。今のところ貯金はあるが

カネは使えばなくなるなるからな。

パーティはこのままで今まで通り依頼を受けよう。

だがリーダーである俺やシェリー・・・

姫様は依頼をこなしきれなくなる」


 ウィリーが言う。

「そう言うときは残りの面子で依頼こなせばいいだろう。

俺は自分の取り分さえ確保できればそれでいいぜ。

ま、エドの小遣いは減るだろうがな」


「ははは、まあ俺の小遣いはどうでもいいさ。

よし、今日は俺、姫様、エリックの三人は老師に会いに行く。

日曜日だし午後にはカミーラも合流できるだろう。

ギルバートはすまんが実家に連絡を取ってくれるか?

これは俺からの個人的な依頼なので別口で報酬を出す。

アケミとウィリーは依頼をこなしてくれるだろうか」


 アケミととウィリーが同時にグッと親指を突き立てる。

「お、息ぴったりじゃん。なにかあったん?」

俺がからかうように言うとアケミとウィリーが説明してくれた。


「夕べの晩ご飯の話よ。私が肉ならなんでもいいって言ったら

カエルの肉を食べに連れてってくれたの」

「ああ、普通女の子ならカエルや蛇やトカゲの類は嫌がるだろうと思って

からかい半分に連れて行ったんだが。案外お気に召したようで」

「そういうことね」


 アケミは案外凄い奴なのかもしれない。

もしかしたらカエルの肉だって嫌々食べたかもしれない。

彼女なりに必死にこの世界に馴染もうとしてるし

実際に馴染んでるように見える。

訳もわからず異世界に放り込まれて不安がないわけないもんな。


「アケミ、お前すげぇな」

「ん? カエルおいしかったわよ」


 ・・・・・・俺もそのうち食いに行こう。

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