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1-32 スフィーアの生き残り その5 再会、姫と老師

一番最初の「1-1王子アレックス」の項に地図を添付しました。

 俺たちが任された二級街道は南の街に通じる一級街道の枝道だった。

王都の南にはサザーネという都市があり、

そのさらに南はサフラス王国との国境になる。

今回はサザーネまでは行かない。

日帰りで帰ってこれるあたりを掃除することになった。


 スライムやグリーン・キャタピラの類ならアケミが素手で倒せる。

「飛んでくる酸やキャタピラが吐く糸に注意すれば問題ないよ」

最初はおっかなびっくりだったアケミだが、

スライムが飛ばす酸を軽々とかわすと余裕が出てきたみたいだ。


「お、アケミ。いいものが落ちてたぞ」

「なになに?木の棒?」

「ああ、太さと言い長さといいこれは良い感じの棒だな。俺が欲しいくらいだ」

「確かに素手だとスライムの体液でべちゃべちゃになるのよ。貰いまーす」

鬼に金棒、アケミに木の棒。


 木の棒をいい加減に振り回してスライムをやっつける

アケミを見てギルバートがつぶやいた。


「見てられないほど汚い太刀筋だな。後で教えてやろう」

「先生、スパルタでお願いします」

「うむ。だが身体能力はアケミの方が高いし

エリックなんかあっという間に追い越されるだろうな」

「スパルタ通り越して殺す覚悟で稽古つけてやってください」


 エドが指示を出した。

「エリックとアケミはこの辺でスライムを倒しておいてくれ」

俺たちは街道の奥まで行ってくる」

「「了解」」

 

 アケミがなにか叫んでる。

「見て見てー、石ぶつけるだけでも倒せるよー!」

見てみると見事なオーバースローでスライムに石をぶつけている。

「え、今のスライダー?」

「さすがエリック、よくわかったわね」


 思いついた俺は手頃な石を拾い上げアケミに言った。

「さっきの木の棒を持って構えろ。トスするぞ」


ひょいと投げた小石をアケミがバッティング。

カツーンといい音させて小石は綺麗な放物線を描き森の中に消えていった。

なんだその鋭いスィングは。


「お前野球やってたの?」

「遊びでね。お父さんが野球少年だったらしくて

子供の頃からキャッチボールやってたし

バッティングセンターにも連れて行って貰ってたわ」


 エド達が街道の奥から戻ってきた。

「おまえらなに遊んでんだ」

「遊んでないし。仕事だし」

回収した魔石を見せる。

エド達も小物を相当討伐したらしく

今日はこれくらいで帰ろうということになった。


 ギルドに帰り報告を済ませる。

回収した魔石はそのまま買い取って貰った。

「今から夕飯作るのも大変だから今日はメシ屋で食おう。

俺とエリックとシェリーは人に会いに行く。

ウィリーとギルバートとアケミでメシ食いに行ってくれ」


 ウィリーが返事をする。

「おう、さてなに食うかな。アケミはなにがいい?」

「肉!」

「肉は昨日も食ったろ」

「ウサギとイノシシ以外の肉!」

「うーん、なにがいいかな・・・・・うん、よし!」

ウィリーが突然ニヤニヤし出す。

これは悪い事考えてる大人の顔ですな。


「じゃ後を頼む」

エドと俺とシェリーは連れだって歩き始めた。

アケミ、後で何食わせられたか教えろよ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 教えて貰った長屋の場所を探す。

「えっと、確か王城の門前広場からコッチの通りに入って・・・」

しばらく歩くと長屋がたくさん見えてきた。


「たぶんここだ」

俺はドアをノックした。

「こんばんは、ロウさん。エリックです!」

「ほほーい」


 奥からのんびりした返事が聞こえる。

「メシ時に来るとは無粋なや・・・・・つ・・・・」

ん?ロウさん固まった。どうしたんだ。

フリーズ状態から解放されたロウさんは

真剣な顔つきで声を低くして言った。

「全員中に入りなさい」


 狭い部屋だった。

椅子の数が足りないので俺は立っていた。

誰も何もしゃべらない。

なんだこの気まずい空気。


「あのー、俺お邪魔みたいだから席外すね。メシ食いに行っていいかな?」

「お若いの、エリックと言ったか。ナイス提案じゃ。

ワシもハラ減ってるからなんか食いに行こうかいの。エド、姫様」

姫様?唯一の女性だからおおげさな表現してるんだろうな。


 全員で外に出る。

ロウさんが良いお店を知っているそうなのでついて行くことにした。


 連れて行かれた場所は大衆居酒屋。にぎわっていた。

カウンターの奥に居るマスターとロウさんが何かしゃべっている。

こっちを向いて手招きしてるな。


 カウンターの横を通り抜け奥の個室に通される。

「マスター、お任せで頼む。お若いの、なんでもいいじゃろ?」

「はい、何でも食えるっす」

「大変よろしい。そして今からワシらがする話は他言無用じゃ」

「はい?師匠がそう言うならもちろん従います」

「師匠ときたか。まあええわい。では」


 ロウさんはシェリーに向かって片膝をつき

右手を左の肩に当て頭を垂れた。

「お久しゅう御座います、姫様。

本来なら私めが訪ねて行かねばならぬところ。

どうかご無礼を許してくだされ」


 シェリーは黙って右手の甲をロウさんに差し出す。

ロウさんは躊躇せずに手の甲にキスをした。


 これ、貴族の作法だよな。

実際に見たことはないが、多分そうだ。


 エドが口を開いた。

「エリック、やっぱりその・・・席を外してくれるか?」

「う、うん。なんか俺場違いだよね。カウンターでメシ食ってくるよ!」

「待て、若いの。お前は貴重なくう使いじゃ。

今からワシの弟子にしてやる。

師匠の言うことは聞くもんだぞ。ここに居なさい」

「しかし老師・・・」

「エド。おぬしもご苦労じゃった。

よくぞ姫様を守り抜いた。ワシからも礼を言う」


 居酒屋のマスターがワゴンをかちゃかちゃ言わせながら

料理を運んできた。

「まずはハラを満たしてからにするかのう。

エリック、全員分取り分けなさい」

「はい!師匠!」

「ノリが良いの。感心感心」

 ロウさんが俺をからかいながら皆で夕飯を食った。

エドとシェリーは黙ったままだった。


 俺は食べ終わった食器類をワゴンに乗せ厨房まで運んだ。

熱いお茶を人数分貰って部屋に引き返す。

全員にお茶を配り、俺も再び着席。

シェリーが先に口を開いた。

「老師、父の・・・・父の最後を話して」


~~~~~~~~~~~~


 長い話だった。

スフィーア最後の日を目の当たりにしてきた老師の話。

シェリーの父である国王の最後。

そしてエドとシェリーとカミーラの逃亡の旅。

あまりにも壮絶なその話に俺は口を挟む事など出来なかった。


 ロウさんが俺に向き直り話しはじめた。

「エリック、お前を同席させたのはこういった経緯があってのことじゃ。

単刀直入に言う。いや、お願いをする。

どうかワシらの手助けをして欲しい。

国を取り戻したいのじゃ」


「ロウさん、頭をあげてください。俺・・・」

「お前がくうを使うところを偶然見てしまった。

戦力として確保しとくのも悪くないと思い話しかけたんじゃ。

すべてはワシの下心であったと白状する」


「そう言うことなら俺の当初の目的とほぼ一致するので問題ないですよ」

「ほう?当初の目的とはなんじゃ?」


「俺、勇者になって魔王を倒すんです!」 

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