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1-30 スフィーアの生き残り その3 ウィリーとギルバートと猪

ウィリーとギルバートの魔物討伐!コッチの方が話し長くなっちゃった。

「弟 子 に し て く だ さ い !」

「いやじゃ」

「はいぃぃぃ?そこは『修行は厳しいぞ』とか言う場面でしょう!」

「やっぱしアホの子か。なにを言ってるのかさっぱりわからん」


 俺は立ち上がり膝に付いた草を払った。

「一人でテンション上がっちゃいました。すんません。

でも俺、くうの魔法を覚えたてで、まだ使いこなせてないんです。

俺の魔法の先生は聞きかじり程度の知識しかなくて」


 老人は髭をなでるようにあごを触っている。

髭なんてないのに。


「ふうむ。教えてやっても良いがワシはもう弟子はとらんのじゃ」

「もう?かつては取ってたんですね」

「昔の話じゃ。今は隠居の老いぼれじゃて」


「わかりました。月謝払います。時々で良いので教えてください!」

「それなら考えないこともないの。あんた名はなんと申す?」

「はっ!失礼しました。エリックといいます」

「わしの事はロウじいさんとでも呼んでくれ」

「わかりましたロウさん」


 ロウさんは長屋の住人に肉をふるまうため狩りにきたそうだ。

そこで俺の奮闘を見かけて、からかいに来たんだと。

長屋の場所を教えて貰い、気が向いたら尋ねて来いと言われた。

在宅してたら教えてやるよ、と言い、

ウサギを持ったまま消えてしまった。


 依頼の方はアケミが一人で25羽。

俺は何とか5羽捕まえて夕方になった。

依頼主は大喜びだった。

ウサギが増えたら依頼するからまた来てくれ

と言い依頼書にサインしてくれた。


 牧場で働いてる人たちが総出でウサギを捌いてくれた。

お礼に肉をみんなで分ける。

大量の皮と残った肉は貸してくれた背負子に強引にくくりつける。

アケミが軽々と背負い、満面の笑みで言った。

「早く帰って食べよう!おなかすいちゃった!」


 おなかすいたコールを連発しているアケミと

ギルドに依頼完了の報告に来た。

サインの入った依頼書を提出、報奨金を貰う。


「銀貨4枚って高いの?安いの?」

「相場の金額だと思うよ。魔物じゃない普通のウサギだからね」

「ふーん。金貨100枚って遠いなぁ」

「ウサギの皮を売ったオカネは自分の取り分にしていいよ。

肉も食いきれない分は肉屋に売るといい」

「わかった!ありがと!」


 帰る道すがらふと思った。

「あれ?エド達が探してる人って、ひょっとして・・・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~


「なあ、ギルバート」

「・・・・・・・・」

「寝んなよ」

「寝てねーよ」


 エリックはアケミとウサギ狩りか、楽しそうだな。

俺はギルバートと組んでブラウン・ボアの親子連れの駆除に来ている。

俺たちが待機してる東の一級街道から入った二級街道に人通りはない。

ここは迂回路があるので、魔物が出た現在は封鎖されている。

昼からここで待機してるのだがボアが出てくる気配すらない。


 ギルバートが面倒臭そうに会話を振ってきた。

「なあ、ウィリー。ボアって基本的には夜行性だよな?」

「ああ、そう聞いてる。

だがウリ坊連れてるおかーちゃんは

大量に餌が必要なんで昼間も行動してるんだそうだ」


 今回の依頼は複数のパーティが参加する合同依頼だ。

俺たちが受け持つ街道の端はわりと開けていて日当たりも良い。

ギルバートがついウトウトしてしまうのも仕方がないな。

「だから、寝てねーって。ん?なんだ今の音」


 森の奥で木が揺れている。

誰かが蹴り飛ばしたみたいだ。

見ると揺れた木の上から黒い甲虫が

バラバラと落ちてくるのが見えた。


「おー、誰だか知らんが頭良いな。

俺たちもクワガタ売った方がカネになるんじゃないか?

おいギルバート、行ってみようぜ」


 藪を分け森に入る。

少し開けた所に出ると毛むくじゃらの何かが木を蹴っていた。

小声でギルバートが確認してくる。


「なあ、ブラウン・ボアって中型の魔物だよな?」

「イエス」

「野生のイノシシより一回りでかいんだよな?」

「イエス」

「イノシシって四足歩行生物だよな?」

「イエス」

「目の前のアレはなんだ」


 イノシシが人間みたいに後ろ足で立って木に蹴りを入れている。

「どう見ても二足歩行生物なんだが」

「ノー。緊急時には後ろ足で立つこともあると言った程度・・・と聞いてる」


 俺も自信がなくなってきた。

それほどまでに何の違和感もなく二本足で立ってやがる。


 ウリ坊の一匹がこちらを向いていなないた。

「プギーッ!」


「ヤバイ、感づかれた!街道に戻るぞ!」

藪を駆け抜け街道の開けた場所に出る。

親ボアが物凄い勢いで追いかけてきた。

「うおお!二本足で走ってくるぞ!気持ちわりぃ!」


 突進してくるボアを左右に散ってかわす。

目標を失ったボアは土埃を上げて緊急停止。

今度は四つ足でこちらに向き直る。


「そうそう、お前はその方が自然だ。コッチも落ち着く」

「ふう、この状態なら普通に剣で渡り合えるな」

見るとボアが鼻先を痙攣させてる。

「おいギルバート!油断するな、バレットを吐くつもりだぞ!」

「え?え?」


「プギッ・・・プギッ・・・ぶえぇっくし!」

ボアの口から大量の小石が射出された。

大きさも勢いも人を殺せる程ではないが、当たると痛い。

「あいててて!先に教えておけよ!」

「すまん、魔法を使える個体は滅多にいないんで忘れてた!」


 二人で逃げ回りながら一太刀、また一太刀とボアに剣を当てていく。

だが致命傷には至らない。

自分の血の臭いでさらに興奮しているようだ。

「他のパーティはなにやってるんだ!助けに来いよ!」


 見ると街道の奥から仲間が走ってこちらにやってくるのが見えた。

「遅いよ!って・・んー、様子が変だな」

見ると数人の冒険者が目を見開いた

物凄い形相でこちらに全速力で走って来る。

その後ろを追いかけているのは・・・


「ボアに追われる!って、増えてるじゃねーか!

ドンだけボアだらけなんだよこの森!」


~30分後~


 何とか二匹のボアとうり坊をやっつけた俺たちは

街道の真ん中で荒い息をして座り込んでいた。


「ぜ、ぜいぜい。想定外の事が多かったがなんとかやったな」

用意してあった荷車にボアをくくりつけ皆で引っ張る。

ギルドまで帰るのも一苦労だ。


「なんか割に合わない依頼のような気もするな。はぁ・・・・」


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