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1-27 アレックスと王家の人々 その3 マチルダの味方探し

 マリアンは王城内に留まらず市内にもサーチに出掛けた。

王城内の使用人が入れない区画は私が担当する。

眼鏡をかけるのは不自然だったのでブローチにカメラと一緒に仕込んだ。

インセクトアイに使われるナノレンズを通して記録できる。

影響下にない人間の前に立つと指輪が

二回軽くバイブレーションを起こし知らせてくれる。


 影響下にない人間は軍関係に多いことが解った。

そのうちの一人、クルトフの貴族であるモルガノ・ド・ブラン将軍。

彼をお茶に誘った。


「王妃様、私だけを呼んでのお茶会、イロイロと邪推してしまいますが」

「あら、イロっぽい話だと思ったの?将軍」

「荒事には強い軍人の家系です。が、こういった場は正直言うと苦手でして」

苦手という割りには優雅にティーカップを口に運んでいた。


「お察しのとおり内緒話よ。他言無用に願うわね」

「心得ました」


 私は将軍の目をじっと見つめ質問した。

「クレイグは誰なの?」

将軍の顔から笑みが消えた。

ドアをそして窓を見やる。


「安心して。この部屋の会話は一切外には漏れない。

それにこの話は私が幽閉されたきっかけにもなったわけだし

こちらも危ない橋を渡っている自覚はあるわ。

あなたが思った通りでいいのよ。

聞かせて頂戴」


将軍はティーカップをテーブルに置き姿勢を正した。

「グレイグ殿下・・・彼が第一王子として

城内を闊歩し始めた時はなんの冗談かと思いました。

しかし周りの人間は王やアレックス殿下も含め

誰も何も感じなかったように見えました。


生まれたときから彼がここに居るかのように接しているのです。

そうこうしているウチに王妃様が幽閉されました。

この時点で彼が王国に上手く入り込んだ『なにか』

であると感づいているのは私と王妃様だけであると思ったのです」


 私は視界の片隅に展開してるプライベートスクリーンに

嘘発見器を立ち上げておいた。

目の端で確認したが、嘘はついていない。


「王妃様が幽閉されている間はこちらからコンタクトは取れませんでした。

幽閉が解かれた後は、クレイグでん・・・その・・・」

「『彼』でいいわよ」

「はい。王妃様は彼を息子であるとお認めになられたので

こちらからコンタクトを取る事は控えていたのであります」


「なるほど。わかったわ。現時点での味方はあなただけなの。

今後は協力して欲しいのよ」

「もちろんで御座います」


 私は影響下にない人間のリストを将軍に見せた。

「なにか共通する点はあるかしら」


 将軍はリストを眺め思いついたことを口にする。

「軍人が多いですな。それも数世代にわたって軍人の家系に居る者たちです。

そうでないものは文官ですね」

「古い家系の軍人に多いのね」

「はい。もしかすると、ですが」

将軍は首から軍人がかけている認識証を外した。

細いチェーンには名前や階級等が刻まれている

金属製のプレートがついている。

そのプレートと共に一枚のメダルがついていた。


「このメダルはなに?」

「はい。我が家の先祖が過去の戦争で武功を立てた時に

頂いた勲章のオマケみたいなものでして」

「オマケ?そんなものあるの?」

「ええ、家族の人数分この小さなメダルが記念品として配られるんです。

我々はこのメダルを受け継ぎ、こうしてお守り代わりに身につけているのです」

「ちょっと見せて貰っていいかしら?」


 私はその小さなメダルを手に取ってみた。

金でも銀でもない光り輝く美しい金属だ。

「これはミスリル合金です。

純ミスリルに貴重な魔物の魔石を砕いた粉が混ぜ込まれていると聞いております」

「貴重な魔物って?」

「龍です。龍の魔石と聞いております」


 現代に龍などいない。

先史時代に絶滅したと言われている。


「ともかくこのメダルを身につけている者達が影響下にない可能性が高いのね」

「はい、あくまで推測ですが」

「将軍、このリストは今ここで暗記して。

それぞれがメダルを身につけて居るかどうか確認してくれるかしら?

ところで、メダルを持っていない私が影響下に置かれなかったのはなぜかしらね」


「おそらく、ですが。ミスリル製の製品または

それに準ずるなにかを身につけているのでは、と」

「装飾品の類かしら。

それなら思い当たる節がありすぎて調べるのに手間取るわね。

ありがとう、それはコッチで調べてみるわ」


 装飾品だけではない。

この星に持ち込んだ様々な機器に使われてる部品まで調べねばならないだろう。


~~~~~~~~~~~~~~~~ 


「アレックス殿下、あまり無理なさらないようにしてください」

軍の訓練を見学中についウトウトしてしまった。

それに気がついたダニーが気を遣ってくれている。

「すまんな、多少疲れがたまっているのかもしれん」


 次回の安全保障会議に提出する議題の作成は

将軍や軍部部の連中が担当している。

自分はそれに目を通しチェックしなければならない。


 国際会議の資料を全く目を通さずにサインすることはできないのだ。

そういった書類仕事がたまっていたのに加え、

学業や勇者捜し、討伐軍編成の草案制作会議などが立て込み

ここのところゆっくり休息を取れていなかった。


「今のところ可及的速やかにこなす案件はないんだ。

今夜はゆっくり休むよ」

「ええ、そうした方が良いと思います」 


 いつもより早めに夕食を取り部屋に帰ろうとしたその時、

母とブラン将軍が連れ立って歩いているのを見た。

母が軍人と会うなんて珍しいな。


「母上、将軍。こんばんわ」

「これはアレックス殿下。ご機嫌麗しゅう」

「将軍、やめてくださいよ、私はあなたの生徒ですよ?」

将軍は座学の一講座を受け持っている。

「時と場所によりけりです」

 

「アレックス。最近私の所には全然来てくれないのね。さみしいわ」

「すいません母上、学業と仕事が立て込んでおりまして」

「そういえば疲れたような顔してるわね。

マリアン、ハチミツたっぷりのお湯割りにブランデーを入れて持って行ってあげて頂戴」

「ありがとう御座います、では部屋に帰ります」


 結局母と将軍がなぜ一緒にいたかは聞けなかった。

まあ偶然と言うこともあるし、気にしなくて良いだろう。


誰かがドアをノックした。

「失礼します」

「開いてるよ」

マリアンがワゴンを押して入ってきた。

目の前でハチミツ入りブランデーのお湯割りを作ってくれる。

「マリアン、眼鏡なんかしてたっけ?」

「ええ、普段はしてないのですがたまに」

「ふーん。目が悪いワケでもないだろうに。

あれ?度が入ってないの?」

「よくおわかりになりましたね。

最近この丸眼鏡が女の子の間で流行ってると聞きましてマネしてみました」

「ああ、そういうことね。似合ってるよ」

「お上手ですこと」


 暖かい飲み物を飲むと眠気が襲ってきた。

今夜はこのまま寝てしまおう。

 

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