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1-24 聖女教会へ行く その2 特別奉仕活動

 教会での生活は結構忙しかった。

起床して自分の部屋の掃除。当番の時は大食堂の掃除と配膳。

成人してる者は奉仕活動や司祭様が執り行う冠婚葬祭等の行事のお手伝い。

まだ就学年齢の私は午前中は座学の時間となる。


 学校で習う基本的な読み書き計算は一緒。

そこに宗教学が加わる。

教典の理解やイリシス教の歴史が主だ。


 昼食をとりちょっと休んでから奉仕活動の手伝いに入る。

まだ私は見習い扱いなので普段はそれほど重要な仕事は任されない。

そう、『普段』は。


 シスター・サーラの説明では私は単なるシスター見習いではなく

聖女見習いという特別枠に入るそうだ。

だが一般的なシスター見習いと扱いに差はほとんどない。

あるとするならば特別な奉仕活動が入る時だけだ。


 教会に来てから数日たった頃司祭室に呼ばれた。

司祭様と普段は王都の本部に居る司教様、おつきの助祭の方々が数名。

それに私とシスター・サーラ。

司祭様はこのウーファの教会を預かる一番偉い人。

司教様は各都市の教会を複数管理する立場の人。

スーパーバイザーみたいな立場なのかな。


 司教様がニコニコ笑いながら話かけてきた。

「あなたがセシリア・フィロワさんですね?

私は司教職を預かっているアルル・F・ミュラーです。

話はシスター・サーラから伺っております。

港での話が本当だとするならばあなたが当代の聖女である可能性が高いですね」


 あの時は必死だったので自分が出来ることを全力でやった。

自分の能力が後に、そしてどの方面に影響を及ぼすかなんて考えてもいなかった。

今のこの状況を見ると結構大変なことをしでかしたのかもしれない。


 司教様が話を続ける。

「あなたの治癒能力、癒し系の魔法ですが今ここで

見せて貰えるような類の魔法ではありません。

わざわざ怪我人を作る事なんて出来ませんから。

そこで、緊急事態の際にはすべてのスケジュールを

キャンセルして活動して貰います。

その時あなたの能力を見せて貰いますね。

そしてこの活動のことは誰にも言わないように。

いいですね」


「は、はい。わかりました」

秘密にしなければならない理由があるのだろう。

ここは素直に返事しておく。


~~~~~~~~~~~~~~~~ 

   

 次の日はいつも通り午前中は授業を受けて午後は奉仕活動。

正式なシスターさん達について懺悔室での悩み相談を聞いた。


 私がついたシスターさんが受け持った方は妙齢の女性。

相談内容は旦那の浮気。

まあ相談というか単なる愚痴聞きだったりする。


 シスターさんは手慣れたもので、

「ええ、なるほど、そうですか」

の三つの返事しかしてない。


 棒読みではなく抑揚を巧みに変えるのがコツだそうだ。

なんだか笑いそうになってしまったが必死にこらえる。


最終的には相談者の女性は、自分が頑張って旦那を振り向かせる!

とかなんとか言って自己解決。

シスターさんはニコニコ笑ったまま、

「頑張ってくださいな」

と一言言って任務完了。


 部屋に帰ってから今日のレポートを書いているとシスター・サーラが

呼びに来た。

「ついてきてちょうだい」

「・・・はい」


 正門ではなく普段はあまり使われていない西門から教会の外に出る。

そこには馬車が用意してあった。

シスター・サーラはここでお見送り。


馬車の中には見たことはあるけど名前が解らない

シスターが一人と助祭の男性が一人乗っていた。

「こんばんは。セシリアさんでしたっけ?私はアリア・スコットよ」

「こんばんは。よ、よろしくお願いします」

「セシリアさんは特別奉仕は初めてよね?」

「はい、そうです。あの・・・何も聞かされてないんですけど

こういうものなんですか?」

「そうね、あまり公にはしたくない事情がある場合は

私達は何も聞かされないなわね。

でもまあやることは一緒よ。

治癒すればいいの。

無理な時は無理って言えばいいし、慣れると気楽なもんよ」

「そ、そうですか」


 馬車が止まった。

目的地に着いたようだ。

大きなお屋敷の裏口から入る。

ここって確か貴族のおうちだったような。


「セシリアさん、あまりキョロキョロしないで。

詮索してると思われるとやっかいよ」

「あ、すいません・・・・」


 通された部屋のベッドにはこの家のご子息が寝ていた。

体中包帯だらけ。見えてる皮膚の面積が少ない。

あちこち血がにじんでいた。

顔も斜めに包帯がしてあり片目をふさいでいる。

が、幸い欠損してる部位はなかった。


医者が包帯をとる。

刺し傷、切り傷の類がほとんどで、腕の肉が少しえぐれていた。

アリアさんが患者に手をかざす。

主に顔の傷を治してるみたいだ。腫れ上がったまぶたが元に戻ってきた。


「ふう・・・今日はここまでですね」

アリアさんが治癒を途中でやめてしまった。

いや、魔力切れ?

私も気絶したわけだし、たぶんそういうことなんだろう。


私はおずおずと提案してみた。

「あのう、続き私がやりましょうか?」

アリアさんが助祭の人と目を合わせる。


助祭さんがこくんとうなずいた。

「いいわ。それじゃあセシリアさん続きをお願い」

立ち位置をアリアさんと替わる。


 今回は気絶しない程度に魔力量を調節しながらやってみよう。

手をかざし治癒を始める。

顔の辺りから初めて全身の傷をくまなく治療。

骨が折れてるワケでもないし前回より楽だった。

「終わりました」


患者は寝息を立て眠っている。大丈夫そうだ。

私達は促されて部屋をでる。

来たときとは逆の順序で教会へと帰ってきた。


 馬車から降りるとき助祭さんが、くれぐれも内密に、

と念を押してきた。


 私達が治癒した人は誰だったのか、どんな状況で怪我をしたのか

などは結局解らずじまい。


 教えてくれても良さそうなもんだけど。

なんだか道具として利用されてるような不愉快な気分が多少はある。

釈然としないまま部屋に帰る私であった。

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