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1-22 勇者、王都へ行く その4 アケミの能力

オリビアから王都までの道のりは特になにもなく無事到着した。

依頼主から任務完了のサインを貰い冒険者ギルドに行き報酬を受け取る。

ついでにブラック・サーベル・キャットの魔石を買い取って貰ったが金貨30枚もくれた。


 これはパーティメンバーで分ける。

俺は金貨5枚を貰い残りはエドに預けた。

アケミを身請けして俺の財布はすっからかんだったのでこの臨時収入はありがたい。


 冒険者ギルドを出て俺たちは話をしながら歩いた。

アケミはこの世界では異物だ。本来ここにいてはいけない。

日本に帰る手段があるなら帰してやりたい。


 本人も帰りたいと言っていたが、現状なにをどうすればいいか全く解らない。

その間ここで生きていくためにはなにか仕事をしなければならないのだ。


「ねえシェリー、魔法つかえるのよね?いいなあ。私も使えるかな」

シェリーはアケミの手を取り何かを確認するように目を閉じる。

目を開けてから首を横に振った。

「残念、あなたからは魔力を感じない」

「そっか。まあ当然よね。なにかアタシに出来ることないかなー」

アケミも自分なりに出来ることを模索してるみたいだな。


 歩いている途中で武具屋を発見。冷やかしに立ち寄ってみる。

「いらっさい、お客さん。見テクと良い、アルよ」

ずいぶんおかしなしゃべり方だ。


 店主は肩幅が広く背の低いがっちりしたおっさんだった。

どうやらドワーフという種族らしい。主に南の大陸に住んでるらしいが、

こうやって北の国で商売をやる人もいるらしい。


「えー、すごーい!武器がいっぱいあるね。こんな店初めて見たー!」

アケミが珍しがって興奮してる。

店主が目を丸くしてアケミに話しかけた。

謎言語だ。

アケミは何も感じないのか店主と謎言語で普通に話をしてる。


 エドが俺の脇をつっつく。

「おい、お前の女、ドワーフ語がしゃべれるのか?

ちょうど良いからこの剣の説明を通訳してくれるよう頼んでくれるか?」

おれはアケミと店主に事情を話しエドに説明してくれるよう頼んだ。


 これはアケミの固有スキルじゃないのか?

本人はどんな言語でも日本語に聞こえるらしいし、本人も日本語しかしゃべれない。

どんな理屈かは解らないがこれは一つの利点だな。


 エドが試し切りをしたいと言うと店主が裏庭に連れて行ってくれた。

裏庭には矢の的や棒に麦わらを巻き付けた試し切り用のカカシ?みたいな物が置いてある。


 エドが剣を振る。

麦わらがすぱっと切れた。

「わ!すごーい!」

アケミが手を叩いて誉める。


「俺も試してみようかな」

「じゃ、俺も」

おい、ウィリーにギルバート。

まさか女の子の前でカッコつけたいだけなんじゃ?


「じゃあ、わたしもなんかやる!ねぇねぇ店主さん、弓貸して!」  

「アケミは弓使えるのか?」

「まさか。縁日の射的をやったくらいよ。アレ楽しかったし、景品も貰えたし!」

やれやれ、店主さん。

一番やーらかい奴貸してやってくれ。

って、おいおいそれ強弓の類じゃないの?

ああ、そうか。

冷やかし客を追い払うためのやつね。はいはい。


「あの的に当てればいいんでしょ?いっくよー、それっ!」

シュッと空気を切り裂く音。

一瞬後に的の中央から矢が生えていた。

「なん・・・・だと?」


 皆キョトンとした顔をしている。

アケミがちょっと困ったような顔で

「え、なに?」

と言っている。

こいつ自覚ないのか。


 ウィリーが説明する。

「その弓は弓兵の中でも特に腕っ節が強い奴が扱うシロモノだ。

か弱いお嬢ちゃんがおいそれ引けるもんじゃねぇはずだ。

ちょっと貸してくれ」


 ウィリーが弦を引っ張って確かめている。

「うん、俺でもちょっときついな。引けることは引けるが当てるのは難しい。

お嬢ちゃん何者だ?」


 アケミが本格的に困りだした。

「い、いやー、すごい軽かったよ?ほら」

手元に置いてあった試射用の矢を数本続けて的に当てた。

俺も含めて皆唖然としている。

「いったん宿に帰って話をしようか。店主、この剣いいな。いくらだ?」

エドは新しい剣を買い、皆で宿に戻った。


~~~~~~~~~~~~


 テーブルに全員分のお茶が行き渡ってからエドが話し始めた。

「アケミ、俺からの提案だ。あんたが取れる道はいくつかある。

まずひとつ。冒険者ギルドに登録して冒険者になる。

もう一つはさっきの店で通訳兼店員をやるか。

もっとも雇ってくれるかどうかは交渉せねばわからんが。

通訳能力ととその腕力があれば雇ってくれる店は探せばあると思うぞ」  


 俺はアケミに尋ねてみた。

「なあ、さっき弓を引いた時の力で俺と腕相撲やってみないか?」

「えー、いいけど」

テーブルを挟んで手をつかみ合う。

「じゃ、やるぞ。せーのっ!」

う、動かない。コッチは全力だぞ。

アケミがのんびりした声を出す。

「あのー、エリック?本気出してないでしょ。手加減してるの?」

「いいからそっちが本気出せよ」

「じゃ遠慮なく」

俺はあっけなく手の甲をテーブルにつけた。


 俺は負けたことを脇に置いて話を進めた。

「身体能力がずば抜けて高いっぽい。たぶん走れば金メダル級かもな。

自覚はあるのか?」

「あるわけないじゃない。今までそんな機会なかったし」

「だよね」


「ともかく私はエリックに買われた女だから

これからどうするかはエリックに逆らえないわ。

オカネ貯めて返すまでは」

「ふむ、そんなものか」

「そうよ。ケジメはつけないとね。あ、そうだ!

あたしがエリックのお嫁さんになったら返さなくてもいいのかな!」

「ば、ばか!俺はまだ未成年だから結婚できないぞ」

「そうだったわね。って、あんた未成年のくせに世界樹に来たの?」

「いまさらそれを言うか!」

困った。エドの顔を見る。

あ、視線そらしやがった。


「と、とにかく。冒険者登録はしておいたほうがいいと思う。

身分証明にもなるし」

エドが付け加える。

「そうだな。登録だけはしておこう。エリックのカネの問題もあるし

腕が立つようならこのまま俺たちのパーティに加わって貰う方向が一番良いかもな」

「じゃ、そーするー」

アケミは簡単に返事をした。


 明日はアケミの冒険者登録をして首都での活動拠点となる一軒家を探す。

あと俺は個人的にやることがあった。



 それは俺の当初の目的。

勇者になって魔王を倒す事なのだが、まずは勇者にならねば。

今日立ち寄ったギルドの掲示板の片隅にも求む勇者!の張り紙があった。

期限まであとわずかだ。

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