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1-20 勇者、王都へ行く その2 エリック、アケミと出会う

中級都市オリビアに到着。エドに誘われて夜の繁華街へ行くエリック。大人のお店で出会った女の子は・・・・・

 念のため森を抜けるまでの安全を確保してから本隊が出発することになった。

俺たちを含む護衛部隊は手分けして偵察し、安全を確認した。


 次の宿場は中級都市オリビアである。

森を抜けると広大な麦畑が広がっていた。

「うお、すげぇ広い!」

思わず声に出してしまった。


 ザクレムより南に位置するこの辺りは穀倉地帯として

近隣の大都市に麦を供給している。

俺が育った寒村では考えられないほどの雄大な景色に見とれてしまった。


 雇い主はこの街の貴族と交流するため明日一日は休日となった。

魔物の討伐報酬も結構貯まってるし、買い物にでも行こうかな?

などとのんきに考えてるとエドから呼び出された。

エドの部屋に入る。

「エリック、そこに座れ」

進められた椅子に座る。


「まず、人前で魔法を使うなと言っておいたがあの大猫はエリック無しでは

もっと手こずっていただろう。そこは礼を言う。だが・・・・」

「わかってる、エド。約束を破った事になるもんな。

そこは素直に謝る。ごめん」


「わかってりゃいい。実際助けられたのは事実だしな」

「うん」

「ところで話は変わるが、お前ここんとこシェリーと随分仲がいいな」

なにこのおじさん、いきなりニヤニヤしちゃってまぁ。


「魔力を渡してるだけで、それ以上の事はなにもないよ」

「わかってるさ。シェリーも立場をわきまえてるし。

それにお前なら間違いもないだろ」

「なにそれ、俺って安パイなの?」

「安パイ?なんだそりゃ?まあなんとなく意味はわかるが」

いかん、前世の癖が。この世界で麻雀用語は通じない。


「ま、まあ、とにかく。最近は一緒に寝るのも慣れちゃったけど」

「けど?ところでエリック、もうすぐ15才だよなあ?」

ニヤニヤ顔が気になる。

「・・・・・」

エドは立ち上がって俺の肩をバンバン叩いた。

「行くぞエリック」


~~~~~~~~~~~~


「おおおお!ザ・繁華街!」

テンションマックスの俺は思わず両握り拳を天に突き上げた。


「あんまりはしゃぐなよ。田舎者だとばれたらボラれるぞ」

「おっと、そうでした。ワタクシトシタコトガ」

ウィリーが怪訝な顔をする。

「エリック、お前時々おっさんみてぇな口調になるよな」


 シェリーは夕飯を食べたらさっさと寝てしまった。

ギルバートは知り合いの剣士の家に泊まるそうだ。


 そんなわけでエド、ウィリー、

俺の三人はオリビアの繁華街へとやってきたのだ。

この町もザクレム並に、いやそれ以上に綺麗に整備されている。


 前世では中世ヨーロッパの街は汚物まみれ、などという話を聞いていたのだが

ここでは上水道、下水道の設備が整っておりトイレも水洗だ。

魔石を利用した街灯が明るく夜の街を照らしている。

道路は広く平らに隙間なく石が敷き詰められているため歩きやすい。


 表通りは普通の商店街で八百屋、服屋、雑貨屋、金物屋にレストランetc・・

なんでもある。


 商店街が終わる辺りの角を曲がると狭い路地に入る。

路地の終わりには木戸があり、厳つい男が立っていた。

じろりと俺たちを一瞥すると木戸を開けてくれた。


「なにかトラブルを起こしたら即退去だ。

場合によっては生きて出られないこともあるが普通に遊ぶだけなら問題ないよ。

ようこそ!」

男の説明を聞き足を踏み入れたその通りは・・・・


 街灯がピンクだ。

客引きのオニーサンにオネーサン、皆威勢良く客引きしている。

エドとウィリーは慣れた感じで巧みに客引きをかわし通りを進んでいく。

たどり着いた店は『世界樹』というお店だった。


 なかに入ると丸いテーブルがいくつも並び客が大勢にぎわっていた。

開いてるテーブルを確保し座って待ってるとウェイターが注文を取りに来た。

エールを3つ注文すると女の子が三人それぞれエールを持って登場。


 見ると胸元が広く開いた薄いドレスを着ている。

かがんだら先端見えちゃうYO!

それに丈が短くアンヨ丸出し。

前世で最後にこんな店行ったのっていつだっけな?


「こんばんは!世界樹へようこそ!隣座っていい?」

返事する前に座ってるし。

まずは来た女の子とお話しして意気投合したらアレの交渉という流れらしい。

エドはグビリとエールを一口飲むとつぶやいた

「チェンジ!」


 この世界でもそういうシステムなのか。

まさか3回目にヤクザが出てきたでござる、とか?


「おう、まあそいう客は飲みに来ただけと見なされて女の子がこなくなるだけだ」

良かった。安心して俺もチェンジ!


 エドとウィリーは二杯目のエールを飲み干した後、

気に入った女の子と連れだって奥へ行ってしまった。

朝方宿に帰ってくればいいぞと言われたので朝までオタノシミナンデスネ。


 二回チェンジしたあとしばらく放置された。

しまった、飲みに来ただけと思われたか?

うーん、違う店行くか?


保護者なしで新規開拓するのは勇気がいるなあ、

などと思っていたら一人の女の子がおかわりのエールを持ってきた。

「座っていいですか?」

「ど、どうぞ・・・・」


 この世界、いやこの国は前世で言うところの金髪の白人種がほとんどである。

シェリーのように黒髪も居るが顔立ちは掘りの深い欧米顔。


今俺の隣に座った女の子は、黒髪であまり掘りの深くない扁平顔。

一重マブタの薄い目でついでに言うとオッパイちっさい。

アジア系?いやこれ日本人?


「・・・・」

「・・・・」

なんかしゃべれよ。気まずい。


「あ、あの・・世界樹へようこそ」

「お、おう」

「お、お客さんこういうお店初めて?」

「あのー、セリフが棒読みなんですけど」

女の子は真っ赤になってうつむいた。

「だって、私も客取るのはじめてなんだもん」


 あー、もう。ほとんど素人かよ。

二回目に来たグラマーなオネーサンにしとけば良かったか?

タユンタユン揺れてたもんね。


なかば後悔しつつもこの娘の素性に興味がわいてきた。

交渉成立したので連れ立って奥へ移動。

殺風景な廊下には似たようなドアが並んでいる。

使用中の部屋は番号札が取ってあるのですぐわかる。

開いてる部屋に二人で入った。


 女の子はベッドの前で立ち止まりしばらく固まったあと、

意を決したかのようにドレスを脱ごうとした。


「あー、ストップ。まあ夜は長いしちょっとお話しようか」

女の子はあからさまにほっとした顔をしてベッドに腰掛けた。


「名前聞いてもいい?俺はエリック」

「・・・・変な名前だけど笑わないでね。アケミです」


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