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1-16 スフィーア最後の日 その3 ヴァン国王の要請

「ここからの話は誰にも言わないで欲しい。信ずるに値する理由がある。

それは、老師ご本人が・・・・・・・・」

1-16 スフィーア最後の日 その3


 夜も明けきらぬうちから王都は騒がしくなった。

警備隊と魔法部隊が中央広場に集められた。


 ノースタウン市長の手紙から察するに、

襲ってきたのは魔人の部隊でほぼ間違いないだろう。

大陸の中央部の密林を切り開き国を作っているとの噂はあった。

偵察に行った者が帰ってきた例は少なく、

古くて不確実な情報しかなかったが間違いないだろう。


 スフィーア国王、ヴァン・デ・フィリアスは迎撃態勢を整える指示を出す。

「ノースタウンはもう駄目だろう。次の街クワイトはどうだ?」

警備大臣が答えた。

「まだ侵攻はされておりません。すでに王都から魔法部隊と兵士を送りました」

「うむ。そこで食い止められるか・・・・だな」

「食い止めるしかありません。しかし魔人が相手だとなんとも言えません。

魔法が使えない一般の兵は犠牲になるだけでしょう」

「わかった。魔法が使える者は一般国民からも徴用しろ。予備役は?」

「すでに集めてあります」

「よし、部隊を編成して速やかに出立だ」

「はっ!」


 ヴァン国王は執務室の壁に掛けられている美しい女性の肖像画を見やる。

逝去した王妃の絵だ。

しばらく絵を見つめ執務室を後にした。


~~~~~~~~~~~~


「腹が減ったのう」

ハリエク・ロウ老師はクワイトの街を歩きながら

開いてる店を探したがどこも閉まっていた。

「役場まで行くとするか」


 役場の入り口はすでにバリケードが作られ歩哨が立っていた。

そのうちの一人は老師の弟子だった。

「老師様!ご無事だったんですね!」

「うむ。ひどい目にあったわい。報告したいのだが通してくれるかな」

その兵士が案内役を買って出た。


「ひどい有様じゃった」

食事を終えた老師は町長と話を始めた。

「相手は魔人どもじゃ。

密林の奥深くからなぜこっちに侵攻してきたかは皆目見当もつかんが」


 町長が質問をする。

「その・・・勉強不足で申し訳ありません。魔人とは?」

「うむ。約1000年前に勇者が魔王軍を倒したじゃろ。

その時の生き残りがこの大陸の奥深くに逃げ延びたとの噂は聞いたことがないかね?」

「いえ、聞いた事がありません」

「そうか。まあとにかく連中は人口を増やし軍を仕立て上げたらしい」

「なるほど。理由はともかく襲われたのは事実です。なんとかしないと」


 町長室に伝令がやってきた。

「王都から増援部隊が到着しました!」

「老師、来ましたぞ!」

「カミーラは良い仕事をしたな。どれ、戦い方をレクチャーするかの」


 広場に集まったのは全員が魔法使いだった。

魔法の使えない一般兵は王都まで脱出する民間人の護衛にあたり一緒に王都まで行かせた。


 いたずらに死人を増やすこともないと思ったからだ。

国王も同じ考えだったのだろう、よこした増援部隊は全員が魔法使いだった。

数名老師の弟子もいる。


「相手は組織だって行動しておらん。三人一組で相手一人に対処してくれ。

一人はくうが使える者を入れよ。一人は防御に徹してくれ。

一人は攪乱と攻撃じゃな。その隙にくう使いが背後からとどめを刺すのじゃ」


 200名以上の魔法使い達。この国の精鋭達だが実戦経験はない。

それに魔人一人一人の高い能力も想像すら出来ないだろう。


 老師は撤退戦も視野に入れて指示を出した。

客観的に見てかなうはずがない。


 街のあちこちに部隊を展開させる。

ほぼ配置が終わった頃伝令が駆けて来た。

「来ました!街道の警備詰め所付近で戦闘が始まってます!」


~~~~~~~~~~~~


 目を覚ましたカミーラは部屋を出た。

廊下を歩いているところに通りかかった昨夜のメイドさんが食堂に連れて行ってくれた。

簡単な朝食を取り屋敷の外に出る。


 広場には大勢の人が集まっていた。

皆旅支度を調えている。すでに出立している集団もあるそうだ。

広場を眺めていてもしょうがない。老師の元に帰らねば。

そう思った時昨夜会った執事が声をかけてきた。

「カミーラさん、王が探しておりましたぞ。一緒に執務室に行きましょう」


 執事のあとをついて行き再び屋敷に戻る。

王は執務室で待っていた。

「お、王様。おはようございます。食事ありがとうぎざいました」

ぴょこんと頭を下げる。

「よいよい。楽にしなさい。さあ」

進められた椅子にカミーラは座った。


「住民は避難させている。北の山脈を越えると海に出る。

入り江がいくつかあり船があるのだ。君には姫の護衛を頼みたい」

「あの・・・老師様の元に帰らないと」

「手紙には君の事も書いてあったよ。

君を私の指揮下に入れて欲しいとの事だった。

指示に従って欲しい」

「・・・わかりました」

「カミーラ君は確か10才だったかな?」

「はい、そうです」

栗色の髪をツインテールにした、まだあどけない少女は答えた。


「姫は16才だ。多少だが魔法も使える。一緒に国外に逃げてくれ」

「あの、敵はそんなに強いんですか?」

「老師の手紙の内容を信じるならば、我が国に勝ち目はないのだ。

相手は魔人の軍だ。兵士一人一人が普通の人間の数十倍の戦力になる。

そして、過去の言い伝えも含めて考えれば奴らは人間にに容赦などしない。

我が国が全滅するまでやるだろう」

「そこまで・・・・本当でしょうか?」


 王は一口お茶を飲み、カミーラの顔を見て言った。

「ここからの話は誰にも言わないで欲しい。信ずるに値する理由がある。

それは、老師ご本人が魔人の国から亡命してきた魔人の一人なのだ」

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