アリアのその後
戦争が終わり私達はルドアニアに帰ってきた。
しばらくは皆忙しくて『勇者のパーティ合宿所』で顔を
会わせる機会がなかったのだが今夜は皆揃っている。
セシリアは出産を控えているので
教会に戻るそうだ。
ギルバートは退役し士官学校の教官になる。
ダレスはラーチャと結婚してスフィーアに帰る。
殿下が言う。
「私もいよいよ国王になる。
ここを引き払うよ。さみしいが仕方がない。
ところでアリア殿は今後どうされるのかな?」
「はい、殿下。一度故郷に帰ります。
それからのことは決めてません」
「どうだろう、もし良かったら賢者様の資格で
今後とも我が王国の発展の手助けをしてくれないだろうか」
「えっ!まじですか!再就職先決まったー!
と言いたいところですがホントに一度帰郷しないと
わからないんです。
帰ったらお婿さん探して村に拉致・・・・連れて帰る
高難易度のイベントが発生するかもしれません」
「そ、そうであったか。
落ち着いたら王城に来て今後の動向を教えてください。
お待ちしてますよ」
まずは一度村に帰りセシリアの出産には立ち会えるように
ルドアニアに帰って来るつもりだ。
私は滅多に使わない空をこまめに繋いで
街道を進んだ。
せいぜい10m程度の範囲しか移動できないが一歩で
10mだから走るより断然速い。
それでも村に到着するまで数日かかった。
帰郷してまず最初に大賢者サミュエル様が
お亡くなりになっていたことを知る。
墓石に花を添え手を合わせた。
「タイロス。これから村はどうするの?」
「魔王が消え復活もないとなると
この村に隠れ住む理由もないとは思う。
だがエルフの血を引く我らは人間とも魔人とも
違う種族だ。
結界を維持したままここで生活を続ける。
が、町に出たい者は以前よりも許可を出しやすくなると思う。
アリア、人間の世界で我々はうまくやっていけると思うか?」
「出会った人による、としか言いようがないわね。
私は人との出会いの運に恵まれていた。
皆いい人だしずっとルドアニアで生活しても良いとは思う。
でも私達は寿命が長すぎるのよ。
愛した人間達は皆先に死んでいく。
それに耐えられれば、かな」
「うん、そうだな。
まあ慌てて決めることはない。
村の皆で話し合って決めていこう。
アリアはこれからどうする?
婿探しかね?」
「ちょっ、えーっと・・・どうしましょ」
「村にはお前に年齢的にも釣り合う男がいないからな。
人間界から適当な男性を拉c・・・
お婿さんに迎えるべきだと思うぞ」
「やっぱそうなるか。
ま、ルドアニアで聖女セシリアの出産に立ち会うから
しばらくしたらまたルド王国に行くわ」
「わかった。それまで村の連中に
外の世界の話でもしてやってくれ」
~~
セシリアの出産に立ち会った。
元気な男の子が生まれた。
この子の未来に幸多かれ!
この時私はこの子の魔力鑑定を行い
セシリアから頼まれ事を受けた。
それから約束通りお城に就職して
アレックス新国王陛下のアドヴァイザーとなった。
さらに数年後。
貴族の三男坊と見合い結婚したが
私が長女を出産した直後に旦那は病に倒れあっけなく
死んでしまった。
王国の運営が軌道に乗り始めたのを機に
アドヴァイザー辞して長女を連れて村に帰った。
人間の血が濃い娘は私の子供時代より
成長は早かった。
娘が30歳になり一人で生活できるようになったのを
見届け再びルドアニアに行った。
ルドアニアは、いや人間社会は発展していた。
もう私は必要ないだろう。
セシリアに会いに行った。
教会では聖女様として立派に活躍中である。
息子は一時失踪していたが生まれたての時に私が
彼に施した『頼まれ事』は無事発動したようだ。
今彼はガウンムア大陸の新興国で将軍職に就いているそうだ。
「そうなんだ。じゃあトールに会いに行ってみようかな」
「あらいいわね。私も行きたいわ。
あの子アッチで結婚して子供が生まれているの。
手紙で知っているだけなので孫の顔見たいのよ」
「そう言うことなら一緒に行きましょう」
「うん。アリアが一緒なら護衛はいらないもんね」
「どーかなー。まあ以前よりは治安が良くなったみたいだし
大丈夫でしょう」
まずはウーファに行きガウンムア行きの船に乗った。
そこでスフィーア行きに乗り換えて途中の港で降りた。
トールは立派な大人になっていた。
新興国であるライザ王国はルド王国主導で作られた国だ。
国王はアレックス陛下の次男坊が就任している。
この国の国防軍の将軍になった勇者の子トール。
可愛い奥さんと子供に恵まれて幸せそうだった。
そこでセシリア達と別れて私は陸路で
のんびりとスフィーアを目指した。
シェリー女王と謁見し手伝えることを数年手伝った。
ゴールデンウルフのマキシーとも話をした。
『お久しぶり、金色の狼さん』
『久しいな、エルフの血を引く者アリアよ』
『ところでゴールデンウルフって寿命はどれくらいなの?』
『個体によるな。自分は生後に間引かれたくらいだから
体躯も小さい。それほど長生きはできないだろう。
それでも人間よりは長いと思うが』
『うん。ラーチャが死んだらその後どうするの』
『森に帰るさ』
『お互い長生きだと別れがつらいわね』
『だが我々もいつか死ぬのだぞ。
早いか遅いかの違いだ』
その通りだ。
なにか吹っ切れた気がした。
そしてまた旅に出た。
魔人の国だったクワイト共和国にも行った。
魔王城があった場所は今は公園になっていて
当時の面影はかけらもなかった。
その公園のベンチに腰掛け『ソフトクリーム』
なる超絶おいしい食べ物を食べながら
エリックの事を思い出していた。
わずか18年の人生で彼は伝説になった。
この世界がこのままの形で発展する限り
永遠に語り継がれるのだろう。
もし生きていたらセシリアと共に
孫の顔を見れたかもしれない。
ソフトクリームだって食べてたかもしれない。
でも彼はここにはいない。
クワイトとパールバディアでさらに年月を
過ごしルた。
グレンヴァイスとサフラス、それにツイーネにも
それぞれ長きにわたり滞在した後
ルドアニアに帰ってきた。
アレックス陛下はとっくに王を辞めて
ルドアニアの郊外に引っ越しをしていた。
「よくぞ来てくれました、賢者アリア殿」
「陛下もお変わりなく」
「ご冗談を。私ももう93歳です。
いつ逝ってもおかしくありません」
少し話をしたが疲れたみたいなので
彼の寝室を後にした。
それから数日後に彼の訃報を聞いた。
私は150歳を超えている。
タイロスは200歳だがまだ元気だ。
長命であると言うことは果たして
良いことなのだろうか?
マキシーとの会話を思い出す。
彼の方がよほど達観していた。
「もう一回ぐらい結婚してみようかな」
今や私が賢者であることに気がつく人はいない。
私は死ぬまでいろんな場所に行って
いろんな物を見ていろんな人に会って
いろんな物を食べてそれを記録に残そう。
それを生涯の仕事にしようと思う。
「よっしゃ!ルドアニアで再就職してオムコさん探すぞ!」
これでWorlds Confusion~は完結となります。
最後までお付き合い下さった皆様には感謝です。
ありがとう御座いました。
最終章の後日談には次回作のネタバレ的な部分も含まれていますが
もちろん重要な部分は書いてありません。
お時間ありましたら次回作もお読みくだい。
ではまた!
*追記
新作『勇者の子、失踪中! ~失われし文明の調整官と勇者の子~』
http://ncode.syosetu.com/n0103eh/
始めました。
こちらもよろしくお願いいたします!