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5-2 『冒険記』のその後 語り部アレックスその1


~~アレックス~~


 戦後処理にも大方の目処が付いた。

私はとっくに18歳になっていた。 

凱旋を終え私はルド王国の新しい国王になり

クロエと結婚した。


 ランス陛下がビアンカ嬢と、ダレスがラーチャと

マリアンがエドと結婚した。

しばらくは結婚ラッシュが続いた。


 それから半年後。

シェリー姫が挨拶に来た。


「スフィーアに戻られるのですな」

「陛下、今までのご支援ただただ感謝するのみで御座います」

「いや、スフィーアの面々の支援指導があったからこその勝利ですぞ」

「ありがたきお言葉」


「ところでシェリー姫はご結婚は?」

「すっかり忘れてましたわ。

ここのところ結婚ラッシュでやっと思い出したしだいです」


「スフィーア王国とは今後とも良好な関係を保ちたい。

で、どうだろう。貴族の次男坊で優秀な男がいるのだが

見合いしてみませんか?」

「あら、スフィーアに付いてきていただけるのでしたら是非に」


「ええ、その辺も考えて次男坊をチョイスしました。

席を設けますので改めて連絡いたします」


 スフィーアは遠い。

ガウンドワナ大陸の最南端だ。


これから長い時間をかけて南の大陸の東側に街道を造り

要所要所に港町を作る。

陸路と海路で交易が出来るようにするつもりだ。

それと同時にのガウンドワナ大陸の未開拓地も各国共同で

開発を進めて行くことになる。


 ちょうどその頃パールバディアのエインリヒ国王が

会って話がしたいと連絡をしてきた。

会談場所はまたもや例の国境にある関所である。


 ルド王国の国王として初の外交である。

まず最初に戦後パールバディアに逃げ込んだ

魔人の軍人の引き渡しを要求した。


「アレックス国王陛下。もはや魔人の軍は壊滅しました。

我が国に居る魔人は全員我が国に戸籍を置くパールバディア

の国民となったが故に引き渡しは拒否いたします」

「それは道理が通らぬぞ。戦犯は法廷で裁かねばならん」


「アレックス陛下は魔人のパールバディア占領軍と不可侵の条約を

結びましたな。その時点で我が国はすでに魔人と人間が共存する

平和な国だったのです」

「それは当時聞き及んでいた」


「今現在も我が国では魔人も人間も仲良く共存しております。

魔人と人間との結婚も珍しくはない。

そこで一つ宣言をさせていただきたい。

パールバディアは国際連絡会議から離脱し中立国となります。

魔人の国にも人間の国々にも与しません」


「それは大胆な。ならば連合軍はパールバディアに魔人の引き渡しを

武力を持って実力行使せねばならなくなりますぞ」

「ならば致し方がない。受けて立つまです。

私はパールバディア国王として国民の生命財産を守る立場にある。

そして私の決定を指示する国民と国防軍が居る」


 そこで新制パールバディア国防軍の規模や装備を聞かされた。

「なんと。魔道銃の生産まで始めたのか」

「さよう。もし有事が起これば双方共に多大なる

犠牲が発生するでしょう。

しかも我が軍は人間の兵卒がほとんどですぞ。

人間同士の戦争になるでしょうな」


「わかった。だが不可侵条約はもはや消え去った。

この場において私の一存でパールバディアに攻め入る事は

決定できぬが国際連絡会議で可決されれば戦争ですな」


「もう一度言います。我が国は中立を保つつもりです。

そして魔人に占領されていたとは言え連合軍に加わらなかったのは

事実ですから、保証という形で各国の復興の物的援助を行いたいと

考えてます」


「ふむ」


 老獪な王の理屈に圧倒されてしまった。

私も強気の姿勢に出たが戦争は望むところではない。


「エインリヒ国王。この案件は一度国際連絡会議にかけさせてください」


「もちろんです。存分に話し合ってください。

出来れば先ほどの物的援助で手を打っていただきたいですな。

それと同時に各国共に国交を復活させ交易や文化交流などを

中心に仲良くしてきたいと考えてます。

いざというときは戦争も辞さない覚悟ですが平和が一番ですな」


 その後各国の代表と話し合ったが皆もう新たな戦争をできるだけの

与力はないのが現状だ。

物的援助があるならばメンツは保てるとの理由で

皆エインリヒ国王の提案に賛成の挙手をしたのだ。


 私は自分の外交能力がまだまだ子供の域であることを

思い知ったのであった。


 同時に魔人の国との交渉も始まった。

十二人会議の大臣達は終戦直後に全員拘束した。


 だがそこでアケミ姫が全責任を負うと言い出したのだ。


「魔人の国の運営は十二人会議が執り行ってきたのは事実です。

ですがその機関の上に絶対君主である魔王様がいらっしゃいました。

その魔王様亡き後、姫である私が最後の王族であると言えるでしょう。

全責任は私にあります。

私のクビでどうかすべてを収めていただきたい」


 凜とした良く通る声は静まりかえった会場の

隅々にまで聞こえた。


 一人の魔人が立ち上がる。

「戦争継続を訴え軍を主導してきたのは大臣で

ある私の責任ですな。

姫様は戦争に荷担してはおられません。

むしろ拉致された被害者であると言えます」


 他多数の大臣が此度の戦争責任は十二人会議が

取るべきでありアケミ姫はなんら関与していないので

無実であると訴えてきたのだ。


 ここでガウンムアのリチエルド国王が発言した。

「正直言うとあなた方の生首を貰った所で

かえって処遇に困りますな。

それに実行犯とも言うべき魔人の軍は壊滅し

重要人物はほとんどが戦死した。

私としては十二人会議の面々には

このまま魔人の国の運営に携わり

連合軍側に戦後補償をしていただきたい、

そう考えております」


 結局大臣と姫の処刑はなしになり魔人の国は連合国側に

それ相応の保証をすることで話の大筋がまとまった。


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