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4-23 魔人の国へ 大侵攻作戦 その9 さよならエリック

はたしてエリックは魔王を倒せたのか!?


~~ダレス~~


「危ない!」

突然襲ってきた振動と爆発音。

天井付近の石壁がアケミさんに向かって崩れてきた。


 僕はアケミさんを床に転がし四つん這いになって

崩れてきた瓦礫をガードした。


「アケミさん、大丈夫?」

「私は平気。ダレス君守ってくれたんだ。

ありがとね」


 背中に乗っていた瓦礫をはねのける。

気がつくと光の加減がなにかおかしいのに気がついた。

魔道ライトの明るさではない。


「階段の上から光が差しているよ。

行ってみよう。アケミさん立てる?」

手を引いて起こしてあげた。


 二人で階段を上がる。

一階の天井がなくなっていた。


 いや。


「お城が消えちゃった。どういうこと・・・・」

アケミさんは不安そうな表情で黙って青い空を凝視していた。


~~グレイン少将~~


「なんだ今の白い光は。

それに物凄い爆発音だった。

ブランカがやったのか?」


 視界の中の違和感を探す。

それはすぐに見つかった。


「魔王城が・・・・・消えた」


 はっと我に返ると戦闘音が止んでいる事に気がついた。

ビルの上から討伐軍の様子を伺うと連中も呆然と

城の方角を眺めてる。


 目の前に一人の魔人が空間から姿を現した。

「少将、ご無事でしたか」

「ソーイチ。君も無事だったか」


くうを使えない魔人は討伐軍に

投降し始めてます。捕虜は殺さないみたいですよ」

「そうか、それでいい。君はどうする?」

「いやー、そう言われましても。どうしましょ?」


「ふっ、相変わらずトボけた奴だ。

俺はクレイグとの約束があるんでな。

投降するわけにはいかん」

「なら話は早い。逃げましょう」


「一緒に来るか?」

「当たり前です。僕はあなたの部下ですよ」

「もう上司と部下の関係ではないよ。

魔人の軍は壊滅してしまったからな」


「まあ殺されないのなら捕虜になってもいいですが、

メシはまずそうですね。

少将が依頼していたカツオブシ、

そろそろ出来てるんじゃないですか?

カツオ出汁と醤油があれば色々出来ますよ」


「うどんでも作るか。というか腹が減ってきたぞ」

「僕もです」

「よし。まずはパールバディアに向かおう。行くぞ」


 俺はソーイチと共にくうを繋ぎパールバディアを目指した。


~~セシリア~~


 轟く巨大な爆発音に驚いてテントを出た。

「なに?今のは・・・・」


 外に居る兵士達が魔王城の方角を指さして騒いでいる。

「城が!魔王城が消えたぞ!」


 アリアが走り寄ってきた。

「セシリアさん!おきて大丈夫なの?」

「あ、ありがとうアリアさん。少しふらつくけど大丈夫。

今の爆発で魔王城が倒壊したのかしら?」


「倒壊というか基礎から上の部分は消失してるみたい」

「もしかしてエリックと魔王もそこに?」

「わからない。魔王城の上空で二人がチェイスしていたのを

見たわ。でも爆発の少し前に空中から消えた。

どこに降り立ったかはここからではわからなかった」


 もう一度魔王城があった辺りを見る。

「あそこになんとか行けないかしら」

「まだバリケードが健在だからすぐには無理でしょう」


 エリック・・・・・

駄目だ私。

覚悟なんて決まってなかった。

真っ黒で冷たい大きな手で心臓を鷲づかみにされたような感覚。

体中の熱も生気さえも闇に引きずり込まれそう。


 アリアが私の手を握ってきた。

「セシリアさん、手が冷えてる。

温かいお茶でも飲んで情報が入ってくるまで

少し落ち着きましょう。ね?」


 アリアの手を握り返したが小刻みに

震えているのが自分でもわかった。

「うん・・・・そうね。少し落ち着きましょう」


~~ハリエク・ロウ老師~~


 凄まじい爆発音。 

テントの外が騒がしい。

何事かと思い外に出た。


「おお、エド。なにがあったんじゃね?」

「老師様、アレを」


 エドが指さしたその先にはあるべき物がなかった。

「魔王城が消えたのか・・・・。

いったいなにがあったのじゃ?」


「わかりません。

エリックと魔王が魔王城の上空で戦っていたのを

見た者が大勢います。

彼等が見えなくなった直後に魔王城は白い火球に包まれて

消失したようですね」


年には勝てない。

自分は出来うる限りの魔道トンネルを作成し

疲れてしまったのでテントで休んでいた。


 再び魔王城があった場所に視線を戻す。

エリック。お主はどうした?

魔王を倒したのか?

ならばさっさと顔を見せに来んか。

この馬鹿弟子が。


~~エリック~~


 妙な雰囲気に気がついておそるおそる目を開ける。

現れた女は俺と魔王に向かって両手を伸ばしたまま

止まっていた。

魔王も俺に腕をねじり上げられたポーズで固まっている。

強烈な白い光が支配した世界の中で女も魔王も

俺も身体の輪郭だけをかろうじて保っている状態だった。

すなわち三人とも全裸状態。


「時間停止か。おい、鈴木。

隠れてないでさっさと出てこい」


 なにもない空間がドアのように開き中から中肉中背

スーツ姿の鈴木がにこやかに登場した。


「お久しぶりです。カイトさん、いえエリックさん」

「すべて説明して貰うぞ」

「もちろんですとも。ではこのドアをくぐってください」


 ドアをくぐるとそこは転生前に訪れた殺風景な会議室だった。

用意されていた着替えを着る。

金属部分がピカピカ光っている新品のパイプ椅子に腰をおろす。


「さて、エリックさん。

転生前にお約束した『勇者になって魔王を倒せ』を覚えてますか?」


「当たり前だろ。だからこうやって魔王を・・・・・あれ?」

「はい、察しが良いですね」

「まさかとは思うが・・・・・クエスト未達?」

「はい、未達ですね」

「ええ・・・・でも結果的に時間流せば魔王は死ぬよね?」

 

「ええ。すでにあちらの時間は流れてます。

でもエリックさんが倒したわけではないですよね?

ブランカの放った魔石の圧縮魔法の結果です。

ブランカをここまで仕込んだのは魔王ですから自業自得。

言わばオウンゴールですな」


「じゃあ俺のやってきたことってなんなのよ。

全部無駄だったのか?」

「とんでもない。すべて必要な事でした。

それにあなたのクエストはまだ途中なんです」


「はい?じゃあこれでも魔王は死なないって事なの?」

「いいえ、死にます」

「わけわからん」


「この魔石を利用した圧縮魔法は単なる爆発ではありません。

この白い火球の内側にある物をすべて、『どこでもないどこか』

に飛ばしてしまうんですね。魔王の精神体を永遠にこの世界から

追放する事になるので死んだも同然です」


「まあそれはわかった。メカニズムは理解できんが。

で、俺はこれからどうすればいいんだ?」


 鈴木はこれから俺がどうすればいいかを説明してくれた。

要約すると『勇者になって魔王を倒せ』、だ。

それに今回は転生ではなく転移だそうだ。

だが残念ながら装備等は先ほどの爆発で消失してしまった。

身体一つでの転移となる。

えーちゃんともここでお別れか。


「おい、えーちゃんはどうした?」

「彼の仕事はここまでのあなたのサポートでした。

クエスト完了ですので成仏して約束通り地球の日本で

転生しますよ」


「そっか。また日本人に生まれ変わるんだな、えーちゃん。

それは良かったんだが、いきなりみんなとお別れだなんて

ちょっと非道いぞ」


「ブランカが邪魔することなくエリックさんが魔王を倒していれば

別ルートもあったんです。

そっちなら凱旋パレードもあったかも知れません」


「納得いかないがまあしょうがない。

次の世界で魔王を倒せばクエスト完了だもんな」

「ご理解ありがとうございます。

ではそちらのドアをくぐってください」


 指定されたドアから会議室を出るとそこは・・・・・

これで第四章は終わりです。

第五章が最終章となりますのでもう少しお付き合いいただけたら幸いです。

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