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4-21 魔人の国へ 大侵攻作戦 その7


~~セシリア~~


「殿下!ギルバート!」


 数十メートルは吹き飛ばされてビルの壁に激突した

二人に駆け寄る。

あまりにも強い衝撃はアリアの御守りが発動した

障壁ごと二人を吹き飛ばしたのだ。


「二人とも意識不明。殿下を優先させる。

老師は?誰か!クロエを呼んできて!」

「私が行くわ。セシリアさんは殿下を先に」

「カミーラさん!助かるわ」


 全身至る所の骨が折れている。

内蔵も損傷しているに違いない。

手をかざし必死に魔力を送った。


「セシリアさん、これを飲ませて!」

アリアが小瓶を手渡してきた。


「これは?」

「『龍の涙』と呼ばれる蘇生薬よ。

エルフの間で何千年もの間引き継がれてきた最後の一本なの」

蓋を開け殿下の口に垂らした。

「うん、飲んだみたい。治癒は続けるね」


 カミーラがクロエを連れてきた。

「クロエ!ギルバートを見て!」

「わかった!」


 クロエはギルバートに手をかざした。

やはりギルバートも全身骨折に内臓まで損傷しているらしい。

私もクロエも自分の魔力が限界になるまで

治癒を続けた。


「おそらくこれで一命は取り留めたはずよ。

カミーラさん、二人を順番に陣に運んでくれる?」

「任せて」


 カミーラはまず殿下を殿下のテントに

ギルバートを救護テントに運んでくれた。


「ギルバートは大丈夫そうね。顔に赤みが差してきたし

呼吸も安定してる。寝かせておいて」


 不安そうな顔のクロエが私の袖を引く。

「セシリア、殿下はどこ?」

「こっちよ。一緒に来て」


 クロエと二人で殿下のテントに入った。

もう一度二人で殿下に手をかざす。

「内臓の損傷は細かいところまではわからないわ

魔力切れになるまでやるしかないわね」


 二人とも目眩がするまで魔力を送り続けた。

「おそらく治癒は完了しているはず。

けど目を覚まさないわね。頭を打ってるのかしら」


 しばらく殿下の手を取って心配そうに見ていた

クロエが強い口調で言った。

「体温が低い。温めなきゃ!」

クロエは立ち上がり意を決したかのような表情で

服を脱ぎ始めた。


「クロエ・・・皆さんテントから出てください!

男性は全員です。

女性は乾いた毛布を大量に調達してください」


 私と聖女隊の数人で殿下の服を脱がせた。

全裸になったクロエが殿下に抱きついたのを確認して

毛布をかぶせる。


「クロエ、ナイス判断よ。

このまま温め続けましょう」


 聖女隊の数名にクロエと殿下を任せて

ギルバートの所に戻る。

ギルバートは目を覚ましていた。


「とっさに両腕でガードして受け身を取ったつもりだが

物凄い衝撃だった。殿下は無事か?」

「今クロエが面倒見てます。

治癒は成功しているハズなんだけど目を覚まさないの」


「そうか・・・・エリックとダレスも心配だな

どれ、俺も行く・・・あいててて」

「えっ!治ってなかった?どこが痛いの?」

「全身筋肉痛みたいな感じだな」

「わかった。私は魔力切れだから聖女隊が面倒見るね

三人ほどコッチに来てギルバートの面倒見てちょうだい」


 私も立ち上がった瞬間軽い目眩がしてふらついてしまった。

駆け寄ってきたアリアが支えてくれた。

「セシリアさんも休んだ方がいい。

横になりなさい」

「ありがとう賢者様。そうさせて貰うわ」


 私は私の出来ることを全力でやるしかない。

それはわかっている。

わかっているのだけど。


 エリック、エリック、エリック。

カイト・・・・


 さっき見た姿が最後なの?

勇者の日記には今日のこの日のことは詳しくは

書かれていなかった。

もう一度だけでいいから顔を見せに帰ってきてエリック。


 まだ一緒にいたいよ。


~~クレイグ~~


 『弟』と一人の剣士を全力で倒した。

魔道障壁が発生したらしいがチャチな障壁など

俺の魔法の前では無に等しい。


「くくく・・・ふ、ふはははは!」


 もう頭痛はしない。

俺は限界を突破したのだ。

あるのは魔法を放つごとに高まる高揚感だけだ。


 通りを歩きながら風を、火を、水を、土を、

攻撃魔法のすべてを放ちまくった。

なにやら人間共が雨あられのように銃弾を浴びせてくるが

そんなもん効くか。

 

 壊れる壊れる壊れる。

人間共は死ぬ、どんどん死ぬ。

いとも簡単に壊れ死んでいく。

今なら俺は地上の人間共を根絶やしに出来る。


「どうだ、人間共!抵抗してみろ、なにが魔道銃だ!効かぬわ!

見たか、黒髪共!私が、私こそが魔人のなかの魔人なのだ!」

 

 楽しい、実に愉快ではないか!


~~ブランカ~~


「馬鹿な男ね・・・・」


 クレイグはメインストリートをフラフラと歩きながら

魔法を放ちまくっている。

狙いなどつけているようには見えない。

口は半開きでよだれを垂らしている。


 それでもアリかウンカの群れかと見紛うばかりの人間の群れには

いい加減に放った魔法でも当たっていた。

クレイグは時折立ち止まり甲高い声で笑っていた。


「壊れたわね。ああなったらもう元には戻れないかも」

だがこのままクレイグがトドメを刺されるのを

眺めているわけにもいかない。


「ふん、最後に魔王様のお役に立ちなさい」


 私はフラフラと歩くクレイグの背後にくうを繋ぎ

地面に降り立つと同時にクレイグの背中に

円上のカマイタチを放った。


 胸部に丸い穴が開いたクレイグは前のめりに倒れた。

私は切り取られたクレイグの胸部を踏みつぶし

魔石をむき出しにした。


「これさえあれば・・・・・魔王様、今馳せ参じます」

 

 私は魔王様と勇者が戦ってるであろう

魔王城に向けて空間を繋ごうとしたその時。



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