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4-20 魔人の国へ 大侵攻作戦 その6


~~魔王~~


 ブランカもクレイグもそろそろ限界だ。

二人とも瞳が赤く変色してきていた。


 交代で休みを取ってるみたいだが何度出撃しても

きりがないだろう。

まあそれはいい。


 私の目的は勇者を屠ること。

「さて、まずは勇者を探しに行こうかしらね」


 市街地から魔王城に繋がる跳ね橋は上げてある。

その橋の市街地側に降り立った。

討伐軍の兵士が数人コッチを見る。


「お、お前は!魔王だ、魔王が出てきたぞ!

皆こ・・・」

「うるさい」

風刃で首をはねる。


 何人かが魔道銃を撃ってきたが気にしない。

身体を強化している私には銃は意味をなさない。

歩きながら風刃、土弾等をいい加減に放つ。

狙いをつけなくても誰かには当たるからだ。


 王城前の広場に出た。大勢の兵士が私を囲んでいる。

見渡したが勇者はここにはいない。

回転しながら魔法を放ちまくる。

誰も私に近づいては来れない。


「これだけ暴れればあっちからくるはずなんだけど。

まだ足りないかしら?」

ビルの上から狙撃して来る奴が鬱陶しい。

岩塊をぶつけてビルの上半分を破壊した。


 見ると南の通りに陣取っていた兵士達が道の両側に寄り始めている。

開いた道路を数人のグループが走ってきた。


「やっと来たわね、エリック」


~~エリック~~


 戦況は討伐軍が押している。

魔人の中には投降する部隊も出てきた。

捕虜になった魔人は魔法を使えないように

アリアが作成した魔力を押さえる手錠をはめていた。


 魔王は魔王城にいるらしい。

らしい、と言うのは正確な情報がないからだ。

数人の軍人が偵察に行ったが誰も帰ってこなかった。


 殿下が俺達勇者のパーティがいるテントにやってきた。

「エリック、そろそろ出番のような気がする」

「殿下、俺もそんな予感がします」

「体力は大丈夫か?」

「はい。さっきまで仮眠を取らせて貰いました。万全です」


『予感ってのは馬鹿にできないね。

俺もさっきからなにかシーンが変わる直前のような心境だよ』

『えーちゃん、それは剣士としての予感?』

『わからないね。だがそろそろ来るぞ』


 伝令が息を切らせてテントに飛び込んできた。

「魔王が出ました!現在魔王城前広場で討伐軍と対峙してます!」


「みんな、聞いての通りだ。全員で行く。

アリアの御守りがあるから滅多なことは起きないと思うが

それでも用心してくれ。みんな俺の身体のどこかに触れていて」


 一気に魔王城の前に行く。

兵士達が道の両側によけて道を開けてくれた。

はたして魔王はそこにた。


「殿下までついてきたんですか?

総司令は本陣から出ちゃ駄目でしょ」

「私も賢者殿から頂いた『御守り』があるからな。

クレイグが来たら私が相手をするぞ」


「わかりました。ですが無茶しないでください。

俺達は一人で戦ってるわけじゃないので

みんなを頼ってください」


 魔王が不敵な笑みを浮かべてコッチを見ている。

「話は終わったかしら。

エリック、前回のような拍子抜けじゃ楽しくないわよ」


 返事をする変わりに空間の出口を魔王の頭上に開けると同時に

火魔法で火球を空間に放った。


 火が消えるとそこには誰もいない。


「へえ、少しは鍛えたのかな?」

突然目の前に現れた魔王が繰り出す右ストレートを

左腕で受け流しみぞおちに正拳を入れた。


 数歩下がった魔王は間髪入れずに散弾状の石弾を放った。

だがアリアの魔道具が効力を発揮、すべてを弾き落とした。


「なるほど、考え無しに突っ込んできた訳ではないのね」

「当たり前だろ。なめんなよ」

「魔法が効かないのならやることは単純だわ」


 殴り合いが始まった。

剛力を持つ魔王の動きは速い。

腕力による攻撃はいちいち重いが俺もダレス相手に

訓練を重ねてきている。

 

 アリアに教えて貰った魔道障壁の鎧も効果を発揮している。

しかしこれは身体へのダメージを軽減することができるが

全くのゼロには出来ない。


 魔王が繰り出す速くて重いパンチは障壁ごと俺の身体を

吹き飛ばす。

「おい、魔王。手を抜いているのか?前回ほどの威力はないな」

「余裕ぶれるのも今のうちよ。勇者」


 土魔法で生成した複数の槍が俺に向かって飛んでくる。

ここで『くうの鎧』を発動した。

槍は俺の身体の直前で空間に姿を消した。


 息は継がせない。

俺は魔王に向かってダッシュした。

魔王はひるみもせずに俺に向かってパンチを繰り出そうとしている。


「この瞬間を待っていた!」

魔王の死角にいたダレスが猛突進して魔王にタックルを決めた。

転がる魔王の首にアケミから貰ったチョーカーを素早く巻く。

魔王の頭を押さえつけつつダレスに向かって叫んだ。


「ダレス!魔王の両腕を後ろで縛り上げろ!」

いつもなら、わかったよ!と返事をするダレスも今回は

余裕がないようだ。必死の形相で魔王を縛る。


「もう逃げられないぞ」

「あっははは、あんた馬鹿?」

魔王の身体に触れていた俺とダレスは

魔王が地面に開けた空間に一緒に引き込まれてしまった。


~~クレイグ~~


 戦っている魔人はもう少ない。

投降する者も出てきたようだ。

上空から市街地の様子を伺っているとビルの屋上でグレイン少将

と数人の魔人が苦戦している様子が見えた。

「助太刀するか」


 討伐軍が登ってきた階段を土魔法で封鎖する。

屋上に残っていた数名の討伐軍兵士は風刃で横なぎに払い

全員をまっぷたつにした。


「クレイグ准将、助太刀感謝する」

「グレイン少将、ご無事で」

「戦況は?魔王様は?」

「もはや魔人の軍は壊滅ですな。

少将も投降なさったほうが良い。

魔王様は今勇者と戦ってますぞ」


「そうか、ここまでか。ま、頑張ったほうじゃないかな。

で、魔王様には助太刀に行かなくていいのかね?

君もブランカ同様何かしらの強大な力を手に入れたらしいな」


「魔人の魔石ですな。まあ自分はルド王国に連れて行った

精神操作の魔道士をその身体ごと精神干渉装置にしてしまった

前科がありますからね。さほど抵抗は感じません」


「そういう事を言ってるのではないのだが。

ブランカも君も瞳の色が真っ赤だぞ。大丈夫か?」


「それは気がつきませんでした。

しかし心配無用です。

少将はしばらくここで休んでいたらどうです?

というのはお願いがありまして」


「なんだ?」

「ニナのことです。まだルドアニアにいるんです。

戦争が終わったら安全にルド王国から脱出させて

やってくれませんか?」


「君が生き残って迎えに行ってやればよろしい」

「無理ですな。私はルド王国内に手配書が廻っている」

「・・・・・もし俺が生き残れれば、だが。約束しよう」

「感謝します。では少将、お元気で」


 俺は再び上空に行き魔王城前広場を伺う。

ちょうど魔王様と勇者が空間に消えた所だ。

「懐かしの『弟』が来ているな。

からかってやるか」


 上空からアレックスめがけて岩塊を撃ち落とした。

それと当時に地上に降り立つ。

「ほう、今のをよけたかのか?

まぐれとは言え褒めてあげようアレックス」


「クレイグ、父の仇だ!」

アレックスが剣を振り下ろす。

両腕に仕込んだガントレットで受け流すと同時に

胴体めがけてケリを入れた。


「げ、げほっ!貴様!」

「殿下!」

先刻見かけた剣士が駆け寄ってきた。

「面倒くさいな。まとめて死ね」

二人に向けて最大級の力で岩塊を数発発射した。


 その瞬間目眩がした。

歪んだ視界の隅の方でアレックスと一人の剣士が

岩塊にはじき飛ばされて向かいのビルの壁に叩きつけられるの

確認した。


「これは・・・・・まずいな」


 俺は開いた空間にフラフラと飛び込んだ。

  

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