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4-18 魔人の国へ 大侵攻作戦 その4


~~ボイパ船長~~


「船長、今ほんの一瞬でしたが何かが中間空間を抜けた

ような反応が計測されました」

「次元の揺らぎか?具体的にはどの辺りだ?」

「ここですね」


 計測班の一人が司令室のスクリーンに映し出された

地図にマークを置く。


「ガウンドワナ大陸の中央部か。

魔人の国よりやや南西の方角だな。

ここにはなにかあったか?」

「この辺りは低い山脈がありその周りは

密林に覆われています。

人は住んでませんね」

「ふむ。なにがあったのか?」


「ハイパー光速航行用のエンジン内での魔石の反応に似てますが

エネルギーの解放速度がまるで違います」

「つまりは魔石を燃料とした爆発の類か」

「ええ、そう見て間違いないでしょうね」


 母船はこの惑星の軌道上にいる。

我々が懸念しているのはこの惑星で魔石の採取をしていることが

星間連合にばれることだ。


 この銀河の辺境にある恒星もまばらな空間には

よほどのことがない限り星間パトロール船は来ない。

だが中間空間へ影響を与える大規模なエネルギー異常が

引き起こす次元の揺らぎはかなり遠くからでも

計測できるのだ。

用心にこしたことはない。


「地表の様子は探れるか?」

「ええ、光学望遠鏡で探ってますが人影は見あたりませんね」

「自然現象とは考えにくい。

しばらくは引き続き計測を続けてくれ」


 マチルダに連絡を取った。

一人で執務室にいたようだ。


「船長、どうしました?」

「ああ、今魔人の国の南西部で小さな次元の揺らぎを

計測した。そっちでなにかわかったら連絡してくれないか」

「わかりました。私はルドアニアを離れられません。

今マリアンが大侵攻作戦について行ってるので

直接連絡を取ってくれますか?」


「わかった。マリアンにはどんな装備をも持たせてるんだ?」

「限定解除したS級装備です。私が許可しました」

「うん。それなら色々出来るな。

インパルスジェットは?」

「はい、こちらの世界で手に入れた『魔法のバッグ』

に必要な装備はすべて入れてありますわ」

「便利なもんだよな、魔法のバッグ」

「ええ、しかしこの惑星でしか使えないのは残念な話です」


 以前手に入れた魔法の収納バッグを自分たちの星系に

持ち帰った事がある。

詳しく分析するためだったが本星の研究所に着いた時は

すでに効力を失っていたのだ。


「とにかくマリアンが命を落とす危険は少ないだろう。

少し調査して貰いたいのでね。借りるぞ」

「ええ、大事に使ってあげてください」


~~マリアン~~


 先輩とポイパ船長から同時にメールが届いた。

私は今魔人の国の南の陣で魔石の回収お呼び管理業務

に付いている。

  

 まずは先輩からのメールをチェック。

ボイパ船長の指揮下で調査業務を行って欲しいとのこと。

船長のメールには地形図が添付されていた。

いくら他人には見えないプライベートスクリーンでも

これはここでは展開できないな。


「すませーん、ちょっと用をたしてきまーっす」

管理業務を放っておき自分のテントに行く。

ボイパ船長を呼び出すとすぐに出た。


「・・・・というわけで謎の爆発を探って欲しい」

「いいですけど。装備はフルに使用していいんですよね?」

「もちろんだ。この星の住人に気がつかれない程度にな」

「了解です。ちゃちゃっと終わらせます!」


 管理業務を部下に引き継いだ。

「みんな、交代で休憩取ってね。

私はちょっとお使いに行ってきます。じゃっ!」


 魔法のバッグを肩にかけ陣の南にある密林に足を踏み入れる。

「この辺ならいいかな」

装備ベルトを腰に巻きステルスモードを発動、反重力装置を作動して

インパルスジェットパックを背負った。


 地図にあるマーカーの座標を入力し自動で現地に飛ぶ。

「この辺だわね。あのクレーターかしら」

地面に出来ている真新しい直径30mほどのクレーター

の縁に降り立った。


「船長、到着しました。放射線物質はありません」

「了解。危険がなければ周辺も探ってくれ」


 まず一度上空に上がる。

高度200m程度で静止し辺りを伺うと

眼下に一人の女性を発見した。


「ん?宙に浮いてる?いや、魔道障壁に乗ってるみたいね」

プライベートスクリーンを展開して望遠レンズで捕らえた女性を

拡大表示させた。

「タイトなミニスカートに白いチューブトップ。

膝下まで隠れるロングブーツか。何やってるんだろ」


 その女性は右の手を山脈に向かって開いてた。


 次の瞬間。


「きゃっ!な、なに?」

真っ白い巨大な火球が山脈の中腹付近に発生した。

その火球は一瞬で収縮し後には巨大なクレーターが残る。

同時に発生した風はその火球があった場所に向かって吹き荒れた。


 おそらくアレは単なる爆発ではない。

白い球状の何かは一瞬にしてその範囲内にある物質を

別の次元に放り込んだのだろう。

同時に空気も持って行ったのでいきなり出来た真空に

周囲の空気がなだれ込み突風を引き起こしたのだ。


 インパルスジェットの自動補正機能が働き

体勢を保ってくれた。

辺りを見回したが先ほどの女性はどこにも居なかった。


 すぐに船長を呼び出す。

「船長、今の爆発は計測できましたか?」

「ああ、できた。さっきよりでかかったぞ」

「間近で捕らえた映像があります。そっちに送りますね」


 スクリーンを操作し映像ファイルを母船に送った。

あとは計測班のクルーが解析してくれるだろう。

「船長、私は戻りますね」

「ああ、ご苦労だった」


 急いで陣に戻らなければ。

「とにかく嫌な予感しかしない」


~~アレックス~~


 ギルバートが報告に来ていた。

「殿下、すいません。クレイグを取り逃がしました」

「いや、それでも一太刀あびせたのだろう?

大儀であった」

「ありがたきお言葉」


 クレイグは神出鬼没で討伐軍を引っかき回しているらしい。

だが、こちらもひるんではいない。

魔人の国の王都は間もなく制圧できるはずだ。


「周辺の現況はどうなっている?」

控えていた伝令兵が次々に報告する。


「西へ進出した討伐軍は順調に各町村を制圧しております。

抵抗はほとんどなく、あったとしても地域住民の抵抗であり

軍の者ではありません」


「北方面はドワーフの鉱山に繋がる街道を押さえました。

ミスリル鉱山に続く道です」


「東方面は軍の練兵場が幾つかあり立てこもった

魔人の軍が抵抗を続けておりますが攻略は時間の問題かと」


 順調に行っている。

上手くいきすぎていると言ってもいいくらいだ。


「クレイグは何とかせねなばならん、

出来れば私がこの手で討ち取りたいものだが。

それと魔王はどこにいるんだ?」

「はっ、消息は掴めていませんが魔王城に居るものと思われます」


 刻一刻と終わりが近づいている。

魔王はエリックに任せるしかない。

前回の不意打ちではエリックが負けた。

だがエリックはあの後猛烈な訓練を繰り返していたことを

私は知っている。


「エリック、頼んだぞ」

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