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4-16 魔人の国へ 大侵攻作戦 その2



~~クレイグ~~


 スフィーアを滅ぼした時のことを思い出す。

あの時は俺もまだ未熟だった。

凱旋帰国してからは新しい部隊運用方法のレポートを

いくつも書いた。

 

 だがそれもほとんどが無駄に終わったも同然だ。

魔法を使えない一般人でも扱える魔道銃に魔道障壁。

ルド王国が大量生産したこの新しい兵器は戦争のやり方を

根本から変えてしまったのだ。


 ガウンムアではほとんどなにも出来ずに敗走してきた。

多くの部下を死なせた責任は取るべきだと思い

十二人会議の場に生き恥をさらして顔を出した。


 そこで極刑を言い渡されても仕方がないところ

魔王様が俺の身柄を預かると言い出した。

そして渡された新しい魔道具。


 発動した瞬間にわかった。

これぞまさしく魔人の中の魔人こそが身につけるに

ふさわしい能力だという事を。


 この膨大な魔力量に耐えられたのはブランカと俺の二人だけ

だというのが惜しいところだ。

せめて100人用意できれば人間共をこの世界から根絶やしに

することも可能であろう。


「ブランカ、魔王城周辺のバリケードはこんなもんでいいだろう。

魔王様に報告してこい」

「わかったわ。クレイグ」

「おい、上官にその態度は・・・」


「私は魔王様の副官。あなたは敗軍の将。

それにもう魔人の軍は終わりよ。

階級なんて意味はないわね」


 この無能女にここまで言われるとは。

だが言ってることは正しい。

もはや魔人の軍は軍としての機能を失いつつある。

グレイン少将は善戦していると言えるが、多勢に無勢だ。


「ふん、偉そうな態度をとって無様な死に方するなよ」

「その言葉そのままお返しするわ。

私は魔王様を呼びに行く。

あなたは先に討伐軍と遊んでらっしゃい」

「言われんでもそのつもりだ」


 針山のようなバリケードを超える。

上空に置いた魔道障壁に乗り眼下を眺めた。

中心街は混戦状態だ。

だが四方から王都に押し寄せる討伐軍の圧倒的な数に

押される一方である。


「ふん、人間共め。数の多さが正義ではないのだよ」


 押し寄せる討伐軍に巨大な火球を数個ぶつける。

戦闘の兵士100人は黒こげになった。

だがその後の火球は彼等が作り出す魔道障壁に阻まれた。


「ではこれならどうかな?」

巨大な竜巻に炎をからみつかせ討伐軍の兵士共を

黒こげにしつつ空に舞い上げてみた。


 かなりの数を屠ったはずなのだが見た目には

そんなに数が減ったようには見えない。

万単位の軍とはこれほどのものなのか。

少し感心する。


 足下の障壁に何かが当たった。

討伐軍は手近な建物に侵入し窓から俺を魔道銃で

狙っているらしい。


 障壁に当たる銃弾が増えてきた。

「ふむ。正確性も優れているな。

だが俺の障壁を打ち抜ける威力はないらしい」


 地面に降り立つ。前面に障壁を張りながら歩いて

討伐軍に近づく。

大量の銃弾が障壁にあたりバラバラと音をたて地面に転がっていった。


 特大のカマイタチを生成し投げつけると討伐軍の兵士達は

面白いようにまっぷたつにちぎれていく。

「くくく、なんとももろいものよ」


 その時真後ろから殺気を感じた。

が、一瞬判断が遅れた。

死角から振り下ろされた剣の切っ先が俺の右腕をかすめ切る。


「むっ!」

「見つけたぞ、クレイグ。貴様ぁ!」

変わった形の剣を構えた男が叫んだ。


~~ギルバート~~


 魔道トンネルを抜ける。

郊外のだだっ広い広場に出た。

アリアが結界を張っているので魔人はここには入って来れないそうだ。


「エリック、俺も加勢に行っていいか?」

「いや、ちょっと待ってギルバート。

アリアがなにか話があるそうだ」


 勇者のパーティ全員にアリアが何かを配り始めた。

「みんな、これを首からぶら下げててね。

みんなの個体周波数に合わせるのに時間がかかったけど

やっと出来た。

これは魔人が放つ魔法を弾いてくれる魔道障壁です。

攻撃があったと同時に発生する仕組みです」


「アリア、ありがとう。これは考えうる限りでは

最高の盾だな。これなら剣だけでも戦える」


 殿下が私をたしなめてきた。

「ギルバート、気持ちはわかる。だが魔道銃のメリットは

体力を温存できる面もあることを忘れないでくれ。

剣はいざという時に使えばいいだろう」


「わかってます殿下。

一人でも多くの魔人を屠ることをお約束しましょう」


 エリックが皆に指令を下す。

「セシリアはこの陣で救護テントの設営を手伝ってくれ。

運ばれてきた怪我人は聖女隊のみんなで手分けして治癒を頼む。

ダレスは前線でバリケードの除去。

それに自力で動けない怪我人を見かけたらここに運んでくれ。

俺はアリアを運んで他の三つの陣に結界を張って貰う。

その後各陣に聖女と聖女隊を運ぶ」


「エリック、俺は?」

「ギルバートはダレスの援護を頼んで良いか?」

「わかった。ダレス、行こうぜ!」

「うん!がんばろうね!」


 ダレスと二人で前線に向かって駆け出した。

「おい、ダレス、速いよ!」

「ご、ごめん。なんなら乗ってく?」

「はい?」


 ダレスはあっという間に俺を肩車し物凄いスピードで

走り始めた。

顔面を撫でる風に耐えきれず涙目になる。

「あっという間だな。ダレスありがとう、ここでいいぞ」


 ダレスはバズーカ部隊が壊した瓦礫の撤去を始めた。

綺麗になった道路に討伐軍の兵士が殺到する。

「ダレス!ここはもういいだろう、先に行こう!」

「わかった!」


 魔王城に向かって皆で走る。

遠目にもわかる激戦区になっている。

俺達が到着したときは一人の魔人が強大な魔法を放ち

討伐軍を圧倒していた。


「ダレス、俺をあいつの後ろに放り投げてくれ!」

「えっ、大丈夫?」

「大丈夫だ。それなりに鍛えてるんだぜ?」

「そういやツイーネの海水浴場で6パックの腹筋

自慢してたもんね!じゃあ投げるよ。それっ!」


 その魔人の後ろに降り立つと同時に大上段から

剣を振り下ろしたが、よけられてしまった。

剣の切っ先は奴の右腕を薄くかすめ切っただけだった。


 そして俺は振り返った魔人の顔を見るやいなや叫んだ。


「見つけたぞ、クレイグ。貴様ぁ!」

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