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4-15 魔人の国へ 大侵攻作戦 その1 開戦


~~エリック~~


 広い郊外の訓練場には大勢の将兵が整列している。

アリアが作った拡声魔道具を使い殿下が演説を始めた。


「諸君。いよいよ魔人の国に侵攻する。

1000年前の勇者が時の魔王を葬り残りの魔人達は

ローレルシア大陸を追われ、ここガウンドワナ大陸の

中央部にある密林の中に国を作った。


 1000年もの長きにわたり人間は平和な暮らしを続けてきたが

ここ数年で魔物が増え、魔人の軍が人間の国に侵攻をし

魔王が復活をした。


 スフィーアで、ガウンムアで、ツイーネで、パールバディアで

グレンヴァイスでそしてルド王国で。

魔人と人間は衝突を繰り返し我々は多くの同胞を失った。


 だがそれももうすぐ終わる。

いや、終わらせねばならない。


 我々は平和な世界を取り戻すのだ。

混乱した世界を元に戻すのだ!


 魔王討伐連合軍最高司令官アレックス・ボ・ルドウィンが命ずる!

魔人共を殲滅せよ!」


「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」


 地鳴りのような将兵の雄叫びに圧倒された。

今ガウンムア王国に集結している5万人を超える将兵。

彼等を一気に魔人の王都に送り込み放射状に魔人の国を制圧していく

作戦である。


 俺と老師で手分けして魔道トンネルを繋ぎ一気に送り込むのだ。


「エリック、用意は良いかの」

「老師殿、いつでも大丈夫ですよ」


 各大隊の長が大声で号令を掛けている。

殿下が俺の顔を見てうなずいた。

「老師殿、合図です。やりましょう!」


 俺達は今まで作成した中でも特大でしかも持続時間の長い

魔道トンネルを生成した。

各大隊が駆け足でトンネルに吸い込まれていく。

大侵攻作戦が始まった。


~~グレイン少将~~


「まさか一気にこれだけの大部隊を送り込んでくるとはな。

いったいどんな魔法だよ。ったく。

土魔法使いは魔王城に繋がるすべての通りを封鎖しろ」


 俺がパールバディアから帰ってきて本国防衛の任を負かされてから

まず真っ先にやったのは非戦闘員の疎開だった。

いま王都には軍人しか居ない。


「伝令!討伐軍は市街地を四方から囲んでおります。

現在その数約1万、まだ増えます!」

「伝令ご苦労。くう部隊は風魔法使いを

ビルの上に運べ。トルネードで人間共を舞い上がらせろ」


 グレインは自らも前線の様子を伺いに行った。

巨大な竜巻が討伐軍の中にいくつも出来上がる。

巻き込まれて地面に叩きつけられる討伐軍兵士が続出した。


「露払いの足止めにはなるな。しかしなんだあの数は」


 その時数歩先にいた風魔法使いが倒れた。

額から血を流している。

どこからともなく前触れさえもなく飛んでくる銃弾に

なすすべなどない。


「金属製の盾を持ってこい!気休め以上の効果はあるはずだ!」


「伝令!南のバリケードが突破されました!」

「む!いったいどうやったんだ?」

「見た所巨大な魔道銃を肩に担いだ部隊が

土壁を破壊したようです」


 連中、バズーカまで作ったのか。

もう例え戦車が出てきても驚かないぞ。


「魔王城はどうなってる?」

「はっ!掘り一面に先のとがった巨大な針山のような

土壁・・・いえ、岩壁が生成されてます。

おそらくクレイグ准将とブランカ下級佐官がやったと思われます!」


「ふむ。しばらくは大丈夫だろうな。

おい、土弾を撃てる者は掩体を見つけて

敵の銃弾に当たらないようにしろ。

身を乗り出すなよ、狙われるぞ」


 建物の屋根を飛び回り様子を見て廻った。

バリケードなど作った端から破壊されている。


 3000人の高度な魔法使いだぞ。

剣を振り回す人間の部隊一個大隊を一人で壊滅させられる

実力を持った魔人の中のエリート達だぞ。


 時代は一気に変わってしまったのだ。

俺達はいつまでも魔法使いが放つ個々の魔法に頼るべきでは

なかった。


 では我々も魔道銃を開発すべきだったのか?

出来るならするべきだったが、魔人のプライドがそれを

許さなかったのだ。


「・・・・・あと何分保つかな」


~~アケミ~~


「アケミ、そこの砂糖を取って」

私は魔王の前に黙って砂糖壺を置いた。


 魔王は甘くした紅茶が好きだ。

いつも大さじ三杯も入れている。


「ねえ、魔王ちゃん。市街地では戦闘が始まったみたいよ」

「そうね。お城の周りは強固なバリケードが張ってあるから

ここはしばらくは大丈夫でしょ」


 広い魔王城の中は静かだ。

普段は使用人の人達が働いているのだが今は皆疎開している。

私も郊外に行けと言われたがここで行われる事を

見届ける義務があるような気がして魔王城に残った。


「あ、忘れてた。アケミ、コッチに来て」

「・・・うん」


 魔王は私の首に手をやりチョーカーを外した。

「これでいいわ。お姫様ごっこを続けるも辞めるも

あなたの自由よ。好きにしなさい」


「わかんないわよ。どうすればいいかなんて」

「駄目よ。自分で決めなさい。

それから今まで良くやってくれたお礼に

一つプレゼントをあげる。

これを首からぶら下げておきなさい」


 布製の平たい小さな袋だった。

「え?御守り?」

「へぇ、これ御守りって言うんだ。

中には加工した魔石の板が入ってる。

魔法を使えないあなたでもこれを握っていれば

魔道障壁が使えるわ。自分の身は自分で守ってね」

「ありがとう、貰っておく」


 ブランカが部屋に入ってきた。

「魔王様、勇者が来たようです」

「わかった。まずは出迎えよろしくね。クレイグは?」

「既に歓迎会の準備に」

「張り切ってるわね、じゃ私も行こうかしら」


 魔王は私には目もくれず振り向きもせずに部屋を出て行った。

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