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4-14 魔人の国 決戦前


~~十二人会議~~


 魔人の国の議会は紛糾していた。

「すでにガウンムアは落とされた。

討伐軍はすぐそこまで来ている。

講和を提案するなら今のタイミングしかないぞ!」


「この売国奴が!まだ魔王様が控えていらっしゃる。

魔王様なら一軍を滅ぼすことなど容易くできるわ!」


 魔王は無表情で黙って会議を眺めていた。


 また別の大臣が声を張り上げている。

「とにかく討伐軍が攻めてくることを前提に

守りを固める方向で団結しないか?

ここで仲間割れしている場合ではなかろうが」


「賛成!」

「異議無し!」


 議長が次の議題を出した。

「クレイグ准将、ガウンムアを落とされた責任を

どう取るつもりだ?」


 クレイグが発言する前にヤジが飛び交う。

「敗軍の将なら潔く極刑を受けろ!」

「極刑とは何事だ!貴重な戦力を減らしてどうする!」


 議長が皆をたしなめた。

「静粛に!」


 魔王が静かに立ち上がる。

水を打ったような静けさが議場を支配した。

 

「ブランカの報告にもあるように圧倒的な戦力差が

あるわ。クレイグが無能って訳でもなさそうね。

クレイグの処遇は私に預けて頂戴。

魔人の国の防衛はグレイン少将にやって貰うわ。

すぐにパールバディアから呼び返してちょうだい」


~~グレイン少将~~


「やれやれ、お呼びがかかったか。

ワッツ副官。主部隊を率いて後から来い。

俺は先に行くぞ」

「御意に」


 何度もクレイグに警告はしておいたはずだ。

討伐軍の主力兵器、魔道銃。

あれは反則だ。


 いくら魔法で圧倒的なアドヴァンテージがある魔人でも

数の論理にはかなわない。

我々魔人は100万人いるがくうを使いさらに

他の魔法も武器として使用できる軍人は数が限られている。


 今回のガウンムア攻防戦でかなりの数を失った。

残りのくう使いは約3000程度か。

訓練が行き届いてない新兵や士官学校の生徒も含めてだ。


 本国の防衛に民間人まで駆り出して良いのだろうか。

駆り出したところで魔道銃の餌食になるのは目に見えている。

だが義勇兵の募集はやってみるか。


 後は魔王様頼みになりそうだがどのタイミングで

出張って貰うかだな。

おそらく、いや確実にエリックが来る。

奴が魔王様を足止めしてしまったら討伐軍は

我々軍人だけで何とかしなくてはならない。


 きついな。

俺の命すら危ういじゃないか。


「辞世の句も用意しておくか」


~~クレイグ~~


「魔王様、これは・・・・今まで扱ったことのない魔力量です!」

「ふふ、耐えられたのね。

まともで居られたのはブランカとあなたの二人だけよ」


 俺は魔王様から受け取った魔道具を首からぶら下げた。

袋の中には魔石が入っている。

この魔石入りの袋に自分の魔力を流すと発動するのだ。


「調子に乗ると気が狂うわよ。徐々にその膨大な魔力量に

慣れていってちょうだい。と、言いたいけどあまり時間はないわね」

「お任せ下さい魔王様。すぐに慣れてご覧に入れます」


 南の密林に行き実験してみた。

いつもの感覚で討った最大級の石弾は地面に大きなクレーター

を出現させた。


「行ける、これなら行けるぞ!

だが最大出力を出し続けると頭痛がしてくるな。

ま、慣れるしかないか」


~~アケミ~~


 エリックがいた。

髪を染めていたけど間違いない。

駆け寄って抱きつきたい衝動に駆られたが

監視の目が光っているのでそれはできない。


 監視が無かったとしても私が町中で男性に抱きついたら

その男性が周囲の連中に袋叩きにされるだろう。


 ソーイチは信頼できる味方の一人だ。

転生者はエリックだけでなく魔人の国にも居たのだ。


 ソーイチに剛力を押さえ込むチョーカーを託す。

私がここに連れてこられる間に巻かれていた奴だが

もう使わないならお洒落のために頂戴とおねだりして

貰ったものだ。

取っておいて良かった。


 私は魔人の国に長く居すぎた。

ここでの私は魔王にそっくりの顔を持つお姫様。

食べ物や着る物の改革に勤しみそれなりの成果を

上げてきた。


 この世界にやってきてからは魔人の国での生活が

ルド王国での生活期間より長くなってしまっている。


 魔人も人間も普段の生活は変わらない。

少なくとも私の周囲にいる魔人は皆良い人達だ。


 だが魔人と人間は戦争状態にある。

私だってここに拉致される前には戦闘で魔人を殺しているので

偉そうな事はなにも言えないが、やはり戦争は嫌だ。


 魔人の国でも平和に暮らせる事がわかってしまった

今、私の心はどっちつかずのもんもんとした状態。


 甘い物を一緒に食べてる時の魔王の屈託のない笑顔。

私がなにかしでかした時のエリックのジト目、そして許してくれたときの

はにかんだ笑顔。


 どっちも好きだ。

どちらにも死んで欲しくない。


 私に出来ることってなんだろう。

たぶんなにもない。

私は今、ただ成り行きに身を委ねるしかない

自分の無力さに絶望しているのだ。



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