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4-6 ガウンムア奪還作戦 その6 ブランカとエリック


~~ブランカ~~


 魔王様からの命令でガウンムアの偵察に来た。

クレイグからの応援要請はまだないのだが明らかに我が軍が

劣勢であるとの報告が多数入ってきている。


 魔王様から頂いた魔力増幅装置とも言える

魔道具にも随分慣れてきた。

だが最近長時間使用すると頭痛がするのだが、

使用しているときの高揚感と陶酔感はやめられそうにない。

セックスするより気持ちいいのだから仕方ない。


 パールバディアから来た部隊に合流する。

なぜかボイドが居たので話を聞いてみた。


「ブランカ下級佐官殿。お久しぶりであります。

そして昇進おめでとうございます」

「世辞はいいわ、ボイド上級尉官。状況は?」


 ボイドが説明した。

「なるほど。で、今からこの部隊を投入するのね」

「はい。分散させて各町や集落を取り返していきます」


「それはやめた方がいいわね」

「なぜです?」

「魔道銃の威力を見たでしょ?アレ単体なら魔人一人で対応出来るわね。

しかし奴らは組織だった運用をしている。

いくら精鋭でも数の論理には適わないわよ」


「なるほど。ではどのように作戦を立てれば良いのでしょうか?」

「あのね、私の任務は視察なの。

作戦行動には感知しない。好きなようにやればいいじゃない。

でもアドヴァイスだけはさせて貰うわ。

全員で固まって主街道を東に進みなさい」


「助言感謝いたします。

作戦参謀に進言しますね。私の名前で」

「わかってるじゃない。私は今回は出しゃばらないわよ」


 この細目士官は表情が読み取りづらいから嫌いだ。

だがグレイン少将が信頼しているだけあって優秀なのは確かだ。


 港にはパールバディアからの援軍の船が到着し始めた。

そろそろ我が軍も行動に出るだろう。


 港から司令部に行く道すがら服屋を見つけた。

ほとんどの店は閉まっていたがここは開いている。


「店主はいる?」

「いらっしゃいませ。なにかお探しですか?」

出てきたのは若い女の店主だった。

ここは女物の服を中心に売っているらしい。


「動きやすくてお洒落な格好ないかしら」

「ありますよ。軍人さんはスタイルいいですから何でも似合うかと」

「セールストークはいいから幾つか見繕って頂戴」


 女店主が持ってきた服の中から黒いタイトのミニスカートと

白いチューブトップを選んだ。

「これを頂くわね。オカネはこれでたりるかしら?」

金貨を一枚渡す。

「充分です。今おつりを持ってきますね」

「いらないわ。とっておいて」

「では次回来店されたときのためにプールしておきますね。

お名前お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「ブランカよ」


 着替えて外に出る。


 一度上空に行き魔道障壁に乗り辺りを見渡す。

「先に街道を東に行ってみようかしらね」


~~エリック~~


 西の町には続々と討伐軍が到着している。

部隊はこの町を死守しつつ東に向けて王都に戻る形で

集落を取り返して行くそうだ。


「ダレス、バリケード作りご苦労さん」

「エリック。お安いご用だったよ」

「腹減ったからなんか食いに行かないか?」

「いいね。炊き出しやってるから役所前に行こうか」


 俺はダレスと共に役所前に行った。

温かいスープの入ったカップと丸いパンを受け取り

仮設してあるテントの下のベンチに座った。


「お、なかなかいける。

魚介のスープは内陸のルド王国じゃ滅多に食えないもんな」

「僕はスフィーアにいる頃は良く食べてたよ」

「そうなんだ。俺は内陸の生まれなんで海すら滅多に見ることはないよ」


 たわいもない話をしていると後ろがざわついている。

「ひゅーっ!オネーサン今から出勤?」

「今日はプライベートなの。あとにして」


 俺はパンにかじりつき背中から聞こえる会話を

聞くともなしに聞いていた。

ダレスが目を見開いている。

「エリック、こっちに来るよ」


 その女は断りもなしに俺の隣に座った。

肩が触れるくらい近い。

「おひさしぶり、勇者さん」

「ん?誰?」

俺は女の顔を見た。


 この顔どこかで見たような・・・・・・

あの時魔王のそばに居た奴か!


「ダレス、動くなよ。おい女、なにしに来た」

「お言葉ね。アンタの左腕を確保しておいたんだから

少しは感謝して欲しいわ。それと今日は戦いに来たんじゃない。

安心して食事を続けて」


「ここで騒ぎを起こしたところであんたなら余裕で逃げられるだろ。

用件を言え。用事が済んだらさっさと帰れ」

「ふふん。たまたまアンタを見かけたから

からかいに寄っただけ」


「偵察するなら堂々と見ていけ。

この規模の軍勢に対抗できる戦力はあるのかな?」


「野暮なこと言わないの。

アンタ良く見るといい男ね。恋人居るの?」

「答える義務はない」

「つれないわね。勇者君になら一回ぐらいやらせてあげてもいいのよ」

「お断りだ。ダレス、この手の女にひっかかるなよ」


 ダレスは女の胸の谷間をガン見していた。

「はっ!、えっと・・・わかったよ!」


「一つだけ情報あげる。パールバディアから来る魔人軍は

街道を堂々と進んでくると思うわ」

「思う、ってなんだよ」

「私はこの作戦に関わってないのよ。ま、偵察と言うよりも散歩ね」


「魔王には報告するんだろ」

「するわ。でもなにを?

人間の軍は途方もない数で新兵器も掃いて捨てるほどありました、って?。

そんな報告は意味がないわね」


 女は俺の飲みかけのスープを勝手に飲んだ。

「まあまあね。今じゃ魔人の国の方が美味しい物いっぱいあるかもね」


「・・・・・アケミか」

「そう、良く知ってるわね。

あのお姫様は魔人の国の発展に多大なる貢献をしてくれた。

もうルド王国には帰れないわよ」


「いや、連れて帰る。魔人の国まで攻め入ってな」

「そういう話じゃないのよ。

魔人に与した人間を人間は許すのかしら?」

「・・・・・・・・」


「アケミ姫はあなたの従者だったんでしょ?

特別な感情があっても不思議じゃない。

けど彼女を知らない一般市民から見たら単なる裏切り者ね」


「アケミは元気なんだな?」

「元気いっぱいよ。野球とか言う球技の普及に夢中だわ」

「なにやってんだあいつは」

「私は興味ないけどね。

さてそろそろ行くわ。最後になんか聞くことある?」


「魔王はここに来るのか?」

「わかんない。魔王様は気まぐれなのよ。

私達は右往左往しながらついて行くだけね」


 女が立ち上がり数歩歩いた所で振り返った。

「また会いましょ」


 女は自分で開いた空間に消えていった。



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