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4-5 ガウンムア奪還作戦 その5 軍の再編


~~ダレス・コフロイ~~


 魔道トンネルを抜けるとそこはガウンムア西部の草原だった。

部隊をさらに小分けし各町の防衛戦に行かせるためエリックは

あちこち飛び回り忙しそうだった。


「エリック、僕はなにをすればいいの?」

「しばらく待機だ。あ、ちょっと待ってて」


 エリックが一人の士官を捕まえてなにか聞いてる。

「ダレス、主要な街道を封鎖するためにバリケードを築いているそうだ。

手伝ってあげてくれないか?」

「オッケー!」


 まずは工兵隊の隊長にプランを聞いた。

切り出した木材の運搬に難儀してるみたいだった。

木を切り出している現場に行き丸太を担いで指定されたポイントに運ぶ。

小一時間繰り返してようやく資材が行き渡った。


「ふぅ、いい汗かいちゃったな」

役所前の炊き出しに行ってみた。

そこで水を貰い一息つくと広場の隅の芝生に丸くなって寝ている

金色の動物を発見。

伝説のゴールデンウルフ?

まさか。

こんな町中でゴールデンウルフが寝ているはずがない。


 近寄ってじっと見ていると一人の女の子に声を掛けられた。

「なに?マキシーになんか用事?」

「はい?マキシーって誰?」


 女の子は黙って寝ている動物を指さした。

「まさかゴールデンウルフじゃないよね?」

「うふふ、そのまさかよ」

にっこり笑った女の子は経緯を話してくれた。


「そうだったんだ。凄いなあ。

あ、僕はダレス。南の開拓村に住んでたんだ。

元はスフィーアの難民だよ。よろしくね!」

「ダレスね。私はラーチャ。

こっちがマキシー。よろしくね。

ダレスはなぜここに?」


「僕は勇者のパーティの一員なんだ。

エリックと一緒に魔王を倒すんだよ」

「そっちの方が凄いわね」

「凄いのはエリックだよ。僕は単なる力持ちなだけ。

さて、バリケード作りを手伝わなきゃ。また会える?」

「もちろん。ここか冒険者ギルドにいるわ」


 金色の狼を連れている女の子ラーチャ。


 ルドアニアの女の子達は都会のセンスにあふれていて

皆キラキラ光り輝いて見えた。

ラーチャは良い意味で素朴な田舎の女の子だったので

気後れせずに普通に会話ができた。

絶対また会いに行こう。


~~クレイグ准将~~


「閣下!王都への第一陣はほとんど生還できませんでした!」

「ふむ。市内の状況は?」

「一般市民はほとんど避難しており

市民らしき格好をしている者は全員魔道銃を抱えた

レジスタンスであります」


「なるほど。ではここはさっさと放棄しよう。

練兵場の西側も討伐軍が回り込んでくるぞ。

全員さらに西にある郊外の訓練場に移動する」


 思った以上に敵の戦力は侮れない。

魔道銃に対する有効な策はいまだに見いだせないでいる。

試行錯誤して似たような物の試作を命じたことがあったが

上手くいってない。

 

 石弾を生成する固定化は出来るのだが

均一なサイズの石弾を続けて生成することが出来ないのだ。


「今ここで悩んでも仕方がないことだな」

部隊は移動を開始している。

私もそろそろ行くか。


~~アレックス~~


「部隊の配置は?」

「完了しました」

「では突撃せよ」


 四方から練兵場を囲んだ討伐軍は一斉に壁を破壊し始めた。

だが中は既にもぬけの殻だった。


「やはりな。クレイグはさらに西に移動し

パールバディアから来た部隊と合流するつもりだろう。

王都の防衛に3千人残す。

残りは西に向かって進軍開始!」


~~ラスケイル~~


 西部への魔道銃のデリバリーは討伐軍の中佐が請け負ってくれた。

既に大部隊が移動している。


 王都より東においてはすでにレジスタンスの仕事は

完了している。

王都のレジスタンスをまとめていた私の元上司である

クーパー元少佐を探して指示を仰いだ。


「ラスケイル君、ご苦労だった。

だがまだ終わっていないぞ。

レジスタンスに参加している元軍人を集めて部隊を編成する。

参加したい一般市民には伍長以下の階級を与えて部隊に加えるつもりだ。

ラスケイル大尉。我々は階級を取り戻す」


「クーパー少佐。感無量であります」

「感激しているところ悪いが早速人選を行い部隊を再編したい。

リチエルド国王の要請だ。我が国を取り戻すのに

他国の軍に頼りっぱなしと言うのはしまりのない話だからな」


 少佐と共に王城広場に向かう。

最初の侵攻を生き残った軍人はわずかだ。

今広場に集まっている元軍人は100人にも満たない。


 リチエルド国王が演説を始めた。

「ルド王国主導の魔王討伐軍は安全保障条約を履行し我々の

国を救ってくれた。

我々も盟約を履行せねばならない!

諸君、今までよくぞ耐えてくれた。

だがもう我慢することはない。

ガウンムアの将兵よ、男達よ!

勝利は目前だ!

思う存分暴れ回るが良い!

王都レジスタンス組織はただいまを持って解散する。

同時にガウンムア国軍の再編をここに宣言する!」


「クーパー少佐。忙しくなりますね」

「そうだ、やることは山ほどある。

が、当面の優先事項は魔人をガウンムアから追い出すことだ」


 さて、西部に行ったジミーとルージィはどうなったか。


~~ジミーとルージィ~~


「ようジミー、なに食ってるんだ?」

「ルージィ、無事だったか。これは牛串だ」


 ジミーとルージィは西部最大の町の炊き出しの前で

再会した。


「タダの肉とは思えない香りがするんだが」

「どうやらショーユとかいう調味料が使われているらしい。

パールバディアで開発されたそうだ」

「どれ、俺も食ってみるか。すまんが俺にも一本頼む。

で、首尾はどうだい?」


 ジミーはモグモグとクチを動かし嚥下してからしゃべり始めた。

「西部にはまだ中央ほどの魔道銃は行き渡ってなかっただろ。

だが討伐軍が人数以上の武器や食料を持ってきたので一気に解決した」


「ルド王国様々だな。当面俺達の仕事はなにになるんだ?」

「ああ、王都では国王がレジスタンス組織の解散を命じたよ」


「まだ気が早いじゃないのか?」

「話は最後まで聞け。軍が再編される」


「まじか。じゃあジミーにため口聞けなくなるな。

俺は少尉だったからな」

「以前はな。だが今回の再編で昇進するだろうよ」


 ルージィの分の牛串が届いた。

「どれどれ。うん・・・これは・・・・旨いな!」

「だろ?まだ俺達が食ってない旨い物が世の中にはたくさん

あるんだろうな。戦争が終わるまで死ねないな」


「だな。お互い生き残ろうや」

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