4-1 ガウンムア奪還作戦 その1 王城奪還
新章突入、そして最終決戦へ。
~~ガウンムア王城~~
「リチエルド国王、王城から魔人は一掃しました。
さらに勇者のパーティに所属する賢者アリア様が
結界を施してくれたので魔石持ちは王城に侵入できません」
ガウンムアの国王リチエルドは執務室で部下の報告を受けた。
「予定通りだな。各都市の状況は?」
「王都とほぼ同時に作戦が開始された模様です。
進行状況はまだ情報が入ってきてません」
「わかった。情報が入り次第知らせてくれ」
「はっ!」
奪還作戦は真夜中過ぎに始まった。
寝ている間に奇襲された魔人の軍は統率が取れず
各個撃破で対応せざるを得なかった。
国王の『影』ゴメスは情報を集めるために再び
市街に足を踏み入れる。
王城近辺は制圧が完了し討伐軍の陣も敷設されていた。
市街地周辺ではまだ散発的な戦闘が行われていたが
魔道銃部隊が四方八方から魔人をねらい打ちしている。
王城を中心とした市街を囲む城壁の内側は間もなく安全が
確保されるだろう。
各都市に潜み情報伝達の役割を担うゴメスの部下達も
各地の情報を持ち帰り始めた。
「東部港湾都市は制圧完了。海岸沿いも魔人は残っていません」
「南部は各町村に常駐していた魔人をすべて排除しました」
「ご苦労。後は王都よりも西だな」
西側地域は魔人の国からの街道があるため魔人共は
本国からの補給がしやすい。
ここからは一気に事が運ぶことはないだろう。
途中経過を再びリチエルド国王に報告。
西側の状況を探るように命じられた。
「さて、クレイグは王都の官舎から逃げられたみたいだな。
おそらく練兵場に陣を敷いているだろう。
行ってみるか」
~~勇者エリック~~
あらかじめ調べておいた王城前広場に空間トンネルを
繋ぎ討伐軍の部隊を送り込む。
まずは王城奪還だ。
同時に周辺の主要都市にもどんどんトンネルを開き
続々と部隊を移動させる。
俺とギルバートとダレスは王城の壁を乗り越え右往左往する
魔人共を蹴散らしながら王城内を目指す。
ギルバートは左腕につけた小さな盾を駆使し魔人の攻撃を
しのぎ隙を突いて銃を連射。
接近してきた敵はドワーフ製の日本刀で斬りつけている。
魔法が使えず特殊なスキルもないギルバートが魔人と
対等に渡り合ってる様は一般の兵士達を鼓舞する好材料となっていた。
ダレスが岩塊を拾い上げ魔人に向かって投げた。
よける間もなく魔人はその身体を飛散させた。
飛び散る肉片が周囲の壁に付着する。
「ダレス、ギルバート!今ので最後だ。
アリアが結界を張るから俺たちは一度王城の外に出る!」
俺達は王城の外に出る。既に周辺は制圧されていた。
魔道トンネルは効力が長くなり以前より一度に移動させられる
人数は格段に増えている。
既にツイーネ側に待機していた部隊のほとんどが移動済みだった。
後は補給の部隊が船で到着するのを待つだけである。
「クレイグはどこにいるんだ?」
ガウンムアの士官の一人が答えた。
「はい!練兵場から西はまだ制圧が完了してません。
おそらく練兵場に付属している官舎に陣を敷いているのかと」
「ありがとう少佐殿」
ギルバートが近寄って来た。
「エリック、俺達も練兵場に向かうか?」
「いや、俺達の出番は緒戦だけの予定だ。
クレイグは殿下の部隊で討たないと。
俺は一度ツイーネに戻って殿下を連れてくる。
それまでこの陣を守っていて欲しい」
「わかった」
空中で数度空を繋ぎツイーネ海岸に降り立つ。
東の空が白んできた。
もうすぐ夜が明ける。
先週はこの海岸でみんなで海水浴を楽しんだ。
あまり波が高くない遠浅のこの海岸は海水浴の人気スポットだ。
女の子達はセシリアが用意した水着を着てはしゃいでいたっけ。
グラハムの奥さんが用意してくれたお弁当は美味しかった。
グラハムも海パンに着替えてダレスとギルバートの
割れた腹筋自慢に加わっていた。
まさか殿下が一日だけ休暇を取って参加するとは思わなかった。
水着を着たクロエがかいがいしく殿下の世話を焼いていたのが
微笑ましかったな。
殿下もまんざらじゃなかった様子だし。
頑張れクロエ。
先週のことなのに遠い昔のように感じる。
ツイーネ側の拠点を歩いて目指した。
居残り部隊が歩哨に立っている門を抜け司令部を目指す。
情報将校が教えてくれた。
「勇者殿。殿下は王都を出立されました。
今こちらに向かっているそうです」
「あ、そうなの?俺が迎えに行くもんだと思っていた」
「老師様とカミーラ様が手分けして要人を運ぶそうです」
「それは助かる。情報ありがとう」
俺は司令部の仮眠室で寝ることにした。
「殿下達が到着したら起こしてね」
「了解しました!」
~~ラスケイル~~
予定通り真夜中過ぎにツイーネから援軍が到着した。
そして作戦開始。
まずは魔人の詰め所を襲撃。
東部方面軍駐屯地と言われてはいるが軍人は警察組織も兼ねている
ので市街地や漁港の巡回パトロール以外することはない。
すなわちほぼ無警戒だった。
町の井戸端会議情報網からの連絡で娼婦館に泊まっている
魔人が数名いたくらいでほとんどは宿舎で寝ていた。
夜明け前に制圧は完了した。
レジスタンスの支部長が駆け寄ってきた。
「ラスケイル大尉!予定通りだな」
「大尉は余計だよ。支部長もお疲れだった」
「国を取り返したら国軍は再編される。
そうなったら君も階級を取り戻すだろう。
今のうちになれておかないとな。
いや、昇進して佐官になるのは間違いないか」
「いくらなんでも気が早すぎるよ」
「まあこれくらいの軽口は許してくれ。
東部はもともと重要視されてなかったし討伐軍も
続々と駆けつけている。問題はないだろう」
「あると言えばある。
魔道銃の受け渡しは東部で行われていたので
中央から西部に掛けてはまだ行き渡っている数が少ないんだ。
何とかして届けないと」
「ああ、それなら王城の制圧に駆けつけた討伐軍が
届けてくれてるんじゃないかな」
「だといいが。俺はもうここですることがない。
王城に行って指示を仰ぎ西部に向かう部隊に加勢するよ」
「わかった。出来れば余っている銃も持てるだけ持って行ってくれ」
「そうさせてもらう。じゃあ東部は任せたぞ」
「任された!武運を祈る!」
担げるだけ魔道銃を担ぎ空を繋いで王城を目指した。
夜はすでに明け切っている。
王城前広場には討伐軍の神賀敷設されテントが立ち並んでいた。
そこでギルバートを発見。
「ギルバート少佐殿!ラスケイルです!」
「おお、ラスケイル大尉。無事だと言うことは
東部の制圧は完了だな?」
「ええ、おかげさまでスムースに行きました。
余った銃を西部に届けられたらと思って持って参りました」
「そうか、では補給部隊に案内しよう」
道すがら戦況を聞いてみる。
「練兵場に魔人軍の主部隊がいる。
そこより西側はまだ制圧が完了していないんだ」
「空部隊は行ってないんですか?」
「行っているが誰も帰って来ないので今は戦線が膠着している」
西側はジミーとルージィが担当している。
「そうか、あの二人か。無事だといいが今はなにもわからん」
「ええ。国王の許可が出れば偵察に行ってみたいですね」
「うむ。こちらからもアレックス殿下に進言してみる。
お互いがんばろうや」
補給部隊に銃を預けて俺は王城に指示を仰ぎに行った。