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3-34 それぞれのXデイ前夜 その3 グラハムの野望


~~エリック~~


 殿下のお供でツイーネに行ってきた。

なかなかの強行日程だったので疲れた。

が、殿下は帰ってからすぐに精力的に働き出した。


「殿下、休むのも仕事のウチですよ。

今夜は早めに切り上げて皆で夕食をとりましょう」

「わかったエリック。夕食には間に合うように帰ってこよう」


 もうすぐクレイグのクビを取りに行けると思うと

気がはやるのは理解できる。

だが英気を養う事も重要だ。


 俺は先に館に帰る事にした。

帰ってみるとアリアはなにかを制作中とのことで出掛ける所だった。

「ちょっとドワーフの工房に行ってきますね。

夕食までには帰ってきまーす」

「はいよ、いってらっしゃい」


 セシリアもいるみたいだな。

部屋をノックする。

「エリック、お帰りなさい。殿下は?」

「城で仕事。夕飯までには帰って来るってさ」

「そう・・・・」

「ん?なんかあったか?」

「え?いやー夕飯なにかなって。えへへ」

「なんだよ小腹すいてんのか?実は俺も。

厨房でなんか貰おうぜ」


 セシリアと厨房に顔出すとメイドさんがクッキーを

焼いていたところだった。

少し分けて貰い食堂に移動。


「皆が集まった時に改めて言うけどそろそろガウンムア奪還作戦が始まる。

俺たちもツイーネの海岸に待機しなきゃならない。

いろいろ準備しておいてくれ」

「わかったわ。私だけじゃなくて聖女の治癒部隊にも命令が下るわね」

「ああ、その時は俺がまとめて移動させるよ」

「うん。明日教会に行ったら人選するわ」


「頼むよ。それからツイーネとガウンムアとの海峡沿いは暑いぞ。

赤道に近いからな。夏服ってみんな持ってるの?」

「そうね、用意したほうがいいわね」

「水着もな」

「はい?」


「地元民が海水浴を楽しむ海岸がある。

それに俺たちは極秘裏にツイーネ入りするから

平民のふりをしなきゃならないのだよ」

「まあ大変。平民のふりをしなきゃならないのね。

じゃあビキニ着て海に行くくらいの事はしなきゃね」


「さすがセシリア、そのとおりだ。

ところでみんな水着なんて持ってるの?」

「私はウーファ出身よ。真夏は皆海で泳いでたわ。

水着の種類も豊富だったから一度ウーファに連れて行って。

両親の墓参りもしたいし」

「おう、じゃあ明日の午後ウーファで買い物だな」


 結局セシリアの両親は行方不明から死亡に扱いが変わった。

ウーファの教会の敷地には墓石を建てて貰っている。


 アリアと殿下が帰ってきた。

夕食の席でガウンムア奪還作戦が始まることが告げられる。


 ギルバートが俺に質問してきた。

「エリック、戦闘時に俺は具体的には何をすればいいんだ?」

「俺の本命はあくまで魔王。ギルバートやダレスには

取り巻き連中を屠って欲しい」

「わかった。ザコを片付ければいいんだな」

「うん。基本的には殿下の討伐軍も目的は同じだけど

個人で動けるギルバートの方が機動力はあると思う。

自分の判断で動いて問題ないよ。


ダレスは魔王の動きを牽制して欲しい。

もちろん身の危険を感じたときは逃げるように」


 ダレスが元気よく返事した。

「了解だよ!剛力のおかげでダメージにも強いし

エリックも僕を気にしないでバンバン石ぶつけちゃってね!」

「お、おう」


 殿下が言う。

「エリック。大部隊を一気にガウンムアの王都に送り込める

ルートの確保も頼む」

「わかりました。王城近辺もそれとなくスパイしてきますね。

それからアリアとセシリアは一緒に行動してくれ。

やばい時はアリアが張った結界内で様子を見るようにね」

「はい、私はいつでも結界を張れます。

セシリアさんはお任せください」


「セシリアは自分の判断で怪我人の治癒に当たってくれ」

「ええ、そこはいつも通りね。

聖女隊はどうするの?」


 殿下が答えた、

「船で渡ってくる部隊と一緒に上陸して

基本的には陣に作った救護室に待機して貰う。

戦線が拡大したら部隊を分けよう」


 皆食事が終わりお茶を飲み始めている。

「そうそう、ツイーネの海岸で待機するときは

平民に偽装するからね。使用人もいないから家事はみんなで

分担するよ」


 グラハムが挙手している。

殿下が黙って指をさした。

「殿下、私めはどのように」

「グラハムは王城に戻って母上の補佐をしてくれるか」

「それは既に他の者がやっております」

「・・・・・どうしたいんだね?」

「ツイーネについて行っては駄目でしょうか?」

「平民に偽装するワケだし執事がいるのはおかしいだろうな」

「近所に家を借りて普段は周囲を警戒します。

私の妻と共に参りますので家事の類は私共夫婦にお任せを」


「使用人なしの方向がいいんだよな?エリック」

「偽装するなら徹底した方がいいかと思います。

ですが俺もスパイ活動しなきゃならないし家を離れることも多い。

グラハム夫妻なら護衛も含めて安心して任せられますね」


「じゃあそうするか」

殿下の許可が出た。


 グラハムが何も企んでないワケない。

チラチラと俺の方を見ながら殿下に進言するあたり

いやらしいことこの上ないのだが弱味を握られている以上

協力しないわけににはいかないし。

おそらく殿下がらみで何か思うところがあったのだろう。

ここは何も言わずに黙って見ていることにした。


 次の日の午後はセシリアとウーファに行った。

教会に寄りお墓参りしてから買い物に行く。


「随分買い込んだな」

「ええ、私とアリアとクロエの水着を買ったわ」

「はあ?クロエも来るの?」

「聖女は全員参加よ。クロエは先乗りで私達と行くことになったの」

「なぜ?」

「さあ?四人いっぺんに移動すると目立つからかな。

とにかくグラハムさんがやけに推してくるので」

「ああ、そういう事ね」

「そういう事。私としてもクロエと殿下にはそうなって欲しいし」

 

 グラハムも直球で勝負してきたな。

「実はグラハムに俺たちの事はばれてる」

「うわぁ、もしかしてエリックも脅迫されたの?」

「『も』?」

「とにかくあのすっとぼけたオッサンは敵に廻さない方がいいわね。

なにきょろきょろしてんの」

「いや、その辺にグラハムがいたりして」

「怖いこと言わないでよ」

「はは、そろそろ帰ろうか」


 セシリアが荷物を持つ俺の袖を掴んできた。

「その前にちょっと私の実家に寄って」

「いいけど。忘れ物?」

「・・・・・鈍感」

「喜んでお供します」

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