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3-31 アリアのお仕事


 教会での暮らしは楽しかった。

カミーラさんはあまりおしゃべりではなかったけど

腕の立つ用心棒だ。

お礼に魔力を集めやすくするペンダントをプレゼント。


「アリアさん、ありがとう。これ凄いわね」

「どういたしまして。

大賢者サミュエル様ならもっと凄いのを作れるんだけど」


 セシリアさんとカミーラさんと私の三人での生活は

まずは都会の生活に慣れるのが主な目的だったので一ヶ月程度で終了した。

その後すぐに勇者のパーティが借りる館に引っ越しをした。


 ダレスは剛力の持ち主。

普段は力を制御して生活していると言ってたので

剛力を押さえるアイテムを作った。


「アリアさんありがとう。

このブレスレッドを付けておけばコップを握りつぶす事もなくなるよ」

「これで女の子にも遠慮無くお近づきになれるわよ」

「でへへへ。それ気になってたんだ。

剛力でへし折っちゃったら大変だもんね」

「うん。で、イイコは見つかったの?」

「まだでーす」

「そこは魔法ではいかんともしがたいので自力でファイト!」


 そして前から気になっていたアイテムがある。

勇者が身につけているサミュエル様が作ったペンダントだ。

一度見せて貰ったが術式自体はそんなに複雑ではない。

しかし魔素を集める効率が桁違いなのだ。

しかも『勇者の波長』を見極めた専用設計。

こんな事私にはできない。

1000年前の勇者と当代の勇者エリックが同じ波長なのも驚きだが。


~~~~~~


 私は今ニュー・リンクスの新練兵場に来ている。

エリック、カミーラさんとロウ老師が一緒だ。


 どうやら細かい魔力制御の訓練中らしい。

カミーラさんは火魔法を駆使して見事なファイァーバード

を作った。

「凄い、羽ばたいて飛んでいる」

「アリアさんがくれたアイテムのおかげね」

「よっしゃ、次は俺だな」


 エリックは地面に右手を当て魔力を解き放った。

すると目の前の地面がもこもこと盛り上がり身長5メートル程度の

一体のドロ人形が生成される。


 胴体も頭も四角い不格好なゴーレムだったが

片足で立ち上がり変なポーズを取っていた。

「なんです?この変な格好は」

「これは『シェー』だ」


 めっさドヤ顔だがまったく意味がわからない。

凍り付いた空気を察したがあえて無視したエリックは新たに生成した

岩石ボールをゴーレムに持たせてる。

「もう一体作るよ」


 二体目のゴーレムはなぜか丸太を持って構えている。

何をさせる気だろうか?


 ゴーレムAが振りかぶって岩石ボールを投げた。

ゴーレムBは目にもとまらない速さで投げられた岩石ボールを

丸太でジャストミート。

飛ばされたボールは大きな放物線を描き森の奥へと消えていった。

ゴーレムAは膝と両手を地面につき四つん這いの格好をしている。

その周りをゴーレムBがガッツポーズで一周。


 ロウ老師が困ったような顔をしながら批評。

「う、うむ。一連の動きの意味がわからんかったが

だいぶ細かい制御が出来るようになったの。

しかも二体同時とは」

「さすが老師様。9回裏でサヨナラホームランを打たれる高校球児の

悲哀を理解できるとは」

「何を言ってるのかわからんが今後も精進したまえ」


 私はゴーレムの動きよりもエリックが集める魔素の

流れに注意して観察をしていた。

魔素はどこにでもある。

地形や地域によって濃い薄いはあるが。

生活魔法などの小規模な魔法は体内に貯まる分でなんとかなるのだが

高度な魔法使いは大気中を漂う魔素を集めて大規模な魔法を発動させる。


 カミーラさんはお手本通りの綺麗な魔素の流れを作り

火の鳥を生成し見事に制御した。


 だがエリックは違う。

地面から強引に魔素を引き出しているように見えた。

地の底から自然に這い昇ってくる魔素を集めるだけでなく

大地から自由にしかも無限に引き出せる能力。

こんなのは見たことがない。

おそらく本人も気がついてないだろう。


「エリック、あなたは扱える魔素の量が桁違いね」

「以前は魔力切れをよく起こしていたけどサミュエル様から貰った

アイテムを身に付けてからはいくらでも沸いて来る感じだね」


「さすが大賢者様よね。だったらエリック、もっと色々出来るはずよ」

「例えば?」

「『鎧』をイメージできる?それを魔素で作って自分の身体に

着せてみて」


「む、魔道障壁に形を与えるのか。

ちょっと難しいな。こんな感じかな?」


 魔素の流れを見てみる。

どうやら首から下の胴体を覆う四角い箱をイメージしたらしい。

「カミーラさん。エリックの胴体を狙って石弾を射出してみて。

出来うる限り大きいのを最大出力で」

「え、いいの?いいんだ。はいっ!」

「どわぁあああああ!」


 エリックが悲鳴と共に吹き飛ぶ。

広い練兵場の隅まで飛ばされたがすぐにくうを開いて帰ってきた。

「殺すつもりか!」

「そのつもり」

冷たく言い放つカミーラさん。かっこいい。


「どうだった?エリック」

「障壁ごと飛ばされたけど身体にダメージはないな」

「おそらくエリックがそうイメージしたからそうなったの」

「なるほど。以前老師が言ってたイメージ次第なのか」

「じゃあ次ね。ちょっと耳貸して。ごにょごにょ」

「わかったやってみる」


「じゃあカミーラさん。次は拳大くらいの水玉を

軽くエリックに投げつけて」

「え、いいの?いいんだ。はいっ!きゃぁ!」


 カミーラさんが投げたウォーターボールは

カミーラさん本人の顔面に当たった。 


「解説しまーす。今のはエリックが開けた空間の出口を

カミーラさんの顔の前に開けて貰っただけ」

「それで水魔法を指示したのね。

石弾だったら首が吹っ飛んでいるところだったわ」


「自分が入る空間なら細かい制御は必要ないけど

今みたいな動く物、外から来る物理的な脅威に対して

瞬時に出口まで決めてしまうのは並の魔法使いには無理ね」


「ありがとうアリア。いろいろ考えるヒントになったよ。

ほれカミーラ、タオル」

「ありがと」


「あ、そうだ、エリック。ちょっとその剣貸してくれる?」

「いいぞ。ほれ」


『聞こえますよね?ツルギさんでしたっけ』

『聞こえてるよ賢者様』

『今ちょっと機能を付け足しますね。えいっ!』

『ん?』

『あなたが宿っている剣に魔素を吸収しやすくする機能を付加しました

以前よりは疲れなくなってくると思いますよ』

『それは助かる。今のところ体感的には解らないが』

『そのうちわかりますよ』


「ありがとなアリア、いや賢者様」

「いいのよエリック。私に出来ることってサポートが主ですもの

物理魔法は苦手なので戦闘向きじゃないんです」


 訓練を終えて館に戻った。

夕食後の雑談タイムに殿下のアイテムを見せてもっらた。

「殿下、首にぶら下げてる認識票ですが一緒に付いてる

小さなメダルはなんですか?」


「これは武功を立てた者に与える勲章のオマケだよ。

その者の家族の人数分が記念として配られていたのだが

クレイグが仕掛けた精神干渉魔法を防ぐ効力があったのだ。

もう必要ないとは思うのだが母上が持っておけと言うのでな」

「ちょっと触っていいですか?」


 綺麗なミスリル製だがなにか混ぜ物がしてある。

それがなにかわからない。


「伝説の龍の魔石の粉が練り込まれているそうだ」

「ああ、それで。仕組みはわかりませんが納得はできます」

「龍など伝説の生物だし本当に存在していたかどうかも疑わしいのだが」

「本当にいたみたいですよ。サミュエル様の話では。

おそらくこのメダルに使われてる魔石の持ち主は

精神干渉魔法を無効にする能力があったんだと思います」


 メダル自体は完成された魔道具と言っていい。

下手にいじらない方が良いだろう。


 殿下は絶対に死んではならない人。

持っている何かに機能を付加させようと思っていたのだが

身を守るアイテムは気合いを入れて作らなければ、と思った。


 どんなのがいいかな。

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