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3-22 勇者の新しい仲間達 その3 刀



 空き家の件を総務部に任せて数日後。

良い物件があったらしいのでダレスとセシリア、アリア

を誘って見に行った。


 総務部の役人が案内してくれた。

「こちらですね」

「おお、大豪邸だ」

門があり衛兵の詰め所がある。

都市部なので庭はそんなに広くないが

ちょっとした庭園と言っていい規模だ。

その庭の向こうに三階建ての屋敷がデンと構えている。


「ここってなんで空き家なの?」

「元々はオリビア家が使っていたのですが

世代交代してからは『こんな豪華な拠点はいらん』

と言うことで売りに出したんですね」


「なるほど。でも不動産屋じゃなくて総務が預かってるんだ」

「空き家と言っても維持管理にお金がかかるんです。

豪華すぎて売れそうもない貴族の物件は不動産屋も嫌がるんですね」

「なるほど。それで王城預かりに」

「ええ。今回のように王家が使用することも想定してます」


「ちょっと待って。勇者のパーティで使うはずなんだけど」

「アレックス殿下が借り主なのですんなり申請が通ったんですよ。

それに維持管理費を殿下のポケットマネーから出すことになり

公費も節約できるので我々としても願ったり叶ったりでして」


「うわ、殿下本気だよ」

セシリアが尋ねてきた。

「なに?殿下となにかあったの?」

俺は事情を説明した。

「合宿みたいな雰囲気ね。なんとなくわかる」


 えーちゃんがはしゃいでるな。

『ということはお風呂イベントも』

『えーちゃん。その件はよしなに』

『エリック、まかせておけ!』


「引っ越しは慌てなくてもいいだろう。

アリアも教会で生活全般のことを学んでからのほうがいいし」

セシリアが同意する。

「そうね。でもエリックは先に来るでしょ?」

「うん。殿下とタイミングを合わせるよ。

スポンサーより先には入れないだろう」


 さて次はギルバートか。

練兵場に行くとギルバートが誰かと一緒にいる。

「よう、エリック。殿下から話は聞いたよ。

是非勇者様の部下にしてくれ」

「俺の部下は一人もいないよ。皆仲間だよ」

「そうか。エドのパーティもそうだったもんな。

で、どうなんだ?」

「ギルバートなら大歓迎だよ。よろしくね!

ところでこちらの三人は?」


「今紹介する。ガウンムアから来たラスケイルに

ジミーとルージィだ。魔道銃の訓練に来ている」

「はじめまして勇者エリックです。

よくガウンムアから来られましたね」


 ラスケイルが敬礼して答える。

「お初お目にかかります。

元ガウンムア国軍大尉のラスケイルです。

我々三人ともくう使いですので

国境を越えるのはわけありません」


「なるほど。優秀な軍人の皆さんなんですね。

ここで訓練してると言うことはガウンムアを魔人から

取り返すつもりですか?」

「その通りであります」

「がんばってください。

自分も微力ながら協力させて貰います」


「ところで勇者殿に相談があるのですが」

「なんざんしょ」

「ツイーネの戦闘に魔人軍側に付いた、というより連れて行かれた

ガウンムア国民が少なからずいるんです。多くはテイマーなのですが。

もしかしたら生き残りが居るかもしれないのですが

ルド王国の敵として北の大陸に渡ってきているので

堂々と捜索を要請できないんです」


「強制的に徴用されたわけですもんね。

安全保障会議で提案すればいいと思うのですが言い出しにくい

のは解ります。一肌脱ぎましょう」

「感謝いたします!」

「ウーファやエスタンの守備隊に聞いて

捕虜がいないかどうか調べてみましょう。

ツイーネは現在ルド王国預かりで復興が進んでます。

入国は簡単なはずですしなんなら一緒に行きますか?」


「いえ、訓練が終わったらツイーネ経由でガウンムアに帰還します。

ツイーネ国内はその時に自分たちで捜索してみます」

「ではツイーネ駐留軍にその旨を伝えて便宜を図って貰えるように

殿下に伝えておきますね。それでいいですか?」

「ありがたい。勇者殿にこんな些末な事をお願いしてしまい

恐縮です」

「いえいえ、出来ることはなんでもやりますが

出来ないことは出来ないと言いますから大丈夫ですよ」


 三人は敬礼して練兵場を去っていった。

「あ、そうだ。例の新しい刀なんだけど。

そろそろ出来てるかも知れないからドワーフ

の店に行ってみようか?」

「おお、そうだな。

じゃ帰り支度するからちょっと待っててくれ」


 ギルバートが自分の銃をメンテナンスに出し着替える間待った。

「待たせたな」

「じゃあ行こうか」


 ドワーフの店に行くと試作品が出来上がっていた。

『えーちゃん、どう?』

『柄は本物に近づける工夫は必要ないだろうね

というか無理でしょ。鮫肌手にはいるかな?』

『うーん、確かに』

『柄糸の装飾も厳しいだろうし、

そこはグリップできれば良しとしよう。

なかごと目釘は良くできてるね』


 えーちゃんの意見をそのままドワーフに伝える。

グリップ代わりに麻の紐を巻いて貰った。

「ギルバート、どう?」

「軽いね。それに片刃なんだな。

軽く反っているのも面白い」

「試しに藁を斬ってみてよ」


 店の裏手に移動。

試し切りの藁束を用意して貰う。

「これだけ軽いと不安だな。体重が乗せ難いというか」

「メインウエポンじゃなくてあくまで

補助的な武器って考えたらどうだろ。

ギルバートなら片手で振れるんじゃない?」

「まあ出来るけど致命傷は与えられないな」

「それでいいんだよ。なにも敵をすべて殺す必要はない。

戦闘継続不可能にすればいいでしょ」

「そういう考え方もあるか。どれどれ」


 ギルバートが素振りを始めた。

『さすが剣士。様になってるな』

『えーちゃん、なんかアドヴァイスは?』

『この振り方ならつま先の向きに気をつけるだけで体重乗るよ』

そのままギルバートに伝える。


「こうか?」

びゅっ、という風斬り音が響く。

「ちょっと斬ってみるぞ」

袈裟斬りに藁束を斬る。


「ギルバートすごい。すぱっと切れた」

「何だ今の感触は。ほとんど抵抗感がなかった」

『ロングソードを極めている達人だからこそだね。

素人がいきなり行ける領域ではないよ。

いいもの見させて貰った』


 ギルバートは気に入ったみたいなので、 

ドワーフに細部の改良を頼み二回目の試作に入って貰うことにした。

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