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1-1王子アレックス

主要登場人物の一人アレックスの回想シーンから始まります。

お付き合いの程よろしくお願いいたします。


地図→http://21298.mitemin.net/i243195/

挿絵(By みてみん)


 私の名前はアレックス・ボ・ルドウィン。ルド王国の国王である。

まもなく死ぬ。齢93才、死因は老衰、だと思う。


日を追うごとに微睡む時間が増え、

意識が覚醒する時間が減っていく。

夢とも現とも解らぬ時間に私は過去へと旅をするのだ。


 人生の大半は領地を治める事に費やした。

思い出のほとんどはこの国とともにある。


しかし一番良く思い出すのは長い人生の中の

たった三年の出来事であった。


15才から18才の約三年間、

私は勇者と魔王を倒すべく世界を駆けめぐった。


 旅の課程は「冒険記」と題された本に書き記した。

私の記憶の中にある勇者は雄々しく凛々しくかつ逞しく、

決してあきらめない不屈の魂を持つ男だ。


 彼の活躍ぶりは私の著書『冒険記』

にまとめてある。


「冒険記」には記されていないエピソードも話してみよう。

死ぬまでの時間つぶしに付き合ってくだされ。


~~~~~


 時は80年ほど前にさかのぼる。

当時私は13才。王立中央大学に在籍しつつ第二王子としての公務、

主に国王である父と皇太子である兄のサポートをし日々を過ごしていた。


 とは言え、たいしたことはしていない。

父や兄が出向くまでもない催事や会合に出席し、

時には笑顔であるいはしかめっ面で座っていれば良いだけであった。

王族の誰かがいればそれだけで良い集いは結構あるのだ。

 

 事務的な手続きがあればおつきの文官が書類に目を通しあらましを私に伝え、

問題が無ければその場でサインをし、

そうでない場合は城に持ち帰り検討する旨を先方に伝えた。


 要するにサインも出来るお飾り役である。

ある意味気楽で自分としてはこのポジションは結構気に入っていたのだ。


 ある時父である王の執務室に呼ばれた。

週に数度は打ち合わせのため執務室で予定の確認を行っていたので、

その時もたいして身構えもせず執務室を訪れた。


 その日の執務室はいつもと違った雰囲気だった。

いつもなら父と兄、数人の文官が談笑しながら

予定のすりあわせを行うはずである。

しかし今日は、軍関係の数名が同席している。

やや緊張しつつ父の説明を聞いた。


「アレックス、ここ最近魔物の活動が活発になってる噂は聞いてるな?

数も増えてるそうだ。

今までは冒険者ギルドに討伐を依頼してたのだが、

いよいよ追いつかなくなってきた」


「なるほど、それで軍を出動させるのですね?」


「もちろん軍主導で魔物の討伐部隊の編成はする。

しかしそれだけでは根本的な解決にはならないのだ」

「?」

「魔王を倒す」

「!」


 この世界は大きな二つの大陸がある。

北の大陸ローレルシア大陸と南の大陸ガウンドワナ大陸である。

ルド王国はローレルシア大陸の北半分を治める大国だ。


 もっとも緯度の高い北部は高い山脈が連なり

常に雪と氷に覆われる不毛地帯であり人は住んでいない。

人が生活できる限界は北緯45度よりも南になっている。


 首都ルドアニアが位置する北緯35度付近は比較的温暖な気候と言えるだろう。

領土は広いが半分以上は人の手の及ばぬ地域となっている。

が、中部から南部にかけての穀倉地帯は豊かな生産量を誇り、

不作の年があっても慌てる必要の無いほどの食料備蓄は常にある。

全く問題がないわけではないが、おおむね豊かで平和な国であると言えるだろう。


 1000年にも及ぶ歴史を持つルド王国。

何度か王家の交代があったが特に大きな内乱や革命は起きていない。

隣国との戦争もここ50年ほどない。


 父の説明は続く。

「南の大陸ガウンドワナ中央部に位置すると言われる

魔王の居城まで攻め入り魔王を倒す。

口で言うのは簡単だが、克服せねばならぬ様々な問題点がある。


 まず第一に魔王の配下である魔人共の軍団に

対応出来る軍を編成せねばならん。

我が国の軍隊だけでは数が足りない。

各国に協力を仰ぎ連合軍を作り上げねばなるまい。

もう一つの問題。魔王はとてつもなく強力である。

人間がいくら束になっても 勝ち目は薄いと認めざるを得ない」


 少しの間を置き言葉をつなぐ。


「アレックスよ、お前が魔王討伐軍の総大将となり各国との連係をはかれ。

そして魔王倒せると言われる伝説の勇者を探すのだ」


 なぜ私が指名されたのか理由は聞かなくてもわかる。

王が居城を離れるワケにはいかない。

そして跡継ぎである兄を死地に赴かせる事もできないのだ。


 王族以外に連合軍編成事業のトップを任せるわけにもいかない。

自分たちは安全な場所に居たまま、命をかけて魔王を倒せと要請しても

どの国も言う事なんて聞かないだろう。

ポジション的に私以外の適任は居ないと私自身も納得できる。


「アレックスよ、成人の儀を迎えるまであと2年ある。

この間に軍に関することはすべて学べ。

大学は中退し士官学校に編入しろ。そしてその間に勇者を探すのだ」


「士官学校に編入し学ぶのはまだ理解できますが、

勇者を探せとは・・・いったいどうやって?」

「うむ。それもきちんと説明する。」


 人払いされた執務室に残ったのは父と兄、私の三人だった。

そこで私は王国の知られざる歴史、秘密の一部を知ることになる。

不定期連載ですが出来れば週二回は投稿したいと思ってます。

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