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第六話 魔法 そのに
明日も0時に投稿予定です。
(可愛い声だなぁ)
ぼけーっとするアグ。そんな様子をみたマーガレットは心配して。
「アグ、大丈夫?」
と声をかけるも上の空。透き通るように青い瞳をしたアグの目からは、川が流れているように見える。
「ご、ごめんね?怖かったよね…」
今世の母が声を震わせているのに気づき、アグは正気に戻るも。
「あう、あうあうあー、あ!?」
再び呆然とするアグ。それに気づいたマーガレットは彼の視線の先を辿る。
それは、倒れかけた本棚を支える彼女の左手…ではなく、右手の先にあるひとりでに浮いた本へと向けられていた。
「ああ!アグはこれ見るの初めてか!」
先ほどとは一転し、生き生きとした様子で本棚と本をもとの位置に戻す怪力曲芸女ことマーガレット。
「これが絵本にも出てきた『魔法』よ?」
ドヤ顔で床に残っていた本を、手を使わずに再び持ち上げるマーガレット。変わらず硬直するアグ。
一向に動かない彼を心配した彼女が声をかけようとするも。
「……アg」
「おおおおおおおおぅ!?」
彼女が言うに、その時の彼は、産声より大きな声をあげていたそう。




