第三十九話 生成魔法入門 そのよん
GWですね。GW。皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は元気にお布団でゴロゴロしています。
水の魔法では一向に進歩を見せないアグネウスだが。
「なんでこっちになると出来るんでしゅかね…」
「…なんででしょうね。」
錬金魔法以外の魔法でもなかなかな才能を見せている。
例えば彼が今実行しているもの。
可燃性の物とオーラを擦らせ、摩擦熱で火を起こす魔法。
与えられた木の棒とにらめっこをしている周りとは異なり、彼は余裕で火を灯すことが出来ていた。
「宿を火だるまにするわけにもいかないので、こっちの魔法は全然練習してないんですけどね…」
「まあ人にも得意不得意はありましゅからね。この時期で水の生成が全くできない生徒は初めてもちましたけど…」
「そろそろトラウマになりそうです。」
「…強く生きてくだしゃい。」
「はぁ。」
他にも、地面をほんの少し隆起させたり、摩擦熱を応用し空気中に寒暖差を作ることで風を発生させたりと、類まれな才能を発揮していた。
なお水は。
(いつか必ず習得してやるんだからな…!)
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「アグネウス君は聞くところによると、学校の授業は魔法しか取ってないそうでしゅね。」
「そうです。」
「周りからよく思われていないのはわかっていましゅか?」
アグは周りを見渡し、恨みのこもった視線を受け止めながら、「ええ」と答える。
「そうでしゅか。踏み込むようで申し訳ありましぇんが、将来のことはきちんと考えていましゅか?」
彼としては構わないのだが、この質問はきっと相手の身辺を探る行為として失礼に当たるだろう。
そしてそれは彼女も知っているはずだ。
真意を測るために、アグは視線を彼女へと向ける。
「…いえ、まだはっきりとは決まっていません。」
彼女の表情は真剣そのものだった。
アグネウスを心配してのことだったのだろう。
そう解答を出した彼は彼女の親切心に応えるべく、一切誤魔化さず自分に正直に返す。
「その言い方だと幾つか候補はあるみたいでしゅね。」
「ええ、まあ。」
アグは自分の考えから逃れるようにして、彼とは異なり今もなお練習を続けている同級生たちの方をみる。
けれどそれらがなぜか眩しいような気がして、少し顔を地面へと俯かせる。
不意に頭を優しく叩かれ、何事かと先生を見る。
彼女の視線もまた自分の生徒たちの方へと向いていた。心無しか優しい声音でアグに語りかける。
「まあ、いろいろやってみることでしゅ。もがいてもがいて、そうすればいつかは自分が本当にやりたいと思えるような目標が見つかりましゅよ。」
彼女にとっては教え子を思って放った何気無い一言だったのかもしれない。
だが、彼にとってそれは今の自分の心にグッとくるような言葉であった。
アグがその言葉に頷くだけだったのは、自分の言葉が震える未来を見越してのことだったのだろうか。
ひとつだけ確実なのは、この日からアグは以前にも増して、彼女に多大な尊敬と感謝の念を抱き始めたことである。




