第三十八話 生成魔法入門 そのさん
気づいたら二週間経ってました。
余りにも忙しすぎて…
来週もちょっと更新できるか分からないです。
ミサイルで自宅更地になってるかもしれないし。
魔法とは一体何なのだろうか。
アグには分からない。
なぜこんな現象を魔力とかいう不思議パワーで起こせるのだろう、と常日頃思う。
「「「おー」」」
ぼけーっとしながら彼が今取り組んでいるのは、例の生成魔法、鉱石の錬金である。
バイトや学校に追われながらも、僅かな時間を見つけて練習した成果。
それが彼の目の前にあった。
高温により眩い光を発する鉱石。
「まさかアイツがやるなんて…」
「平民のくせに…」
「くそっ、くそっ!」
彼のことをよく思っていない生徒たちの陰口も聞こえるが、そんなことにも慣れてしまったアグは相も変わらずぼけーっと。
やがて極光は収まり、彼のオーラの手の中にパステルカラーの鉱石が残る。
「キレイ…」
「わたし、あれ欲しいかも…」
「素敵!抱いて!」
アグはまだ若干温かいそれを、オーラから己の手へと持ち換えると、目を細めて突然修練場の天井を仰ぎ見る。
(喜んでいいものか…)
彼がここまでできるようになった理由は先述したとおりだが。
アグはこの魔法を初めて成功したときのことを思い出す。
出せない。
思い出せないのだ。
記憶喪失とか、なにか要因があってのことではない…はずだ。
聖女に不遇な会合を果たしたあの日から一ヶ月強、彼の収入源であるバイトは謎の忙しさを発動させていた。
酔っ払う客、床にぶちまかれたブツ、アグを道具のように扱う宿の旦那。
この『素敵な』毎日が、アグネウスのこころを壊…新しいものへと変えていった。
バイトが終わるとおぼつかない足取りで貸し与えられた自室へと戻り、疲労で朦朧とした意識の中で魔法の鍛錬を行う。
それが一ヶ月。
やっと与えられた休日の一日をまるごと睡眠へ費やし、回復した自我。
いざ魔法の鍛錬へと。
(ふぇ…?)
鉱石の生成を軽々と成し遂げてしまった。
当時の心境は感動というより困惑。
彼はショックからもう一日寝込んだ。
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「アグ君…ここ最近ずっと眠そうにしてると思ったら…急にどうしちゃったんでしゅか?」
眠そう、というか本当に寝ていたのだが。
苦笑混じりに答える。
「あ、あはは…特訓の成果です…」
「しょうなんでしゅか…興味ありましゅねぇ…」
「我が家に代々伝わる門外不出の練習法らしくて…」
「ふうん…内容が気になりましゅけど、それなら仕方が無いでしゅね…ああ残念…」
「…」
無論、大嘘だ。
「で、水のほうはどうなんでしゅか?」
「進捗ないです。」
「そうでしゅか…アグ君にはやはり適正がないのでしょうか…」
アグの他にも数人が鉱石の錬金に成功していて、そのほとんどが水の生成魔法にも、水滴程度なら生成が出来るようになるなど、少なくない変化が出ている。
アグを除いて。
「この段階で全く水を作れないのも変な話でしゅね…どんなに得意でなくても手が湿るくらいは作り出せるはずなんでしゅが…」
「そうですね。」
「まあそのうちできるようになりましゅよ。」
「はぁ、頑張りましゅ…す。」
アグの運命や如何に。




