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第三十七話 死んだ魚の目

好きだった小説が完結して打ちひしがれてました。

終わり男って、それはないでしょう!

という言い訳です。

結局そのまま下宿先へと直帰したアグネウス。



「ついに聞けなかったなぁ」



少女については後ろめたい気持ちが未だ強く、楽な方へと逃げた感じが否めなかった。



「まあまた今度聞けばいいや。」



前世のように、そういっていつまでも手付かずの案件が忘却の彼方へと行ったっきりになってしまうのだろうか。

それは神のみぞ知る。



「そんなことより今は魔法だ魔法!」



件の書店で購入してきた本、『できる!かんたん魔法!』の1ページ目を開く。

書かれている内容は著者からのメッセージであるようだ。



「『魔法とは大昔に魔法の祖がもたらしたもので…』ここらへんは知ってるかな。」



以降も既にアグが知っている魔法のあれこれだったので、あまり頭に入れず流し読みする。



(まあ前書きなんてそんなものか…)



特に目に止まるような内容はなかったのでページをペラペラとめくる。

次の項目に書かれていたのは普及している基本的な魔法と、その発現方法だった。

学校では習わない、あるいはまだ習っていないような技があって、彼はすぐに実践に臨みたくなったのだが。



(流石に宿をジャングルとか火だるまにするわけにはいかないからなぁ…)



練習場所といえば学校の修練場がある。

しかし彼の学年は、まだ入学して日も浅く自己管理に難がある点を鑑みられ、学校から使用許可を与えられていない。

ので。



「あああああめっちゃ魔法使いたいいいいい」



気分は餌の前で『待て』をされたペットのようだった。




ーーーーーーーーーー




「聖女の言ってた女の子…まさかね。」



魔法が駄目となると、次に思い浮かばれるのは必然的に彼女の言葉になる。



「きっと孤児とかそういうのなんだろう、うん。」



アーノルド王国にも孤児がいないわけではない。

どこの豊かな国でも、華々しい人達の裏側に貧しい者達が居るのは同じことだ。

もっとも、この国ではそちらを見つけるほうが困難だが。

そういう者達は大半が貴族に自分を売ったり、運が良ければ教会や孤児院に保護されたりするからだ。


これもこの国の評判がいい理由だったりする。



「というか、なんでたかが女の子一人にここまで気になってんだろう…」



彼は微かに苦笑しつつも、頭の中でその理由を探し始める。

原因は彼の過去にあった。



(そうだ…あの子の目は…まるで昔の俺みたいだ…)



昔というのはアグの前世、雄一が少年だったころだ。

正義感をへし折られ、何事にも無気力になっていた。

当時、何気なく鏡に映った自分を見たのだが、我ながらとても驚いたことを覚えている。


死んだ魚の目。


あの少女の目は完全にそれだった。



(らしくないな…)



そんな目をした彼女でなければ、恐らく彼はここまで気にしなかっただろう。


だからか、彼はなんとなくこの気持ちを大事にしようと思うのだった。

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