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第三十四話 休日

え?23時投稿ですか?またまたー、きっちりその時間に…アレぇ!?

…頑張ります。メイビー。

先のテオとの会話でなにか解決したことが有るかと聞かれれば、きっとアグは肯定の意を示さないだろう。

それでも自らの内に溜め込んだ不安や不満を吐き出すことで多少のストレスは発散出来た。

彼は前世でもその性格上悩み事を自分だけで抱え込むことが多かった。

するとどうだろう、通常なら見えるはずの物事が見えなくなってしまう。

こういったことを身を持って体験している彼は、今回の件を遠慮せずテオへと暴露した訳だ。


しかし、繰り返すようだが、次にそういった事件に巻き込まれた場合の処遇について妙案が浮かんだ訳ではなく。また、直ぐに思いつく訳でもなく。



「はぁ…」



宿の一部屋。

備え付けられたベッドに身体を預け、深いため息を吐くアグ。


あの後、予想通りバイトに遅れた彼だったが、疲れの残る顔を見た、宿の女将のアンナはアグを咎めることなく、むしろ有給を賜与しよしたのであった。


そんなわけでいつものように一時間という短い授業を終え、帰宅した彼は、いつもより長い暇を持て余していた。



「魔力循環はもうしたし…なにすっかなあ。」



これが前世ならきっと彼はその時間をテレビゲームへと費やしていただろうが、不幸といえば不幸、幸いといえば幸いか、この世界にそういった類のものはない。



「そういえば。」



アグはオーラを身に纏う。

普段は忙しく、検証する余地のなかった疑問。



『魔力とは』


一体なんなのか?


本や机を浮かせる程の強度、抗力を持つ。空気中から水分を集めて凝縮し、水を肉眼で捉えられる形にまで発現する。摩擦により熱を、火を起こす。



体から漏れ出した魔力をはっきりとした形で見ることはできない。そして、オーラは光の屈折率に影響を与える。色がついて見えることもあるらしい。


アグはオーラに触れようとするが、既に手に纏ったオーラのせいで触覚が機能しない。

手の部分からオーラを除去しようと試みる。

だが、なぜか出来ない。



「うーん…」



実は、魔力についての研究は進んでいるように見えるが、基本的なところで分かっていないことも多い。



『魔力』とはなんなのか。

元素の一つか?熱を操る力か?

あるいは…。



「…これ以上考えたら世界の支配者から拉致されそうだし、ここまでにしといて外に出掛けるか。」



ちなみにこれは問題の解決を先延ばしにしたことへの後ろめたい気持ちを紛らわす為に考えた口実である。




ーーーーーーーーーー




街へと繰り出した彼。

当てもなくぶらりとした先日とは異なり、今度はしっかり目的地を決めていた。



「ほほー」



アグの目に映る看板にはこう書かれている。


『ショーン書店』


文字通り、その実は書店である。

前世と異なる点といえば、売られている本の種類だろう。



「えーっと、ここら辺かな」



目当ての本があるであろう棚をしらみつぶしに探していく。



「迷う…」



アグの手に持たれていたのは、魔法を題材にした本であった。


『できる!かんたん魔法!』『魔法上達学』


そして彼の懐は両方の本を購入できるほど暖かくない。


「ええいままよ!どちらにしようかな天の神様の言う通り…これだ!」



『できる!かんたん魔法!』と書かれた本をレジ…レジスターはないが…へと持っていく。


アグは後にこの行動を後悔することになる。

もっと悩んでおけば良かった、と。



「いらっしゃいませ…あれ?アグネウスさん?」

「げぇ」



レジを担当していたのは聖女アリス・ワンダーランド、その人であった。

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