第三十三話 相談
虹六にハマってしまった…睡眠時間ががががが
路地裏を抜けて大通りへと戻ったアグ達。
すぐ近くにある喫茶店のようなところへ入り、二人席にそれぞれ腰を下ろす。
テオは届いた飲み物を一口分飲み下し、で、という一言で口火を切り落とす。
「何があったんだ?」
その顔は至って真面目だ。
本当に良いやつだと、アグは彼へ感謝の言葉を心中で漏らしながらも説明を始める。
「実は…」
路地裏で奴隷強盗らしき男たちに出会ったこと、彼らが奴隷を運んでいたこと、それが自分たちと同じ歳程の少女だったこと、彼女を助けなかった事実に罪悪感を覚えること。
それらをポツポツと話す。
テオは彼の説明に相槌を打ちながら最後まで聴き終えると、お手上げといった感じで両手を広げる。
「お前の気持ちは分かったが、俺達がどうこうできる問題じゃないよな…」
「そうだよな…」
分かっていたこととはいえ、顔を俯けてしまうアグ。
「それにしても、よくお前そこまで考えて我慢したな。俺だったら絶対その強盗殴ってるぞ。」
テオはアグの状況判断に好評を下した。
しかし本人は憑き物が取れないといった様子。
「もしかしたらそのほうがいいような気もするけどね…」
「でも、その奴隷って貴族の所有物である可能性が高いんだろう?」
コクリと頷くアグ。
袋の中で縮こまっていた彼女の容姿は、整った顔の多いこの世界でもトップクラスで可憐なものだった。
更に強盗の慌てよう。
衛兵から逃げる為、という理由付にしては少々慌て方が異常であった。
それよりは他のなにかの追っ手から逃れるためと考えたほうがしっくりくる。
つまり彼らは貴族の奴隷を盗難した、その案が有力だ。
「じゃあそれで良かったんじゃねーか?」
「うん…」
「それよりも。」
テオはコップに残っていた液体をグビッと全て飲み干して言う。
「次そういう目にあったときどうするかを考えたほうが建設的なんじゃないか?」
次?とアグは首を傾げる。
彼が当時取った行動は正しいと思う、それに間違いはない。
だからこそ彼の言っている次とは一体、どれのなんのことなのか分からなかった。
「どうせお前のことだからこの方法が完璧だなんて思ってるんだろう?でもお前はそれに罪悪感を拭いきれていない。だったらもっといい方法があるか考えるんだな。」
「…わからないよ、あれ以上にいい方法なんて…」
「だろうな、俺もそう思う。でも、意外に見落としてる手段があるかもしれないぜ?」
(見落としてる方法か…)
テオは背もたれに身体を預けて伸びをする。
「それこそ、俺がさっき言ったように強盗たちをぶん殴ったほうが、後始末は面倒だろうが、お前にとっては納得できる手段かもしれないな。」
「そうかな…」
「まあやってみないとわかんないけどな。」
「そうだな。」
アグは残っていた食べ物を一気に口へと放り込み、咀嚼して嚥下すると、友人にお礼をして立ち上がる。
「テオ、ありがとう。だいぶ気持ちが楽になった。あとでその方法とやらをもう一度考えてみるよ。」
「そうか、それはよかった。またなんかあれば気兼ねなく言ってくれよ。相談くらいは乗るから。」
「うん、そうさせてもらう。本当にありがとう。」
割り勘で料金を払った二人は、喫茶店の前で別れてそれぞれの家路へと就く。
バイトが始まる時間はとうに過ぎていた。
「やばい、女将さんに怒られる!」
灯りで照らされて、しかし暗さが残る道を駆け足で進むアグだった。




