閑話 私の人生
閑話です。
当たり障りのある描写が入ります。
避けていただいても結構です。Maybe
「ォイ!…やく…こべ!」
「…か…てま…よ!」
「…」
暗闇の中、男たちの怒声が聞こえる。
今までと同じ、はっきりとしない意識。
そして、彼女は一切の抵抗を試みなかった。
「…」
ーーーーーーーーーー
私には生みの母親がいた。
なんとなくだけど、それは覚えている。
けど、今は居ない。
何故だっただろうか。
記憶にこびりつくは。
「うっ…いいぞっ!テトラ!」
嘔吐感を覚えながらも男の素股に顔を埋めている私と、激しく動く男性の下で泣き叫ぶ私。
その相手が誰だったかよく覚えてないけど、何回か変わったと思う。
もちろん初めのうちは抵抗した。
けど、相手は寧ろ私の悲鳴を喜んでいるようで、その動きを更に激しいものへと変えていく。
とても痛かった。助けてほしかった。
でも私の声は密室の中で木霊するだけだった。
いつからか、私は身体の感覚を手放す技術と、無心になる技術を身につけた。
何も考えないのはとても楽で、私はその技術を使うことにどんどん依存していった。
それからしばらくのことはよく覚えていない。
「バレないうちに早く行くぞ!」
「分かってますよ!コイツを入れる袋が小さいんですって!」
「あああもう!」
声がする。
私の意識はそう呼ぶには程遠いほど何も感じなくなってしまった。
私を布の中へと詰め込む男の人達が見えた。
「…」
怖そうな人たち。
でも、何もしない。抵抗しない。
面倒くさいや。
ーーーーーーーーーー
私は揺れる。
振動は乱暴なものだけど、なぜか、ゆりかごってこんな感じなんだろうとふと思った。
「そこ……けええ………!」
「……ええええええ!!?!?」
ドスン
何かにぶつかった。
言い争う声が聞こえる。
まあいいや。
目を閉じて意識を深い底へと沈み込ませようとした。
でも、できなかった。真っ黒だった視界に光が差し込む。
光量は少ないものだったけど、だいぶ真っ黒の中にいた私が、目を細めるには充分過ぎた。
「あれ?おんなのこ?」
(きれい…)
男の子の瞳は黒かった。あの暗闇にも負けない黒。吸い込まれてしまいそう。
それがどういうわけか心地よく感じた。
なんでだろう。
まあいいや。
私は今度こそ視界を閉ざしていく。
男の子の心配そうな顔を見ながら。




