第二話 転生 そのに
今日はこれでおしまいです。
物音のした方向に顔を向けると、人のようなものが近づいていた。
「+=!…:*@」
相変わらずの意味不明な言葉、言葉かどうかも怪しいが。
(日本語じゃないし…英語でもない…何語なんだろう?)
奇声を発した人物は自身の胸のあたりをまさぐり、雄一を軽々と抱え上げ、そこに近づける。
(なんでぃ…って、おっぱぱぱぱぱぱ)
雄一は、その性特有の、大きな脂肪に押し付けられる。
しがない大学生なら普通、遭遇することのない事態に彼は戸惑うが、赤ん坊らしくそれを口に含むことができるのは一体本能か。
(むぐむぐ…いろんな意味でオイシイです!)
現実逃避気味に考えたのはそんなことだった。
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彼の前世はどうだったか。
(つまらなかった。)
有意義なものにするための努力はしたか。
(できなかった、そしてしなかった。)
(すでに引かれたレールの上を、重量制限のかかった、でも重い荷列車を引きながら走っていた。)
それはつまり
(今思えばあの時の自分は既にいっぱいいっぱいだった。)
社会から強制された荷物、何両もの列車が通った古びたレール。
そして、つまらない人生は終わった。
(新しい人生だ)
それはきっと、自由にもなれるだろう。
しかし、レールのない荒野に整地から敷設までするのは
(大変だろうなぁ)
それにこそ
(やり甲斐があるだろう)
だからこそ、
(今度は、無駄にしない…!)
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更に数ヶ月後、彼は四つん這いになっていた。
(ハイハイ…できたな)
「/*@〜!ー”:!」
彼の傍らには、数ヶ月前奇声を発していた女性が、床の上を這う彼を愛しそうな眼で見ていた。
(この人が母親なんだよな?)
胸大きいけど自分が成長したらやっぱり萎んでいくんだろうか、なんて邪推しながら彼はてちてち四足で歩く。
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はたまた数ヶ月後、彼は二つの足で歩けるようになっていた。
(長かった…ここまで本当に…)
涙をこらえながらも努力した自分を褒める。
母親とおぼわしき女性も雄一の成長を喜んでいるようだ。
「”ー+#@!!」
相も変わらず理解不能な奇声。しかし、
(褒めてもらうのって、嬉しいよな…)
そう思う雄一であった。
第一陣終了。うへえ疲れた。
ストック切れたし、本業もあるので、次話投稿の予定は未定です。
気長にお待ちいただければと思います。




