第二十三話 入学 そのに
全話の前書きで察された方もいらっしゃると思いますが、最近洋楽鑑賞にハマってます。
最近はトイレのメーカーの"Africa"を聴きっぱなしです。
rains down in Africa〜
面倒くさいことが大嫌いなアグ。
マーガレットに会話術を教わったとき、上流階級の人物との接し方についてこう言われた。
「煩わしいことを避けたいなら、彼らの言うことを大人しく聞き入れることが重要だわ。上の人たちは平民の反応を楽しんでいる節があるの。笑われることもあるだろうけど、それが一番簡単に終わるのよ。」
何故か遠い目をする彼女。
その理由が気になり、聞いていいものかと悩むが、過去を掘り返すのも良くないと思い至り、至って普通な返答をする。
「肝に銘じておくよ。」
「そうするといいわ。」
笑顔も可愛い彼女であった。
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(マーガレットの言ったとおりだったな…)
周囲に気づかれないよう注意しながら、こっそりとため息を吐く。
「私がこのクラスを担当することになったダンだ。この中には貴族以上に偉いやつが居るそうだが…」
ダンと名乗ったメガネの彼は、先ほどアグにちょっかいを出した男子生徒に顔を向ける。
「俺はそういうの関係なしでみなを平等に扱う予定だ。」
「せんせーい、本当にそんなこと言っていいんですかぁ?」
きらびやかな服を着た別の男児が見下した口調で言う。
「ああ、俺はこれでもこの王国でそこそこ名を上げていてな。裏から手を回されようが、国が身を盾にして守ってくれるから、痛くも痒くもないぞ。」
アグは王子を横見する。
その顔はセメントで固められたかのように、ピクリとも動かない。
どうやら本当のことらしい。
(しかもワケありっぽいな…)
重ねて彼のそれは血の流れが悪くなっているのか、真っ青である。
(身内とか、王国の近衛とか、そういうものなんだろうな。)
肩書ぐらいは公開するだろう、と思っていたが、アグの予想は裏切られる。
ダンは口元を釣り上げて続ける。
「俺の身元が気になるだろうが、王国からの指示でな、残念ながら簡単に言いふらすことは出来ない。しかし…」
彼はそこで一度区切って教室中を舐めるようにして見渡す。
ガラスが光って目の奥は見えない。だがこちらに視線を向けられたであろう瞬間、アグの背筋にゾワゾワと、悪寒が走る。
先ほど|質問(?)した貴族っぽい男子児童などは、もうすぐ口から魂が見えそうな後ろ姿をしている。
「まあそういう身分ってことだ。ヨロシク。」
(なるほどねえ…)
王国が秘密にしたいほど、重要な人材なのだろう。
(まあ藪蛇にならないよう気をつければいいか。)
王国などという巨大な組織を相手取りたくないアグは、そう決心するのであった。
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「もう知ってるやつも多いだろうが、今日は授業の仕組みについて簡単な説明をするぞ。」
彼の話を要約するとこうだ。
一年生は上半期中(一年=340日の上半分)全ての科目の授業に出なければならない。
これは、様々な将来の道を見せることで、生徒が後悔しない進路を選ねるようにするためのものらしい。
一年生後半からはいよいよ選択授業が始まり、それからの2年と半年間は選んだ教科の授業が行われる日だけに出席し続ければ、晴れて卒業となる。
もちろん風邪や法事など、一身上の都合で授業に参加できない場合は休むことを許される。が、
規定以上の欠席日数を取った場合は追試を課せられ、それに落ちると問答無用で留年となる。
もし全ての授業に出た場合は一週間(六日間)中四日間、朝の9時から18時までを学校で過ごすことになる。
また、科目選択後も、選ばなかったが学びたい教科がある場合は、申請すれば授業に途中参加することができる。
といったところだ。
「授業は明日から始まる。今日は早めに寝とけよ。」
言い終わると同時にチャイムが鳴り、ダンは教室を出ていく。
(狙ってやってるならすごいスキルだな…)
変なところに感心するアグだった。




