第十七話 アーノルド王国 そのに
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「あーっ!」
賑やかな大通りを歩いていたアグは、突然立ち止まり大声をあげる。
「どうした?」
馬車を引いているため安易には立ち止まれない馬車の御者…名前はショウというらしい…が、歩きながら振り返る。
「そういえば俺、この国の言葉全く知らないや!」
うわーっ、と頭を抱える彼に、ショウは不思議な顔をしながら言う。
「何言ってんだ?」
「だからこの国の言葉を習ったことがないんだよ!図書館に辞書っあるのかな…いや、そもそも図書館あるのかな…」
「はいぃ?君、そんなことも知らないの?」
「え?」
大臣の子供って…、と呆れるショウ。そんな彼の良いところは。
「いいかい、アグ。この大陸に普及している言語は一つだけだ。」
「え?」
基本的なことでも律儀に教えてくれる人当たりの良さ、だ。
「当たり前だろ?二つや三つ違う言葉があるなんて、恐ろしいったらありゃしない。」
商人の敵だ…と、各国を渡り歩いて物を売買するショウは、想像して身震いする。
(まじか…)
アグは、その言葉を聞いて心底安堵する。
彼らが話す言語に名前がついていないのはそういう理由である。
「でも、『之、魔法也』って文章があったよ?」
マーガレットから魔法を教わったときに聞いたことを思い出して、ショウに問う。
「ん?あー、それは大昔に流行った文章の書き方らしいよ。僕らが使っている言語は昔から殆ど変わってないらしい。」
「でも、付け加えなければならないときだってあるでしょ?」
「造語ってこと?そういうのは専門の協会がつくるのさ。新しい単語ができたら、そこが世界に発表するのさ。」
二、三年前にもあったかな。と締めくくるショウ。
「ふーん」
違和感を感じながらも、アグは納得せざるをえなかった。
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「おお…これが学校か…」
そびえ立つは、これまた石壁に囲われた大きな建物。
「そうだ。試験は明日。僕はもちろんついてこないからね。」
「もちろんだよ。ここまで良くしてくれてどうも有難う。本当に助かったよ。」
感謝の念を送るアグ。
ショウはへへっ、と自身の鼻を擦りながらそれに答える。
「君がなかなかにイイヤツだったからつい…ね。まさか大臣様の子息にこんな良くできた奴がいるとは思わなかったよ。」
「母親の教育が良かったからね。」
二人はその言葉で笑い合う。
「さて…僕も仕事があるからね。ここでお別れだ。宿の場所は分かるよな?」
「うん、さっき歩いてるときに見かけたからね。」
「そこがいい。間違っても路地裏の宿は使わないほうが身のためだだよ。」
かれに背を向けたショウだったが、ああ、と言葉を付け足す。
「何かあれば僕を頼っていいからね。できる限りの面倒は見てあげるからさ。メニマニ商会でショウって名前を出せばすぐ見つかると思うよ。」
それじゃあね、と手を振りながら遠ざかる彼に。
「お世話になりました!」
アグは頭を深く下げたのだった。




