第十六話 アーノルド王国 そのいち
もうちょい増量できたらなあ…慣れてきたら増やします!たぶん…
「ついたぜ。」
いつの間にか眠っていた彼は、その言葉で目を覚ます。
「いててて…」
馬車の客室はそこそこ広く、夜は御者と一緒に布団を引いて寝ていた。
だが、彼は自らの居眠りを予測していなかったので、布団を引かずに座ったまま眠ってしまっていた。
「首が…」
首を傾け、肩を斜めにしたままおぼつかない足取りで馬車を降りるアグ。
「寝違えた…うげえ。」
首に感じる痛みに、眉をハの字にさせながらも、初めて馬車の向く先を見た彼は、次の瞬間驚きの声をあげることになる。
「うわあ」
そびえ立つ大きな壁。二階建ての家ほど高さがありそうだ。それは横にずーっと伸びていて、終わりが見えない。
彼らの前には無数の馬車が列を作っている。
「この先に関所があってな。王国へ入るには身体と積み荷の検査を受けなければならないんだ。」
「へえ」
確かに列の先の壁には、空間があるように見える。
「小さい国なのにたくさんの人が来るんだね。」
「この国は豊かだからな。原価が高めのものでもそれなりに売れるんだよ。」
「なるほど」
彼は以前地図帳で見たアーノルド王国が、他の国より小さかったのを思い出していた。
アグは自分が乗ってきた馬車の積み荷を指差しながら言う。
「お兄さんはこの積み荷を?」
「そうさ。本来は大臣様の末っ子をここまで運ぶのが仕事なんだが、他の国へ行く馬車はそんなになくてね。おまけとして積ませてもらったわけさ。」
「もうあの家の子じゃないけどね。お兄さんは商人なのかい?」
「まあね、これでもそこそこ有名な商会で働いてるんだよ?」
雑談しながら検査の順番待ちをしていた彼らだが、その機会が訪れた。
「通行証を出して、馬車から離れて両手を上にあげろ。」
「ほい。」
特に緊張した様子もなく、馬車の御者は返答する。間抜けた声に幾分か緊張の和らいだアグも、それに習う。
衛兵は彼らの体をポンポンと叩きながら全身を調べる。
「積み荷、確認。」
「通行証も問題ない。」
「身体も大丈夫だ。」
「了解。ようこそ、アーノルド王国へ。」
やっと解放されたことに、アグはホッと一息つきながらも二人は歩を進める。
「おお!」
思わず立ち止まる。
外の大きな壁には感動したが、中の様子も負けないくらい壮観だった。
建ち並ぶ建物。飛び交う人々の声。弾ける人々の笑顔。奥に見える城のようなもの。
彼の母国のそれとは真逆の光景に、目を輝かせるアグ。
「ほら、いこう。」
「うん!」
馬車を引く御者を追いかけ、アグは人々の波に溶け込んでいった。




