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第十話 親 そのさん

まだ旅には出ません。

24時に閑話を投稿します。

(まじか…)


脳裏に魔法チートという言葉がよぎる。


(まあそんなの持ったってどうしようもないけど。)


彼は前世の反省を活かし、今世では自由に生きると決めていた。強大な力を持ったとしても、それを見せつけるようなことはしないだろう。そう考えていた。


(強大な力といえば…)


マーガレットはあの父親のことを『ストレイ卿』と呼んでいた。


(もしかしたら俺、貴族とか大臣の子供かもしれないのか…)


でもまあ、要らない子と言っていたし大丈夫だろう、と高をくくった。


(ストレイって、姓なのかな、名前なのかな…)


なんて、本題とは程遠いことを考えていたアグ。


「『魔力』と『魔法』、『オーラ』の違いは追々するとして…あっ、肝心なことを伝え忘れてた。」


魔法に適性があるっていうのはね、とマーガレットは続ける。


「もともと持っている魔力が多いとか、質がいいとか、あとは…そう、オーラに色がついているように見える、とか一般人とは比べられないほど大きな潜在能力をもっている人がそう呼ばれるわ。」

「ほえー」


アグは完全に怠けきっていた。そんな彼を天国から地獄へと突き落とす災難が訪れる。


「まあ才能があったとしても、教え初めるのは周りの子と同じ時期になるだろうけどね。…私なんか魔法はかじった程度だし、やっぱり学校に行かせたほうが…」


学校、という言葉にピクリと耳を動かすアグネウス君。その顔はみるみるうちに。


「でも貴族とは言え末っ子ではばかられるし…どうしよっかアグ…って、真っ青じゃない!」


ブルーベリーのように青くなっていく。


(学校なんてもう嫌だ…あんなのと同じ変わらない日々を過ごすくらいなら今度こそ死んだほうがマシだ…)


彼の心情を果たして察したのか、マーガレットは話を止め、アグを抱えてベットへと寝かせる。


「やだ…風邪かしら…ひどくならなければ良いのだけど…」


彼女の予想をなぞるかのように、アグの体調は悪くなっていく。ぐるぐると回る視界。見えるのは彼を心配そうに見つめる母親の顔と、四方を囲むベットの柵。


(ベット…硬いな…)


その景色をみたアグが選んだのは現実逃避という選択肢だった。

現実逃避は彼の十八番なのだ。


(疲れた…寝よう…)


彼の意識は静かで、それでいてどこか安らぐ深淵へと落ちていくのであった。

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