プロローグ
初投稿です。誤字脱字等があれば指摘頂けると幸いです。
太陽が南中しているある夏の日の正午。
左の壁の影から、男児がサッカーボールを追いかけ歩道に飛び出る。
急に飛び出してきた子供に驚いて、彼は自転車のハンドルを大きく右に切る。
前から大きなトラックが迫る。
その光景を見た瞬間、彼はふと、自らの人生を振り返った。
「ろくな人生じゃなかった…」
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彼の家は裕福で、小学校の頃より塾へと通い、有名私大の付属校を見事合格。そして中学から大学まで、そこそこの努力をしてそこそこの成績をとり、そこそこの結果を残してきた。
友人関係も乏しくなく、今でもそこそこの人数の友人と交流がある。
しかし、彼は不満であった。
「つまらなかった…な…」
趣味は楽しかった、友人とのくだらない話も好きだった。
だが、それは狭い世界での出来事であった。
地球とか、日本が狭いというわけではない。彼の知る世界が余りにも狭かったのだ。
来る日も来る日も学校勉強食事ゲーム睡眠。毎日が同じことの繰り返しであった。
「彼女…作りたかったなあ…、外人の友達もほしかったな…あと、北と南の県、外国に海、空、宇宙、いろんなところに行ってみたかった…」
後の祭り。その言葉が脳裏に浮かぶ。
「やろうと思えば出来た…でもやろうとしなかった…」
幾重にも重なる後悔の念。その最中にも、目の前のトラックはゆっくり、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
まるで、自分の死のように。
「まあ…こんなもんか…」
自嘲気味に心の中で呟き、彼は諦める。
「でも、やっと終わったか…」
同時に、繰り返す日々の終わりに安堵する。
そして、彼の意識は…
「今日、日曜だから講義ねーじゃん…」




