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プロローグ
暖かい日差しが差し込むこの部屋で私はいつもの場所に座っている。目の前にはいつも通りあの子がいる。窓からは桜の花びらが舞っているのが見える。数日前までは満開だった桜も葉桜になり花の命がほんの一瞬であることを痛感する。あの子がお気に入りの絵本を見ながら呟く。
---そこにはね、ピカピカの湖があって妖精さんがいっぱい飛んでて…ぽかぽか暖かいの。私がずっと行きたい場所…。…ねえ、その時はあなたも来てくれる?---
いつもより少し元気のない声…その言葉は私に向けられている。もちろん、私はあなたが行く場所どこにでもついて行く。だけど、私はそれを言葉にすることができない。
---私には「あなた」が必要だから…約束だよ---
それは私だって同じ。私はあなたがいたから今の私がいる。私とあなたは最高の友達。
叶わない願いなのは分かっている。でも、この時私は心の底から叫んだ。決してあなたには
届かない言葉。私の心の叫びを
私を一人にしないで…置いて行かないで…!!
音が消えた部屋の外で桜が一際空を覆うように舞い上がった。