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Link  作者: しろがね
第2章 冒険の始まり
5/6

クエスト

 ――小鳥たちの合唱が聞こえる。朝が来た。

「ふぁ〜。……朝メシ食うか」

 俺は体を起こした。

「……あ。ここはゲームの中か」

 いつもは、妹の(ゆう)が朝ご飯を作ってくれていた。だが、ここはゲームの中だ。優はいない。

「今頃どうしてるかな」

 そう思いつつ、買い出しに行こうと思ったが、ある事に気づいた。

「そういえば、昨日は眠くて晩飯(ばんめし)食ってないな。あれ? いつからメシ食ってなかったっけ?」

 記憶をたどってみると、昼間も武器やら防具やらで食べていない。それでも、空腹はしなかった。なぜだろう? と、思ったが、すぐに解決した。

「……ここはゲームの中だ」

 なので、食べるという作業が要らないってことだ。


「さて、今日はどうしようかな」

 出掛ける準備をし、外へ出る。本当は、昨日言われたオカリナを目指してもいいのだが、もう少し情報を集めたい。

「そうだ、我流技(がりゅうぎ)っての作って見るか」

 我流技、自分でスキルを作ることができるらしい。だが――

「……どうやって作るんだ?」

 そういえば我流技の作り方を教わっていなかった。

「んー。とりあえず、我流技は後回しにして、ポーションとか買いに行くか」

 ポーション。攻撃を受け、減ってしまったHPを回復してくれる、お馴染みのアイテムだ。これがないと、簡単に死んでしまう。

「死……。HPがゼロになったら、俺はどうなるんだろう」

 まだ死んだことがないので分からない。

「できるだけ死なないようにしよう……」

 そんな事を考えていると、店に着いた。

「あった。これこれ」

 俺は、すぐさまポーションを買い込んだ。

「よし、次は……ん?」

 誰かの視線を感じる。だが、横を向いても誰もいない。

「誰もいない……気のせいか?」

 そう思い、元の位置へ振り向こうとした、その時だった。

「いるよ!」

「え!?」

 いきなり下の方から声が聞こえた。声のした方向を見ると、強気な女の子が立っていた。身長は中学生くらいだ。髪は赤く長いが、ポニーテール状に結んである。そして背中には、自分の身長よりも長い(やり)を背負っていた。

「えーっと。どこから来たの? 親の顔の特徴覚えてる?」

 俺は迷子だと思い、そう話しかけた。すると……

「私は迷子じゃなーい! まったく、身長が小さいからってもー」

「……え? 違うの?」

「私は今年16歳になったんだから! 子供扱いしないで!」

「すみませんでした!」

 俺は深々と頭を下げた。なぜなら、俺よりも年上だからだ。そうは言っても、今年で俺も16歳になる。彼女の方が、少しだけ誕生日が早いだけだ。なので、あまり変わりはない。

「ちょ、ちょっと。こんな所で頭下げないでよ。恥ずかしいじゃない」

「あ、ゴメン」

 俺は頭を上げ、彼女の顔をみる。

「私の名前はアリーシャ。アリーでいいわよ」

「わかった。えっと、俺の名前は黒井健人(くろいけんと)。よろしく」

 お互いに手を差し伸べ、握手をする。

「健人、突然だけど頼みがあるの」

「ん? 何?」

「特別な薬草を取ってきて欲しいの」

「薬草? それならこの店で……」

「それじゃダメなの……。ここから歩いて30分くらいのところに洞窟がある。そこに生えているのじゃないといけないの」

「なるほどね〜。じゃあ行くか、その洞窟」

 今はまだ午前中だ。行って帰って来るだけなら、余裕で帰って来れるだろう。

「待って!」

 アリーシャに引き止められた。

「どうした?」

「実はその洞窟、魔物が住んでいるの」

「魔物?」

 いよいよ敵キャラらしき名前が登場した。これは戦闘の予感?

「そう、魔物。簡単に言うと、敵よ」

「ザックリしてるな……。でも、そいつがいるから薬草が取れない、だから俺に助けを求めたと?」

 アリーシャはコクリとうなずいた。

「フムフム、まぁいいや。もうそろそろ、戦闘したかったし。行こう」

「本当!?」

「ああ」

「今まで誰も引き受けてくれなかったのに……やっと、やっと見つけた」

 アリーシャは少し泣きそうな顔をしていた。何か意味があるのだろうか。

「それじゃ、しゅっぱーつ」

 アリーシャがそう言い歩き初める。俺はそれについていく。

 2人は、洞窟を目指して歩き始めるのだった――


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