武器
「はぁ~、やっと着いた」
遠くに街が見えたので、とりあえず来てみた。
「さて、情報収集するか」
街はにぎわっており、色々な食べ物が売っている。ここは商店街のようだ。
「誰に聞こうかな……。あ、あの人にしよう」
顔を見て、優しそうな人に話しかける。
「すみません」
「はい、なんでしょう?」
見かけどうり、穏やかな口調の人だった。やはり、人は見かけによる。
「あのー、人を探してるんですけど、知りませんか?」
「冒険者の方ですね。こちらです、ついてきてください」
「え?」
思わず大きな声を声を出してしまった。なぜなら話が噛み合っていないからだ。冒険者? なんだそりゃ。
色々な事を考えつつも、その人についていく。
「ここです。では、ご健闘を」
そう言って帰ってしまった。
「ここは……」
今俺のいる場所はこの街で1番でかい建物の玄関前だった。とりあえず、入って見る事にした。
すると、門番らしき人に話かけられた。
「合言葉を言え」
「は? 合言葉?」
合言葉、そんなのは当然知らない。だが、門番は、こう言ってきた。
「山!」
「え? ……川?」
「通れ」
……あっさり通ってしまった。本当にこの合言葉を使う人を初めて見た。そもそもこの合言葉に意味があったのか……
ツッコミながらも、建物の中に入る。そこはとても広く、正面にはカウンターらしきものが端から端まで連なっていた。
そしてあまりの天井の高さに、口を開けて眺めていると、カウンターの人から声をかけられた。
「ねぇキミ、ここにくるの初めて?」
「はい」
声の主は、金髪の美女だった。髪はとても長いが、綺麗に結んであり、まとまっている。
「それでは、この世界について色々教えますね」
「あ、はい。お願いします」
「まぁ色々と言っても、ボイスコマンドで大体解決します」
「ボイスコマンド? そっか、これはゲームだった」
俺のいる世界は、夢の世界。だが、これはゲームだ。
つまり、ゲームの夢を見ている事になる。危うく忘れるところだった。
「コマンド、ステータス」
彼女がそう言うと、目の前にステータスウィンドウが表示された。
俺も続けて言ってみる。
「コマンド、ステータス」
すると、俺のステータス情報が書かれたウィンドウが目の前に表示された。
「うお!」
急に表示されたので驚いてしまった。ふと彼女の方を見ると、くすりと笑っていた。恥ずかしさに肩をすくめながらも、自分のステータスを確認する。
「えーと、熟練度は1。職業は……ん?」
まず、このゲームはスキル制オンラインゲームらしい。よって、レベルではなく、熟練度が載っている。まだ1だが、始めてまだ間もないので、当たり前だ。だが、その横に書いている職業。なぜか文字化けしていて読めなかった。隣にいる彼女も、良くわからないといったように首を傾げた。
「まぁそれはさておき、こう言った感じでステータスを見たり、装備を変更したり、スキルを習得したりする事ができます」
「なるほど」
「それでは、武器ショップへ案内します」
「あ、はい」
そう言われ、建物の奥にある階段を降りる。するとそこには武器やら防具やらが置いている店があった。
「武器は何にしましょう?」
「どんな武器が置いてあるんですか?」
「えーと、短剣、片手剣、両手剣、刀、斧、杖、棍棒、槍、弓、そして、聖剣です。職業により、装備出来る武器が異なりますのでご注意ください」
「なるほど、えっと、聖剣と言うのはなんですか?」
「やはり、みなさんそこに目をつけるんですね」
彼女は笑いながらそう言った。他の冒険者も、気になるらしい。
「ですが、残念ながら聖剣を装備できた人は、一人もいませんでした」
「は、はぁ」
俺は自分職業を知らない以上、装備出来る武器を知らない。なので、片っ端から装備してみるが……
「これで最後、聖剣だ。……やっぱりダメか」
全て試してみたが、装備する事ができなかった。
「まさか……素手で戦えと……?」
「……いえ、まだ試していない武器があります」
「え? でも、これで全部ですよ?」
「いいえ、まだ1つだけ残っています……店長、例のあれを」
「……あれを出すのか?」
「こんなケースは初めてです。もしかしたら……」
「……わかった」
そう言って、この店の店長らしき人は奥へと入っていった。少し経つと、布でできた袋を手に持っていた。その袋を開けると、1つの片手剣が入っていた。
「これは、片手剣じゃないですか?」
「いえ、これは聖剣と対になる存在。武器カテゴリーは、魔剣です。これも聖剣と同じく、装備できた人はいません」
「魔剣……」
恐る恐る手を伸ばす。すると、剣は赤黒く光出した。
「ダークソウル……」
この魔剣の名前だ。そして、名前のところに装備中の文字が書かれていた。つまり装備ができたという事だ。
ここで俺は、1番重要な事を思い出す。
「そういえば……金がねぇ! この魔剣……お高いんでしょう?」
「いえいえ、ゲーム初めた時、お金が配布されているはずです。なにも使っていなければ、それで買える値段です。魔剣と言っても、最初はそこにある片手剣などと同じ強さです」
「なるほど。それじゃ、これください」
「あいよ」
こうして俺は、魔剣を手に入れた。
「次は防具です。ついてきてください」
俺は言われるままに、彼女についていく――