プロローグ2
「――君は……誰?」
「……」
俺は問いかけてみるが、返事がない。
彼は全身黒ずくめだった。さらに、フードを深くかぶっているため、顔がよく見えない。
「ちょっと待って!」
彼は後ろを振り返り、歩き出す。俺はそれを止めようとしたが、その声は届かなかった……
振り返り際に、彼のフードが揺れ、口元が少し見えた。一瞬の事だったのでよく分からないが、笑っていた気がした……
「……朝か」
俺は目を覚ました。
「あれは……夢だったのか。でもあいつ……どこかで……」
夢の中で感じた違和感。俺はあいつを知っている?
「……んなわけないか」
夢の事はさておき、学校へ行く支度をする。
「おーい、行くぞー」
「今行くー」
靴を履き、家の鍵を閉め、学校へ向けて歩き出す。
俺の通う高校と、優の通う中学校は、隣どうしだ。なので、いつもこうやって一緒に登校している。
「到着。じゃ、また後でねー」
「おう」
優と別れ、校内ヘと入っていく。そして、2階にある教室のドアを開けると――
「おはよー」
教室に入るなり声をかけられた。
声の主は、俺達のゲームグループの1人、明だった。
「おはよ。あれ、他のみんなは?」
「まだ来てないね……何かあったのかな?」
いつもは、他に3人のメンバーがいるはずなんだが、姿が見えない。嫌な予感がする。それは、昨日優から聞いた話だ。もしかしてあいつらも……
そして、チャイムが鳴り、ホームルームが始まる。
「ゲームオーバーか」
「何が?」
「先生が来た、また後で話すよ」
「分かった」
――そして、ホームルームが終わり、しばしの休み時間となった。
「さっき話してたのって何?」
明が聞いてきたので、昨日優から聞いた事を話した。
「そういえば、昨日の放課後に文也がそのゲームの事を話てたような……」
「本当か!?」
「うん」
これで、他の3人が学校に来ない理由がわかった。
――ちなみに文也は、俺達のゲームグループこと、G攻略団と命名した人である。完全なる厨二病だ。それはさておき――
「実はそのゲーム俺にも届いてるんだ」
「明にもか」
「にもって事は、健人にも届いてるのか」
「ああ」
明にも届いたようだ。なぜ届いたかは、相変わらず不明だ。
「……どうする? やってみるか?」
俺は明に尋ねる。
「危なくない?」
「でも……このままじゃ文也達は一生起きないかも知れない」
そう考えると、いてもたってもいられなかった。
「それでも、危険すぎる!」
「俺の知っている人達が次々眠っていく……。そんなの、黙って見てられない」
「あ、ちょっと!」
「安心しろ。俺は世界1のゲーマーなんだぜ。絶対にクリアしてみせる」
そう言うと、俺は昨日届いたメールを開き、URLをタップしていた。その瞬間、スマホから目が眩むほどの光が放たれた――
――風が気持ちいい。あれ? 俺は確か教室にいたはずじゃなかったっけ?
そう思い、そっと目を開ける。するとそこは、壮大で、なおかつ綺麗な景色が広がっていた。空を見ると、大きな岩がいくつか浮かんでいる。そこから滴り落ちる水は、太陽に照らされ光輝き、虹のアーチをくぐり抜けて湖に落ちていく。まるで、妖精達が住んでいそうな世界。
「ここは……」
確かに景色は綺麗だ。しかし、見たことのない世界。
「夢の中……なのか?」
ゲームを始めたら眠ってしまう事から、そう判断した。
すると、目の前に透き通ったウィンドウらしきものが、突然現れた。
「うわ、なんだこれ」
突然の事だったので、少し驚く。そして、恐る恐る手をそのウィンドウに伸ばす。するとウィンドウは、俺の手を貫通した。
「す、すげー」
そんなどうでもいい事に感動しつつも、ウィンドウに書かれている文字を読む。
「これからあなたには、この世界のどこかにいる、伝説のドラゴンを倒す旅に出てもらいます。あなたの職業――」
これから先は、なぜか文字化けしてて読めなかった。
「おいおい、大丈夫かよ……」
そう言ってると、ウィンドウが切りかわった。そこには、新しい文字が書かれていた。その文字は――
「START」